年末までの相場リスクを考えてみる

年末までの相場リスクを考えてみる

表面上のリスクを考えてみると、表に出てくるのは来年(2022年2月4日~20日)に開催される北京五輪に対する西側諸国のボイコット騒動で、建前は新疆ウイグルの人権弾圧や新型コロナウイルスの武漢ウイルス研究所起源などで、世界が納得しやすいものを掲げるに違いない。そしてこのボイコットは現時点ではほぼ決定的になっていて、だからこそ東京五輪は是が非でも日本に開催させたかったという事情があった。

五輪を新型コロナ禍でも西側では開催できる、ということが面子国家の中国にとっては許容できない屈辱であって、中国にそれが出来ないとなれば、習近平は(西側に対して)相当に強硬な政策に出る可能性が高いというのが、欧米外交筋の予測でもある。

新型コロナウイルス起源の落としどころ

報道はあまりされていないが、欧米は新型コロナウイルスの起源を武漢ウイルス研究所にほぼ断定している。今流行している新型コロナウイルスは、自然界に由来するものではなく、生物兵器研究のために人為的に作られたものであることは、疑いの余地がないと認識されているわけだが、基礎研究は免疫学者のアンソニー・ファウチを中心に米国アレルギー感染症研究所で行われていたものである。それをあまりに高リスクとオバマ政権時代に指摘され中止命令を受けたわけだが、その研究を継続するために中国へ移転してしまったことが非常に大きな問題である。

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そして武漢ウイルス研究所は人民解放軍の管理下で、フランスの支援のもとに建設されたP4(病原体レベル4)研究施設を備え、そこで生物兵器の研究を行っていたことはほぼ間違いなしと断定されている。

世界中にこれだけの病禍をもたらした新型コロナに関して、世界が、特に欧米がその起源を追求し原因を特定しないこと自体、極めて不自然なことであるが、その理由は中国単独での研究ではなかった事にあるわけだ。しかし、航空機が一機墜落しただけでも、徹底的に原因は調査されるわけで、それと比べれば現状は極めて不自然な状況と言える。

だがいよいよ欧米は中国の不適切なウイルス管理が起源であるという方針を6月に固めたと言われていて、手のひらを反すようにWHOテドロスも同時期武漢を徹底的に調査する必要を主張し始めた。

すでにインドをはじめとする数か国は、中国に対し今回のコロナ禍の損害賠償を求めているわけだが、少なくとも年内には北京五輪ボイコットを皮切りに中国への責任追及に乗り出すはずである。

追い詰められる習近平

習近平は8月2日から開催されている、共産党の長老から現状の治世に対し意見を聞く恒例の北戴河会議で、叱責されたと言われているが、そうした意見を無視して毛沢東路線を継承すると決めた以上、党内の対抗勢力を駆逐しようとする可能性が高い。

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現在習近平は人民解放軍と国軍のトップであり、党において総書記の地位にある。そして、周恩来ー鄧小平ー江沢民と続いた市場開放政策と外資導入政策、さらにはウォール街と結びついた(米市場上場による)資本調達に対し、様々な規制をろうして全面的に共産党に取り込もうとしている。

しかし見方を変えると、党内の敵対勢力に対する圧力という意味もあるが、習近平が恐れているのは新型コロナ責任論の高まりによって中国や中国企業の海外資産を欧米によって凍結されてしまう事なのだ。

恐らく、というか絶対に欧米は今回の新型コロナを許さない。欧米は日本と違ってそれほど甘くはないことは歴史が証明している。またそれを習近平はある程度予測しているはずで、いま中国からの海外渡航を実質的に禁止してドル持ち出しを著しく制限していて、さらに軍事的対抗手段として中国各地に長距離核ミサイルサイロを建設している。

すなわち、中国と欧米は現在経済のみならず、極めて軍事的緊張状態にあるわけで、そうでなければ英国が虎の子の新造空母(クイーンエリザベス)を東アジア海域に派遣したりはしないだろう。

ことさら左様に習近平はいま追い詰められているのだ。そして窮鼠猫を噛むの例えのような、世界は大きな国家間リスクに対峙しつつあるというのが、現状であると考える。

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米国の年内テーパリングは必至!?

話は株式市場に戻るが、7月の米国雇用統計が良好な数字で着地した。それによって週末の米国市場では、これを好感して史上最高値を更新する動きとなったけれど、同時に(新型コロナ禍で停止されていた)米国政府の債務上限が復活したことで、(未執行の)多額のキャッシュで国債償還の必要にも迫られている。

このような状況で、失業保険割り増し給付(週300ドル)が8月、9月で期限切れとなるわけで、今後の雇用統計は確実に改善することが決定的となっている。これはすなわち、FRBによるテーパリングの開始には絶好のタイミングとなるわけで、年内の開始は決定的になったと言える。

その局面では、どうしても株式市場は軟調にならざるを得ず、加えて長期金利(10年物国債金利)の上昇や、中国リスクが株式市場の大きな懸念となってくるのがこの秋相場と言うことになりそうだ。

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日本株低迷の理由

1Q決算が終盤に差し掛かり、主力企業の業績はかつて例がないほどに急回復した日本市場だが、日経平均株価はPER13.2と割安に低迷している。もちろん、2月高値の信用期日ということも、また株式市場全体の信用取り組みの悪化という要因もあり、さらには新型コロナ感染者の急増という懸念もあるとされるが、恐らく最大の懸念は、日本企業が中国リスクをもっとも被るという事実に対する、海外投資家の懸念だと思われる。

しかし、いままで1Q決算でこれほど上方修正が相次いだ事例はほとんどないことも考えると、日経平均はある程度の戻りはあるだろう。

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だが、評論家やアナリストが言うようにこれほど割安・高配当で放置された状態と言うのを、普通であれば海外投資家が見逃すはずがない。「株は安く買って高く売るもの」と言われるが、いまは、「なぜ安く放置されているのか」と考えてみる必要もあると思う。例年通りの相場展開であるなら、ここから年末にかけては上昇基調となるだろうが、9月、10月は経済的な異変も起こりやすい季節であることも今年の場合は十分に想定しなければならないと個人的には思ってます。

もしも、日本株のこの信用状況で中国リスクが現実問題としてクローズアップされてきたならば・・・、なぜコンテナ市況が高水準で上昇を続けるのか、なぜ今年になってコモディティ市況が急騰したのか、そしてなぜ頑なにFRBはインフレは一時的という姿勢なのか・・・。

いまは考えなければならないことが山ほどある複雑怪奇な相場であることを自覚しなければいけないと思うし、まして楽観している場合ではないと、肝に銘じた三連休でした。