今後の株式市場の決め手はWTI原油価格の動向!?

今後の株式市場の決め手はWTI原油価格の動向!?

米国市場、そして日本市場の先週の値動きは非常に重要な意味があったと、改めてこの週末に感じています。先週を終わって様々な市場見通しが発表されているけれど、ちょっとどれもが自分が感じていることとズレがあって違和感があるんだよね。先週はCPI、PPIときて6月のインフレが加速したことが分かって、週末の小売売上高も吟味すれば、インフレの影響ばかりが大きくて、決して良好なものではなかったんだけど、予想値を0.1%上回ったというだけで株式市場はポジティブに反応した。

先週の米国市場の強気の理由

けれども決定的だったのは、統計としては荒っぽすぎるアンケート形式の調査である、ミシガン大学消費者態度指数の内容で、7月というリアルタイム性もあってか、米国市場は一段高したうえで、高止まりで大引けという非常に強い結果を生み出した。この消費者態度指数は前月は50という調査開始以来最低の数字を記録していて、今回の予想はそれをも下回る49.9だったけれど、結果的に51.1となっていかにも消費の底堅さを強調するような結果になったことを、株式市場は歓迎した?と言う事でのザラ場中の上昇だったと思わせるけれど、実はそれが全然違ったわけだよね。

ではなぜ株価が上昇したかと言えば、

期待インフレ率 1年先 +5.2%(6月+5.3%)、5年先 +2.8%(6月+3.1%)

こんなインフレ期待になったから。消費が幾分持ち直してきた理由がここに隠れているわけだけど、すぐに株式市場はそこまでは気付かないけれど、イケイケのセンチメントになってるからこれを好感して買い姿勢を強めたんだろうね。

このミシガン大学消費者態度指数をブルームバーグは、「数十年ぶりの高いインフレ率にも関わらず消費支出が底堅いことを示唆し、今月の利上げ幅がさらに大きくなる可能性が高まった」という記事を直後に掲載しているからね。なので普通は株価は上昇しないはず・・・。にもかかわらず上昇したのは、やはり期待インフレ率の低下を歓迎したんだよね。

俺も最初は株価の動きが理解できなかったし、納得も出来なかった。けれど、昨夜いろいろ調べててようやくその理由が分かったんだよね。要するにこの調査は登録消費者へのアンケートだから、その時に消費者が何を感じていたか?と言えば、こんな数字になる根拠は一つしかないんだよね。そう、ガソリン価格の低下を感じていたから、と言うことだよね。

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今後の株式市場の決め手は原油価格?

今後、米国のインフレがどうなるのか、FRBが今月どの程度の利上げをするのか、そして始まった企業決算の内容はどうなのか、と言うことが非常に重要だ、とアナリストは言うけれど、それは重要じゃないという事でもないし、ある意味その通りかもしれないけれど、例えば今月のFOMCでは1.000pの利上げはなくほぼ、というか100%に近い確率で0.750pだろうと株式市場は完全に織り込んでるだろうし、企業決算も2Qでは、それほど悪い決算は出ないと分かってると思うんだよね。価格の弾力性が大きいから日本とは少々事情が異なるよね。

なので、見るべきところはズバリ原油価格の動向なんだろうと思うんだよね。ミシガン大学消費者態度指数で期待インフレ率が低下した原因こそが、ガソリン価格の低下でありひいてWTI原油価格の動きだったということに気が付いた。というか、今のインフレはもうそれしかないくらい影響してるのは、間違いないからね。

いま、ようやく調整がついたのかバイデン大統領が中東を歴訪していて、とうとうサウジのムハンマド皇太子と会見した。とにかく米国としては、OPECに増産させて原油価格を落としたいわけだが、足元を見られたくないのか、会談の第一声が例のカショギ暗殺事件を持ち出して、ムハンマド皇太子の責任を追及しちゃったよ。これで、この会談はイランに核開発に反対するという共同声明が先行してしまって、原油増産の要請は上手く買わされるというとんでもない失策に発展してしまったわけだよ。

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恐らく米国はサウジに対して軍事援助を持ち出して、イラン云々の合意を取り付けたんだと思うけど、肝心の原油増産に関してはやんわりと拒否されたんだろうね。「今後数か月以内に行動することを期待する」みたいな意味不明の発表をしただけだった。これで、ダダ下がりしていた原油価格は戻り基調になって週末はWTIが$97.57、ブレントは$101.13と上昇して取引を終えている。

つまり、想像するにバイデンは民主党で、人権問題からしてカショギ事件を指摘しないわけにはいかなかったということだろうけど、これでますますサウジとロシアの関係は強まる可能性が出てきたんじゃないか?カショギ氏殺害はサルマン皇太子が首謀しているといままで散々サウジを避難してきた。その結果、サウジと米国は上手く行かなくなってきて、いざと言う時にOPECはOPEC+の資源国としての利害を最優先する、と言う方向に舵を切った。もちろんOPEC+にはロシアがいて、原油や天然ガスの生産量は総生産量の半分以上を占めるわけで、そんな独占的な地位をわざわざ増産して価格下落させることには使わないと思うよ。

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ロシアが戦争を始めたことで、結果的にOPEC+は莫大な利益を手に入れることになった。けれども新型コロナ当初はマイナス価格に転じるというとんでもない事態になったことも経験してるからね。そして、今後世界経済は不況になることはもやは決定的で、そうなってくると今ここで原油を増産して価格を落とす必要はさらさらないからね。

でもこうなったのは産油国からしてみると、欧米の自業自得だと見えるだろう。再生可能エネに全力で舵を切って、米国はショールに対する投資をほぼ壊滅させて増産を不可能にしてしまったし、欧州はいち早く化石エネ投資を禁止する、みたいな方針を打ち出していた。つまり原油や天然ガス開発に融資や投資が出来なくなっていたわけで、その流れはOPEC+にとってはまさに死活問題だからね。そこで、始めたのがプーチンのウクライナ侵略じゃないの?って言いたくもなるけれど、多分そうだろうけどね。

今回のこの状況でOPEC+はたとえ不況になっても、原油をタイトにすることで売り上げを維持できると言うことを学んだのだと思う。なので、今後原油価格はよほどのアクシデントがない限り、高止まりするか、またはこの冬に向かってさらなる上昇局面が来るのだと思う。

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米国政府の致命的な失策

と言うわけで、原油価格が下落すればガソリン価格も下落して、期待インフレ率が下がり、インフレ懸念相場は一見収束に向かうかに見える。けれども、今回のバイデン大統領の交渉失敗によって、インフレ高止まりは決定的になったかも。多少下げるとは思うけれど、冬に向かって原油価格次第ではさらに厳しい状況もあり得るからね。

最近原油先物を弄っていたせいで、いつもよりも原油を注視するようになっていたけれど、いまはプーチンが欧州に対して天然ガスの供給を止めるんじゃないか?という観測も出始めた。いまは定期修理とか言い訳して止めてしまっているけれど、これが再開されないと、欧州経済はとんでもないことになる。そうなると、原油価格も再度上昇基調になってくるよ。

FRBもウクライナ問題や新型コロナ、原油価格などは、守備範囲の外、と言ってるけれど、まさにその通りで、恐らく株式市場が考えている戻りのシナリオは崩れるだろうと俺は思ってる。バイデン大統領以下米国政府は、今回致命的な外交上の失敗を犯したとおもうけどね。