原油・仮想通貨・中国 市場暴落の3要因

原油・仮想通貨・中国 市場暴落の3要因

今、現時点で世界の株式市場を揺るがせているものは、言うまでもなく原油・天然ガスといった化石燃料とビットコインだと思う。もちろん日本市場は中国恒大集団のデフォルト懸念を投影したような動きになったけれど、これも日本経済が中国との結びつきが非常に強いからで、海外勢は中国リスク=日本リスクという見方をしている。しかし、中国問題を米国や欧州は努めて材料視しない方向なので、そのしわ寄せが日本市場に来るわけで、今日の▲¥546暴落のトリガーになった可能性が高い。

がしかし、急落の本質的な部分はやはり原油高の悪影響が円安とあいまって大きいのではないか?という懸念だろう。観測では7ー9月の2QGDPはマイナスと言われていて、ならば10ー12月の3Qは連続マイナスの可能性が高い。そうしたマクロ要因に対し、日経平均PER14台が割高に見えたという事だろうと思う。

そしてエネルギー市況の高騰と相まって、いま大きな関心を寄せられているのが仮想通貨(ビットコイン)であって、これが今後の金融市場を大きく変貌させる可能性が出てきた。この件に関しても米国でETF上場許可が下りて取引が開始された今だからこそ言及する必要があると思う。

いま、株式市場は原油、ビットコイン、中国経済の3つの途方もないリスクを抱えている。

原油価格の制御が出来ない

米国大統領選挙のゴタゴタの中、世界各地で原因不明の停電に襲われ、それがトランプ陣営の謀略説にまで発展した。しかしその原因は、世界レベルでの地球温暖化対策・脱炭素社会への盛り上がりで欧州各国が脱化石燃料に大きく舵を切ったこと、そしてバイデン大統領の大規模な脱シェール政策、日本の菅総理の脱炭素社会宣言といった世界的な温暖化対策の流れにあったと言える。

先進各国は温暖化対策のためにCO2等温暖化ガスの排出量削減目標を掲げて強力に取り組み始めた矢先に新型コロナ感染拡大に見舞われ、十分なエネルギー対応が出来なかったのだ。感染拡大期にはそれでもよかったが、経済の立て直しのためには急激なエネルギー需要が発生する。しかし、CO2排出削減というテーマがある以上無暗に化石燃料に頼れないというジレンマを抱えつつも、化石燃料なしでは経済は立ち行かないという現実を突きつけられた。

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その結果止むに止まれず、各国が原油・LNG購入に殺到したことで原油価格は鰻登りに上昇したということだろう。OPECは、先進国の勝手な方針変更に振り回され原油価格は暴落して辛酸を舐めていたこともあり、また新型コロナの影響もあって増産に踏み切らない。OPECから見れば先進各国は勝手に再生可能エネへの移行を表明し原油価格を暴落させたのだから、事情が変わったといってこれ以上翻弄されたくないというのが本音である。

しかし、根本的な問題は、米国が脱シェールを推進したことで、世界最大の産油国としての地位を放棄したことにある。トランプ時代は米国の産油量はサウジを抜いて世界最大となったわけで、原油価格をコントロールできる立場にあった。しかしバイデン政権はそれをすべて放棄したわけで、一気に原油が投機の対象とみなされ独り歩きしてしまったという失策があるのだ。

加えて地球温暖化対策に急進的な欧州では、石油メジャーの新たな化石燃料採掘を反社会的とみなし、金融機関は石油掘削施設に対する新規開発や設備更新のための融資を全面的に止められた。原油の生産量を維持するためには、新たな油床の開発や設備のメンテナンスが重要であるが、現状の油床では将来的に限られた産出量となってしまう。したがって、あろうことか豊富な埋蔵量を誇る原油やLNGは、産出量の増大が不可能な枯渇危惧資源となってしまった。

原油価格は産出量と備蓄によって市況で決まるものだが、米国が政策的に産出量を拡大できない状態になったことで、OPECの産出量がほぼほぼ価格支配権を持つことになった。エネルギー需要の急増に対しては太陽光や風力は全く対応できないという欠陥も同時に浮き彫りになって、結果的に産出量をOPECに握られ、原油の価格制御が出来なくなってしまったわけである。

原油価格が市況に依存する以上、こうなってOPECが原油価格高騰といって増産し価格を安定させるとは思えない。2020年4月、今から1年半前、瞬間的とはいえ原油価格は貯蔵経費がかかるという理由でなんとマイナスにまで突っ込んだのだ。

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いま原油価格はOPECの思いのままだ。そして冬に向かってますます原油需要が高まる。灯油やガソリン、そして急増しつつある電力需要等今年もまた原油不足に悩まされるのは決定的と言える。その結果原油価格はまさに青天井となる可能性が高いし、新たな油床の開発が再開されない以上、また各国金融機関の融資規制が解除されない以上、原油価格は高止まりの可能性が極めて濃厚と言える。

その結果、世界的なインフレは慢性化するだろう。そして経済に悪影響が出れば出るほどにスタグフレーション化する可能性が高く、原発再稼働という選択を余儀なくされるだろう。

仮想通貨は資金の拠り所になる

一昨日、米国でビットコインの先物ETFがSECから承認され取引開始となった。これでビットコインは現物でなくても株式市場でETFとして売買できるようになったのだ。そしてそうなると、信用取引並びに反対売買(空売り)が可能なだけでなく、オプション取引等デリバティブ取引もできるようになる。

米国では上場と同時に大商いとなったわけだが、その大勢が機関投資家であったと言われている。このプロシュアーズ・ビットコイン・ストラテジーETFは初日から1000億円以上の大商いとなり、6%以上の上昇となったわけだが、同時にビットコインも約760万の最高値を更新した。

しかしなぜ今、ビットコインなのか?

その答えは今後の株式市場、金融市場全体を大きく左右する台風の目となりかねないからである。

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先ごろ中国当局は自国のビットコイン等仮想通貨の取引、並びにマイニングを全面的に禁止した。そのことでビットコインは急落すると思われたが、反対に大きく買われ始め、あれよあれよという間に600万円を突破していた。

その理由は、中国という情報開示が不透明な参加者が退場したこと、中国が退場したことで当局のマネーロンダリングに関する監視ができるようになったことで、機関投資家の参入障壁が低くなったことがある。

しかし、ビットコインが選好されている理由はそれだけではない。つまり、ビットコインは経済環境の変化に惑わされることのない資産となりうる大きな可能性があるからだ。例えば株式や債券は、景気動向や金利によって大きな価格変動が生じる。新型コロナ感染拡大後の市場を見れば、株式市場も債券市場も中央銀行の金融政策によってコントロールされているのが分かる。経済が不安定になれば金融緩和を行うわけだが、俄然利回りは低下する。逆にテーパリングしたり利上げをしたりすると、株式や債券価格が急落する。

つまり現代の金融市場は、すべて中央銀行のコントロール下にあると言えるわけだが、外部要因による価格変動や政治的なリスクまで織り込もうとするために、急騰・急落を繰り返すことになり、安定的な資金運用ができなくなってきている(と投資家が思い始めている)。

従来の投資ではゴールドが安定的とされていたが、如何せん投資パフォーマンスがでない資産となってしまったし、言うまでもなく金利はつかない。またこれだけ膨大な金融緩和をして貨幣価値が急落しても、結局ゴールドの市況は一向に改善しない。本来であれば、金融緩和がリーマン以降数倍となれば、ゴールドの価格は数倍となって然るべきだが、そうはならないことが証明されたわけだ。

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世界の資産家や機関投資家、メガファンドは、安定的かつ経済環境に左右されない新たな投資資産を求めていると言える。そこにビットコイン(仮想通貨)がピタリとはまったということになる。

現時点でのビットコインETFのボラティリティは年間100%と算出されている。これは1年間で倍にもなるし半減するかもしれないという、極めてリスキーなものであるが、ETFが上昇して取引量が増加することにより、将来的には安定してくると言われているし、何よりも通貨の価値を反映しやすい資産だと言われている。つまりは、金融緩和でマネーサプライが倍増すれば通貨価値の下がった分だけ価格が上昇するということになる。

同様の性質をもった資産に不動産があるが、不動産は流動性がかなり低くビットコインのライバルとはなり得ない。気軽に売買でというわけには行かないが、ビットコインなら、ビットコインETFなら瞬時に売買が可能だ。

いま、低金利時代となって以来、債券市場への資金流入が極めて細っていると言われているが、まずはその代替投資先としてビットコインは極めて有望視されているために、将来的には徐々に大きな資金変動が起こる可能性もある。

また外部環境や業績によって変動幅の大きな株式市場からもリスクオフの逃避先としてビットコインが選択される可能性が非常に高い。つまり、株式市場は従来のゴールド、コモディティ、債券等に変わる新たな逃避先を得ることになるかもしれない。そうなると例えば暴落局面では資金をビットコインに移すという選択が日常のことになるかもしれない。


中国リスクはまだ始まったばかり

原油価格が制御不能になっている最大の原因は、バイデンがシェールにストップをかけたことだ。ライバルがいなくなったOPECは産出量をコントロールすることで自在に価格を決定できる。それは最大のライバルがいなくなったという意味である。

同様に中国経済は少なくとも公称では世界第二位のGDPを誇る経済大国であるが、その中国経済が従来のように機能しなくなるとすれば、その影響が世界経済に及ばないはずがない。少なくとも昨日の日本市場の▲¥546の暴落はその前兆と個人的には捉えている。

10月23日が恒大集団のデフォルト猶予期限切れ日であると言われているが、恒大はすでに破綻しているも同然で、同時に中国の不動産業界はいま、音をさてて崩壊している真っ最中である。また、公称では中国は太陽光エネルギー比率が30%を超えたと言われているが、その影響が皮肉にも強度の電力不足を招いている。また国内のインフレも止まらず、経済状況は非常に厳しくなっているわけだが、その中での不動産業界の崩壊が如何に経済に影響するかは、想像するまでもない。

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いままで幾度となく中国経済は崩壊、と言われ、そして一向にその兆候がみられないことで、いつしか共産党支配下にある中国経済は崩壊しないというロジックに変わってきた。しかし、それこそが幻想であって、共産主義であろうが容赦なく経済は崩壊するのだ。

そして極めて危機的な状況に今の日本があるということだけは、世界の共通の認識でもある。だからこそ、昨日~今日にかけての株式市場は日本市場の独歩安となっているのではないか?

世界経済の行き詰まり

中国経済急減速の悪影響、エネルギー価格の急騰は、世界経済の行き詰まりを誘発するのに十分な要因であると思う。新型コロナ感染によって世界経済は、根底から揺さぶられ、そしてその影響はビジネスはもちろん、労働市場の変貌や、既存企業の膨れ上がった債務等々容易には取り返しのつかぬ状況に陥ってしまったと思われる。

そして決定的なのは新型コロナの感染は今も、そして来年以降も延々と消滅することはないと思われること。世界でワクチンが普及と言うが、そのワクチンは半年~1年で抗体が減少してしまうわけで、インフルエンザ同様に毎年接種しなければならない。また経口薬も開発されつつあるけれど、どれほど普及するかは未知数で、接種証明の発行も困難となる。

さらに経済環境の変化により慢性的なインフレに悩まされる可能性が高く、これまで成功を収めてきたとされる金融緩和ジャブジャブ経済も完全に行き詰まるのではないかと思われる。

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今の金融市場の半分は虚像であると思う。米国上場の中国企業の株式を例にすれば、議決権のないただの紙切れに過ぎない株に、通常と同じ基準で価格を付けてしまっていることの矛盾。決算内容を開示しない企業の監査書を決算書と同等に扱う矛盾。それらはすべて、リーマンショック時のサブプライム債券をAAAと格付けして販売したことと何も変わらないと思う。

ゲンスラー米SEC委員長の警告にもかかわらず、それを一切無視する株式市場。途方もない金融緩和の末に、様々な矛盾が鬱積している現在の金融市場の在り方は、金融緩和の必然の結果かもしれない。

株式市場は大暴落へ

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もしも世界の株式市場が暴落したならば、今の新主義システム下では打つ手が全くないと言っても過言ではない。リーマンショック以来すでに世界の金融当局は膨大な金融緩和を行って景気を支えてきた。というよりも株価や債券を支えてきたと言える。そして新型コロナ禍では、もはや無謀と言える領域まで金融拡大を広げてしまった。その結果、デリバティブを含めた金融資産の評価額は天文学的な数字に跳ね上がり、もはや金融当局と言えど、制御不能であることは言うまでもない。

今の世界経済の減速は、世界経済はコロナ以前に戻れるという期待が経済環境の変化によって裏切られつつある現象と言える。そしてその理由は、政府や企業、個人が莫大な債務を負う結果となってしまったからである。そして恐らく2度と日米欧の中銀は利上げすることが出来ないかもしれない。

なのでひとたび中央銀行が金融制御を失敗すれば、一気に蓄積された矛盾が噴き出るだろう。少なくともその例は今後の中国を見ればわかるはずだ。しかし、それを目にする間もなく早ければFRBのテーパリング開始によって世界の株式市場は大暴落となるかもしれない。

そしてその時に、昨日(10月21日)の理由なき日本市場の暴落が、起点になったと言われるかもしれない。