舞い上がる日米株価

舞い上がる日米株価

結局、恒大集団に関して言うと、利払いを実行したことですぐに破綻と言うこともないだろうという安心感、そして最後は当局が支援して破綻はさせないんじゃないかという楽観が支配的になった。もちろん、双方が正しいかもしれないし、株式市場から当面は恒大リスクが消えたということになった。その結果、米国市場の大きな戻りとともに、日経平均もあっという間に¥30,000台に乗せてくるという展開。そしてなおも、今夜は日米ともに続伸気配ということになってる。

知っての通り中国経済はいまや米国に次ぐGDP第二位の規模で、世界経済の約17%(米国は24%、日本は6%、2020年)を占めるわけで、その中国経済が不動産バブルの崩壊によって大きく傷つくとなれば、それなりに世界経済や株式市場に対して負の影響が出る。しかし、リーマンショックや今回の恒大リスクは、GDPでは計れない途方もないほどの債務を抱えているという点が常に軽視されがち。

世界がほぼ同時に大量の資金供給を行えば、主要通貨のバランスさえ崩れなければ、過度のインフレにならずに名目上の経済は安定成長が可能である、という壮大な実証実験をやっているようなもので、これは新型コロナ感染拡大といった危機的状況でも十分に機能することが証明されつつある。

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ただし唯一の弱点は、金利が上昇するとたちまち崩れるということで、裏を返すと金利を上昇させないことが、常に投資でのリーターンの優位性を保つことが必須の経済、それが金融ジャブジャブ経済と言うことになる。つまり、今の経済原則からは、豊富な資金を借り入れて投資が行われるわけで、その結果リターンの分だけ経済成長をすることができる。なので、金融ジャブジャブ経済では、資金供給量の数倍、数十倍といった投資が行われていて、だからこそ極めて金利に敏感にならざるを得ないのだ。

そうした中でリスクとしてクローズアップされた中国・恒大集団は、7%、8%の利回りの社債、13%の利回りの理財商材を発行した時点で既に終わっているということになる。デフォルトするか、破綻するか、というレベルではなく超低金利でバランスしている現在の経済の中で、例えば10年物米国債金利でさえ1.3%の時代において、そうした資金を集めざるを得なかったという時点でもう、破綻していると言ってもいいのだ。

一度利払いしたからと言って、何とかなるとか当局が助けるとか、それこそあり得ないシナリオに沿って、強気になるような相場だとすれば、それは確実に一時的なものだと思う。事は恒大だけの話ではないからなおさらだ。

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さて、FOMCでほぼ11月からテーパリングを開始することが示唆された。そして恐らく利上げは2022年のどこかで行う必要を暗に示された。恐らくFRBは米国債とモーゲージの買い入れ終了後に利上げに踏み切るはずだから、テーパリング期間は約半年、毎月1兆円程度の減額というスケジュールだろう。

その間にバイデン政権はインフラ投資法案によってますます国債発行額を増やすのであって、それとテーパリングが重なると米国債金利はどう見ても急上昇してしまう。さきほどの恒大の話ではないけれど、いまのこの金融ジャブジャブ経済は金利上昇に対して極めて脆弱なので、いずれにしても財政出動による大量の国債発行かFRBのテーパリングのどちらかが腰折れると思う。

つまり今回のFOMCの内容は諸手を挙げて歓迎できるものではない。けれども日米株式は急騰中である・・・。そしてそれが株式投資なのだ、とつくづく思わざるにはいられない。

「株式市場は時として理にかなった道筋を行くのを拒む。だから暴騰や暴落が起きて、熱が冷めると現実を受け入れようとする。それを覚えておくといい。」

彼岸ということで師匠の墓参りをして、帰りに奥様の特養に立ち寄ってタブレットで面談し報告をしてきた。奥様も自分もすっかり歳をとった。