株式市場最大の懸念:新型コロナの感染急増

株式市場最大の懸念:新型コロナの感染急増

今の株式投資の難しさというのは、状況変化が激しすぎてポジションをキープできないということに尽きる。特に戻りいっぱいの株価の位置で現状のように揉み合い相場になってくると、投資家は現在のポジションに対して疑心暗鬼になってくるから、不安で仕方ない。欧米などは、年末本決算を迎えるにあたり、ファンド・マネージャとか証券関係者はなんとしてもパフォーマンスを維持したいわけで、それは新年度の待遇に直結するからだ。

なので、どうしてもこの局面で負けるわけには行かないという年間を通じてもっとも厳しい場面と言えるのがまさに10月、11月なのであって、今年の場合そこに大統領選挙と新型コロナという二つの大きなファクターが絡んでる。そう思うと今の相場が簡単なはずがない。

目先が気になる季節

今年のファンドパフォーマンスは3月のコロナ暴落で失ったものを、その後の戻り相場で取り返そうと躍起になったことで、大成功のファンドはプラスに転じたが、4月以降もヘッジファンドはいいところがあまりなかった。もっとも比較的小さな規模のヘッジファンドは3月の暴落で多くが退場を強いられたわけだが・・・。

なので、そうした運用者にとっては、大統領選挙絡みのこの時期は勝負を賭けざるを得ない立場に追い込まれてる。言ってみれば完全にプロ相場になってるという事だね。

株というのは本来未来を先取りするもの、と言われているけれど、そんなことは自然な需給に任せているとすぐにグチャグチャになってしまう。なので暗黙のコンセンサスというのが自然発生的?に生まれてきて相場の方向性に対して同調圧力がかかる。いや、正確に言うとそうなるようなストーリーを作り出してゆく、というのが正しいかもしれない。

だからこそ、4月以降の株式市場では、新型コロナ収束論が多く出始め、目先材料ではあたかも新型コロナワクチンが極めて早期に完成して秋口からは投与が始まる、みたいな夢物語が次々に出てきたわけだよ。

また各国が緊急的に大幅な財政出動をしたり、中銀が金融緩和を繰り出したりということが、目先の不安を取り除いたことも大きいよね。新型コロナが収束しさえすれば、また収束に早期に目途が立つようなら、世界経済はコロナ以前に戻るだろうし、企業業績も然りとする思惑の終着点が現行株価水準であることは明らかだよ。

けれども現実は徐々に当初の思惑とのズレが生じてきていることを、多くの投資家が意識するようになった。そもそも、企業業績が現行株価を是認するような水準に回復するのは予想より大幅に遅れるのが目に見えてきている。少なくとも1年、2年という年単位の時間が必要かもしれないし、場合によってはそれ以上でも戻らない可能性さえある。

なので、米国株も欧州も、そうした事態を株式市場が織り込み始めた結果の下落が10月後半に起こったということだろうね。もちろん、そうした懸念を助長したのは新型インフルの第二波、第三波であることは言うまでもないけどね。

となると、この時期来年の状況よりも、目先の変化を織り込もうと躍起にならざるを得ないというのは、プロでも同じだろう。だからこそ、この時期は目先の変化で株価は大きく変動するし、米国VIXは気が付くと38台と高水準が続いているのだろう。

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新型コロナ感染拡大本番

今年は米国大統領選挙イヤーで、他に何もなくても大きなイベントを目前にしているわけだが、加えて新型コロナの感染急増が表面化してきた。インフルエンザウイルスの例を見れば、季節的にここから低温・乾燥期を迎える北半球では、爆発的な感染となっても不思議ではないと思う。予想するに、現状から一桁上がるレベルになっても決して不思議ではない。

その理由は二つで、一つはウイルス自体が低温・乾燥下で活発になるという特性があること、そしてもう一つはPCR検査の能力が第一波当時と比較して数十倍に跳ね上がってること。結局今の検査体制が第一波当時にあれば、実際には今よりも多かったのではないかと思うけどね。

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そこで問題なのは、世界中新型コロナに対する考え方や対処法を変えていないということだ。これが世界経済にもっとも深刻なダメージを与えることになってしまう可能性が非常に高い。現状は死者数は2.5%程度であって決して悪化しているわけではないし、むしろ第一波当時よりも大幅に低下している。にもかかわらず、感染防止対策のために欧州では再度ロックダウンや行動制限を導入し始めた。

これをやると、経済は深刻なダメージを受けるというのは重々承知の上で、政治的に同様の対処をせざるを得ないという側面がある。今の感染レベルでそうしたことを始めるということは、この先ピークを迎える頃には全面的なロックダウンをやらざるを得なくなってしまうだろう。

また米国では大統領選挙の投票日を前にして10月30日の感染者数が99,321人に跳ね上がった。31日は81,227人となったが、来週半ばからはいよいよ10万人を突破してくるだろうし、その後もまだまだ上昇するのは欧州の感染状況からしても目に見えている。

そうなったとき、大統領選挙の結果が出ないような状況となれば・・・各州別に対策を講じるしかないのだが、追加景気対策が合意できていない以上財政の裏付けがないままに見切り発車するのかもしれない。

こうした一連の新型コロナ対応をいまから導入すれば、景気は腰折れてしまい、さらに倒産件数の激増や継続的に家賃減免が受けられない数千万の米国民の生活が破綻する。なので、景気回復好調な米国と言えど、バイデンが当選すると新型コロナ対策に躊躇しないだろうし、トランプ大統領再選になると社会不安が増大し国が荒れるということになるかもしれない。トランプ大統領はこの先感染者が急増しても経済優先を継続するだろうからね。

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株式市場の目先の動き

最もネガティブな予想をする評論家やアナリストは、少数派ではあるもののここから株式市場は2番底に向かうと言っている。少なくても新型コロナに対する対処法を変えなければ、経済は新型コロナに勝てないだろうし、それ以上に企業破綻が相次ぐような状況になれば、債券市場が崩壊する可能性もある。

そうなったら金融危機という側面が表面化してしまい、実体経済の悪化と2重苦という恐ろしい事態もあり得るから、バフェットでも売るだろうと。

確かにこのまま感染者数が急増し続けると、世界中でロックダウンの連鎖がはじまりまたしても経済活動は止まってしまうことになる。恐らく米国の大口投資家もそうした最悪の想定は考慮し始めていると思う。

なので、大統領選挙でトランプ大統領再選になるのかバイデン新大統領が誕生するのかの如何にかかわらず、株式市場は下値圧力が高まるのではないか?と見ている。トランプ大統領は死者が来年には40万人に達するという予測に対して、40万人なんてどうということはない!と言い放ったけれど、そうした対応しか世界経済は救われないような気がするのだが・・・。

さらに大統領が決まらずに米国政治が混乱すれば、もちろん株式は下値に向かって加速するかもしれない。それは多くの投資家の思惑を裏切ることになるからだ。

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我慢できずに新型コロナワクチンを早期投入する?

十分な安全性を担保すると言う意味でも、ワクチンの三相治験の拡大と経過観察は非常に重要だ。過去の例を見ても、ポリオや子宮頸癌、インフルエンザなども深刻な副作用が報告され、数々の悲劇を生み出している。反面、一時的には効果的に作用することが多いために、また投与後の副作用や事故に対しては新型コロナワクチンの場合、各国が政府保証を付けるということで、ワクチン製造に躍起になっているという事情もある。

そして、恐らく欧州でも米国でも、新型コロナワクチンの接種時期が早まるのではないか、と思う。政治家とて経済と新型コロナを天秤に賭けざるを得ないような岐路に立った場合、迷わずワクチン接種を選択するだろうから。

日本では幸いにして感染均衡をこれまでは維持してきているが、北海道で徐々に感染者数の増加傾向が出てきた。気温が下がり乾燥してきて、その上暖房なしに過ごすことが困難な地域ということもあるだろう。となると、今後日本でも感染拡大すると考えざるを得ないのではないか?

その時に、安倍首相であったらワクチン投与を最優先したと思うが、菅首相はどうするだろうか?また、接種を決めたとして日本国民のどれほどがワクチンを受け入れるだろうか?

日銀や年金運用基金の市場介入で日経平均やTOPIXは底堅いと言われるけれど、海外勢が踏ん切りをつけたなら、出来高のない日本市場は簡単に連れ安するだろう。いくら浮動株が少ないと言っても、相場など発行株式数の2%も出来高があれば十分株価は動く。

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新型コロナを無視すると墓穴を掘る

米国大統領選挙は毎回11月の初めが投票日と決まっているけれど、今回ばかりは極めてタイミングが悪かった。新型コロナで揺れに揺れた世界経済と株式市場だが、金融緩和や財政政策によって資金供給しさえすれば元に戻せるという楽観が、第一波では通用したけれど、今、ここで感染急増となると、どうなるかはまったく予測がつかない。

ただ、欧州はロックダウンという禁じ手に踏み込んでしまい、米国も大統領選挙の行方次第では、厳しい行動制限を導入するかもしれない。少なくともバイデン大統領になれば、必ずそうした措置を導入するだろう。

ワクチン導入が始まるとPCR検査は無用の長物となってしまうので、PCR製剤やPCR関連企業は在庫の山を抱えて減損の危機となるかもしれない。

各論ではある程度予想できることも、総論としてみるとあまりに複雑で予想困難なのだが、肌感覚、皮膚感覚では、この先株式相場は下値を探りに行く可能性が高いのではないかな。

各国とも新型コロナを無視するかのような相場が続いていたが、今となっては無視することができない土壇場に差し掛かっていると思う。

余談だが、個人的には新型コロナに対する認識、対処法を変えるか、またはワクチンを強引に投入しPCR検査を廃止してしまう以外に道はないと思うのだが・・・。

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