FRBが腹を括らない限り、インフレは収まらない!

FRBが腹を括らない限り、インフレは収まらない!

株式市場は何か勘違いをしていると思うんだよね。それは今回のインフレの主要因は、FRBが金融緩和をジャブジャブにしたからと決めつけてるってこと。けれども、そもそもそれが大きな間違いで、FRB自身も去年そういう認識で大きな過ちを犯した。もちろん金融ジャブジャブがインフレに拍車を掛けたことは間違いないかもしれないけれど、実態は結構単純な需給の問題なんだよね。

それはここ2年くらいの半導体不足を見ればわかると思うけど、世界中の自動車メーカーが時代に乗り遅れまいとして一斉にEV路線に切り替えた。ただでさえ需給がタイトな半導体市場で、いきなり需要が膨らんだりしたら不足するに決まってるし、さりとて簡単に生産能力を増強できないわけで、そうなるとこの先どこまで行っても半導体不足は続いちゃう。

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オマケに脱炭素とか再生可能エネとか、温暖化問題を政治的に決めてしまうから、絶対的に電力不足に陥るのは火を見るよりも明らかで、これから先の電力需要を賄うには原発ナシでは絶対に不可能で、背に腹は代えられないから、原油、天然ガス、石炭も動員しないといけなくなった。そこでプーチンが戦争なんかやらかすものだから、世界経済はにっちもさっちも行かなくなってしまった・・・。これをいろいろ複雑に考えてもダメで半導体も電力も需給バランスが崩れたと言うことに尽きるよね。

それと今回のインフレは全く同じだと思うんだよね。FRBがいくら利上げしても、今月から遂にQTに踏み込んでも、規模が小さければ需要は衰えないし、コロナ明けだから雇用も衰えない。そして需要はこの先を見越した先回り消費になって、雇用は働かないと生活がタイトになって苦しくなってるという状況がある。逆に言えば雇用が堅調ならば需要は衰えないんだよね。

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21:30 (米) 5月 非農業部門雇用者数変化 [前月比] 42.8万人
(43.6万人)
32.5万人 39.0万人
21:30 (米) 5月 失業率 3.6% 3.5% 3.6%
21:30 (米) 5月 平均時給 [前月比] 0.3% 0.4% 0.3%
21:30 (米) 5月 平均時給 [前年同月比] 5.5% 5.2% 5.2%

今夜米国で5月の雇用統計が発表されたけれど、新規失業保険申請件数が減り続けている中で、雇用が悪い訳もなく、39万人というほとんどサプライズに近い数字となり、相変わらず平均時給も伸び続けているのが確認できてしまった。

それで市場の楽観は吹き飛んだ、というか「9月は利上げしなくてもいいかも」と発言した何処ぞのアンポンタンな連銀総裁の勝手な意見も撃沈したよね。ブラード副議長は「9月も0.500pです」と言っていたけれど、今の状況を考えたらそう言うしかないだろう。

「米国経済は好調なのでリセッションに陥らない」「まだ当分は持ちこたえる」「リセッション入りは2024年」といろいろ楽観論が出捲ってて、それならば、ということで株式市場は一斉に「買い」になった。アメリカ人は「米国経済は強い!」という言葉に弱いんだよね(苦笑)。

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そういう感覚って、決して間違いではなくて、「欲しいけれどモノがなくて買えない」「今のうちに買わないともっと値上がりしてしまう」という消費行動になっていて米国経済は確かに強いんだよね。ところが、何処まで行っても「モノの供給ができない」という状況になっていて、完全に需給が崩れた状況なんだよね。新型コロナ、中国・ロシアの蛮行、エネ高・資源高、タイトな輸送手段、そして労働者不足。こんな状況なのだから、経済が強いもヘッタクレもなくてインフレは需給で考えてもこのままでは収拾できないよね。

それって株式相場とまるで同じこと、つまり今の米国経済は「ストップ高買い気配」なんだよね。

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さてさて、この状況はこれからが恐ろしいのよ。つまり、事は米国経済だけでなく、欧州もアジアもそして日本も同じようなことになってるということ。世界中で金融ジャブジャブをやらかしたわけだけど、需給がバランスしている限り、今回のような極端なインフレにはならないんだよね。要は完全に需給バランスが崩れてしまったと言うことだよね。

もしも株式相場なら、S高買い気配に対して大量の売り玉をぶつけて需給を崩してしまえば簡単に収拾できちゃうけれど、いまはその売り玉がない状況だからね。かといってちょぼちょぼ金利を上げても買い意欲を削ぐことは出来ないし・・・。

と言うわけで、今のこのインフレを収拾する手段はだた一つ。世の中を不況にする以外に、不況にして買い意欲を削ぐ以外に方法はないと思うけどね。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOやゴールドマンサックスのジョン・ウォルドロン社長が、バンバン警鐘を鳴らしているのは、彼らはそれしかないと言うことを知っているからだろう。それに例によってたっぷりとあらゆる方面でショートしているだろうからね。「うちは大丈夫だけど」なんて言っちゃってるし・・・。

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いよいよ米国の6月の3連戦が始まった。3日雇用統計ー10日CPIー15日FOMCの初戦の今夜はまぁ、この程度だろうと。それでも米国投資家は懲りないから押し目を買い!なんてやってるけどね。FRBもまたぞろ去年と同じ過ちを繰り返しそうで・・・。日本は10日にMSQがあるから来週の値動きは厭らしいと思うけどね。

とにかく、今のインフレ地獄を脱出するには・・・不況にするしかない。つまりはハードランディングを意識的にやるしか方法がないよね。ソフトランディングを狙ってるのか、QTに関しては全く触れもしないけれど・・・。とにかくFRBに残された手段はQTしかないのよ。強制的に「梯子を外す」しか方法がない。現実に株式市場を暴落させて、同時に債券市場も暴落させて、「ヤバイ」という雰囲気を醸し出すしか方法はないんだよ。

FRB主要メンバーはそんなこと百も承知なんだろうけど、まだ腹が括れてないらしいけどね。