世界経済に危機迫る!ー中国リスク編ー

世界経済に危機迫る!ー中国リスク編ー

状況が悪化するときには、何かと理由もなしに悪いことが重なるものだ。今夜の米国市場はダウこそ延長に上値を追うかに見えたけれど、NASDAQとS&Pは一時的な米国債10年物金利を嫌気してマイナス圏でスタートし、プラス圏に浮上することなく下落を始めている。深夜なので情報も陰られている中、セントルイス連銀のブラート総裁が「インフレ高止まりの可能性を警告」とコメントしたことや、日経は引き続き中国恒大への懸念が根強いと適当に記事を上げている。

ブラード総裁のコメントが理由であるかは定かではないが、WTI原油が一気に$78を突破する急騰を見せたのは、カリフォルニア沖のパイプライン破損による原油流出事故にも起因していると思われる。原油や天然ガスが大幅に不足し、発電に過大な影響が出ている最中の出来事であると同時に、環境に多大な影響が出ていると報道され、エネルギー問題はますます拗れるのではないか。

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さて、今の株式市場には多くの懸念が渦巻いていて、どれを重視すべきかで投資行動がガラリを変わってくるという非常に難しい状況だと思う。中でも中国リスクとエネルギー問題、インフレ(スタフレ)懸念はどれも単独で材料とはなり得ない要素が多い。こうした状況では、株式市場のセンチメントの傾きが需給に直接現れると思うので、個別の要因を特定するよりも、マクロ的な視野で投資環境を確認することが大事だと思う。

そのためには、出来るだけ多くの懸念材料を列挙し、関連付けて考える必要があると思うけどね。

中国リスクの進展

今までどれだけの債務を積もうが、株式市場は徹底的に中国リスクを無視し続けてきた。そしてそうすることでウォール街は中国関連企業の米国上場を通じて莫大な利益を分け合ってきたわけだが、習近平のハイテク企業に対する強硬な政策が次々に行われ、懸念されていた不動産バブルの破綻を思わせる恒大集団の破綻不安で、一気に中国リスクが意識されるようになった。

それでも、米国の投資主体は対中投資を止めようとはせず、場合によっては絶好の投資チャンスとばかりに勧誘を続けている有様。しかし、中国経済の状況は日を追うごとに悪化する一方なのだ。

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恒大集団の破綻はカウントダウン

恒大集団は人民元建て社債、ドル建て社債、理財商品、そして債務保証と次々に期限が迫り、完全に資金的に行き詰まった状況だ。3日に期限と言われた合弁会社の債務保証は、不動産管理部門を売却することにより手当てができると報道されたが、それは同時に健全な収益部門を失うという意味であって、完全にネガティブ要因である。売れるものは全部売るという方針で直近のデフォルトを可能な限り回避したいというのは中国当局からの命令であって、それはすなわちすでに解体へと足を踏み入れたという意味でもある。そしていまだ隠れ債務がどれほどあるのか分からない状態で、実質破綻処理と言うことになれば、中国経済に対する影響は計り知れないだろう。

中国電力不足のジレンマ

中国は発電用石炭の輸入の多くをオーストラリアに頼っていたが、ウイグル人権問題を厳しく指摘したオーストラリアと完全に対立関係になり、その結果同国からの石炭輸入が途切れた。石炭は大別すると原料炭と一般炭に分けられるが、発電用は一般炭で賄われ、中国の発電は習近平の号令により自然エネが約30%、原子力が4%、残りは火力発電となるがその大半が石炭火力発電である。

問題は自然エネルギーが安定しないことで、30%と比率の高い自然エネは水力が大雨とそれに伴う災害の影響で、風力は風向きで、非常に不安定であるということ。そして主力の石炭火力は、原料の高騰により赤字垂れ流しの状態に陥った。そのために電力各社が一斉に供給制限をせざるを得ず、まさに苦境に陥っている。

また原料炭はコークスとなり製鉄用の燃料になるが、中国の製鉄企業はすべて国営で、しかも赤字垂れ流しの状況は発電と変わらない。さらに急激に増加するEV車の充電用電力需要も急激に拡大していることが、電力不足を助長している。

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悪化する国内経済と台湾進攻

度重なる豪災害や食品価格の高騰、そして理財商品懸念と、今の中国は人民の不満が頂点に達しようとしている。都市部と農村部、一般労働者と共産党員のおびただしい格差は常に社会不安として中国に影を落としている。そこに、習近平の「共同富裕」を標榜し、浙江財閥系企業への圧力と、教育産業への圧力を通じた愚民化政策で共産主義的色合いを強めた経済対策は、一段と消費の悪化を招いている。

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そこで習近平は、人民解放軍による台湾の防空識別圏への侵入を繰り返し、台湾を挑発し始めた。香港の民主化を根絶やしにした後、今度は「一つの中国」政策の一環として台湾併合を目論んでいることは明らかで、TPP参加を表明し歓迎されていることに対する嫌がらせでもある。そしてそこには台湾と言うターゲットを作りそこに人民の目をむけることで、国内統治を維持しようという意図が現れている。

これに対して親中のバイデン政権は、コメントこそ中国を非難して見せるものの、具体的な行動は一切取らないという、非常に不信感募るもの。虎の子の空母まで派遣して中国に向き合っている英国などから見れば、バイデン政権の姿勢は容認しがたいだろう。

共産主義国は外に敵対勢力を作り上げることで、国民の意識を反らす。そしていよいよ経済の悪化が深刻になると、侵略行為を行うものであるのは、クリミア半島を侵略したロシアを見れば一目瞭然である。故に、台湾有事は目先の現実として再認識する必要があると思う。

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台湾有事なら半導体不足は決定的

台湾は「半導体の安定生産には平和が不可欠」とのメッセージを昨日発信したが、少なくとも台湾有事となれば中国はTSMC等複数お半導体企業の中国内工場を占拠したうえで、半導体のサプライチェーンを破壊する可能性が在る。

台湾の半導体は米国にとっても生命線であるという見識でトランプ前大統領は中国ろ対峙した。しかし、この状況に至ってもまだ米国は中国との貿易交渉を推進するというメッセージとともに数日後に交渉を再開するとしている。中国がトランプ政権に対して確約した輸入ノルマを達成できそうにないからだが・・・今の中国はそれどころではないだろう。

いま、中国が台湾に手を出すような事態になれば、半導体不足どころか、世界経済が大打撃をこうむることは必至である。

中国経済の影響は軽視できない

日本は不動産バブルが崩壊して20年間苦しみ、30年後の今でも経済は低迷したままだ。国民性にもよると思うけれど、今の団塊の世代の中には、バブル崩壊の影響で住宅ローンなどで地獄の苦難を味わった人も少なくないわけだから、せっせと貯蓄に励み貯めるだけ貯め込んで、日本経済から成長を奪い窒息させてしまった。

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しかるにもしも中国の不動産バブルが崩壊し、日本の比ではない、はるかに膨大な不良債権があふれたとすれば、少なくともこれまでの経済成長は到底望めなくなるだろう。評論家の中には人民元建てだから大丈夫、という人もいるし、米国市場はドル建て債務はさほど多くないので影響は限定的と捉えているようだ。

しかし、泣いても笑っても世界のGDP第二位の大国なのだ。そして経済は連鎖である以上、成長期にはプラスに連鎖するが、巻き戻しとなると債務が連鎖してしまう。巷間言われている中国恒大集団の債務は約33兆円。しかし、不動産業界が一斉に不況入りすれば、すぐに債務総額は数百兆円になるし、間違いなく地方政府に飛び火する。

先日のブルームの報道では地方政府の債務総額は600兆円以上と言われているが・・・その中の多くは不動産開発やインフラ開発向けである。また極めて高利の理財商品もあるし、銀行へも飛び火する可能性が在る。またネガティブな影響は貿易を通じても現れるだろうし、世界中の中国国内への投資もまた大いに毀損される可能性が在る。

中国が世界経済の中での存在感、影響力が大きければ大きいほど、ネガティブな影響も大きくなるのだろう。その時株式市場への影響は・・・自明の理である。