中国リスクを少し・・・

中国リスクを少し・・・

ようやく中国リスクを本気で意識するようになった米国市場。好決算続出の只中で、しかも良好な7月カンファレンスボード(消費者信頼感指数)にもかかわらず、上海市場の続暴落をきっかけに急速に株安局面になっている。

中国リスク

整理するとまず上海市場の暴落は、民間の学習塾等教育ビジネスを大幅に制限、あるいは禁止するということが理となっているけれど、これは基本的にチベット、新疆ウイグル、南モンゴル、香港等で行われている思想統制の一環でもあると思う。習近平は本気で共産党の無期限の独裁者となることを、100年記念大会で言葉ではなくその服装で示した。

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そのいでたちは、毛沢東とほぼ同じもの(人民服)であり、毛沢東以来の無期限の総書記を示したものであって、共産党支配101年目以降は生涯習近平の独裁で運営すると宣言したのも同じである。そして香港の民主化を徹底的に潰して、独裁体制の基礎を築きつつあると思われる。

また経済的にはここ2カ月間、習近平は江沢民派の資金によってつくられたハイテク企業やネット企業に対し、強権を発動して完全に実質的な支配下に置いた。ファーウェイ、アリババ、テンセント等である。そして次の目標は、FOXCON(鴻海精密工業)やTSMCの支配であって、同様にソフトバンクGに対しても同様の圧力をかけ始めている。

TSMCは現在米国との半導体戦争でせめぎ合っているわけだが、企業の起源が大陸にあるだけに、また半導体競争の要であるとの認識から、相当の圧力がかかっている。同様にアームの買収案件やエヌビディア、AMDなども大陸を起源としているだけに、今後壮絶な戦いになることが予想される。

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しかしその前に、これらの企業群の中で最も圧力がかかっているのは、すでに落とされたアリババテンセントであり、その影響はダイレクトにSBGに響き始めている。つまりいままで蜜月であったクレディスイス、そして国内ではみずほFGからそれぞれ、貸し剥がしを受けた。金融機関はすでにアリババ株の価値に対して「担保能力がない」と判断したのだろう。その代わりにSBGは社債を発行し資金調達を行うようだが、相当のプレミアムを付けぬ限り発行できるのは個人向け国債に限定されそうだ。

事情が分からぬ個人は、超低金利の折なので購入するだろう。特に営業の本筋は証券会社であるから、数千億程度ならば捌けるだろう。それでクレディとみずほFGに剥がされた分を補うらしい。

そうした状況の中でバイデン政権は香港に対する投資を控えるか、制限するように警告を発した。それでも株式市場はなんの反応も示さなかったが、その後香港どころか、米国上場の中国企業の株価下落によって84兆円あまりが失われ、また中国国内ではハイテク株下落によって110兆円余りが(2月以降)失われた。そしていよいよ次は、200社以上の米国上場の中国企業であって、未開示の決算に対し決算内容を監査法人が保証しているとはいえ、共産党の好きなように営業をコントロールできるというリスクは、決して開示していないし織り込まれてもいないだろう。

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そうした懸念から、中国投資を推進してきた米国の金融機関や大型ファンドは、中国リスクを許容できなくなって、投資を引き揚げにかかっているだろう。そのため上海総合指数や香港ハンセン指数の暴落に繋がっているのは明白だと思う。同時にすでに、立ち直れないほどの痛手を負ったファンドやファミリーオフィスもあると言われていて、これが株式市場の大きなリスクとなっていることは、ほぼ間違いない。

日本株リスク

日本企業の最大の輸出先は中国であるけれど、欧米のような自由主義市場と同様な展開を謳歌してきた時代は、明らかに終焉を迎えつつある。だからこそ、中国比率に高い日本企業は、多かれ少なかれその影響を受け続けなければならない。特に日本市場を牽引している半導体・電子部品セクターは、今後の状況があまりにも不透明過ぎると思う。

また最大の輸出先である自動車セクターもまた、中国国内での政策転換によってどのような影響がでるのか、全く未知数と言っても良い。と言うことは、すなわち、輸出企業全般で良好な決算となりそうな2021年上期であるが、下期以降の予測がまるで不透明であるということになる。

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また著しく下落しているSBGの株価動向は、ずばり中国動向を表していると言っても過言ではないと思う。とにかく、滴滴(DiDi)の例を見るまでもなく、SBGの投資先はことごとく甚大な影響を受けかねないわけで、この中国の状況が続く限り、SBGの株価下落は止まらないだろう。

とにかく金融機関が担保価値を認めないアリババ株なのであって、社債もまた投資不適格の烙印を押されている以上、日本経済に激震が走る可能性さえあると思われる。

日経平均は、2月に¥30,000をクリアして以降、徐々に上値を切り下げて、4月になると¥29,000の奪還が困難になり、7月では¥28,000でさえレジストラインとして機能し始めている。SBGのEPSは2021年3月ベースで¥2,619なのだが2020年3月では▲¥478であった。これが、アリババ株の価値が剥落してしまったらどうなるのか?と考えると恐ろしくなる。

現時点(27日時点)での日経平均¥27,970は、中国ショックを織り込んでいるのか、SBGショックをどう見ているのか、分からないが・・・。今の日経平均は怖いというのが海外勢の見方なのではないだろうか。