いまの日本ならば、株式投資より資産防衛優先!
- 2022.03.13
- 放言
独裁者・権力者というものは、自分の思い描いたシナリオ通りに事が運ぶか否かがもっとも重要なのだろうと思う。けれども普通にやっていたら、そんなシナリオなどたちどころに破綻するから、そこは権力を使って無理矢理こじつけながら進もうとする。だから必要なことならば、それがどんなに惨く残虐でも粛々と、でも結構臆病になりながら少しづつ領域を広げるようにやってしまう。
報道によれば、プーチン大統領はウクライナ攻略を、全土とは言わないまでも首都キエフの攻略と現政権の崩壊、暫定政権の樹立くらいは一週間もあればできると思っていたらしい。そう考える根拠は、イエスマン揃いの側近から十分に情報を示されていた。なので、まさかここまで本格的な戦争をするとは思っていなかったし、少なくても民間人を犠牲にすればするほど自分の地位が揺らぐことも知っていたはずだ。
ところが、この侵攻作戦は今に至るまで、予想外の結果が相次いでしまって、その都度強引に突破しようとするのだが、そうすればするほどプーチンにとって逆風が強まるばかり。気が付くと、ウクライナ軍の予想外に頑強な抵抗に会っていまだにキエフを攻略できないでいるし、同時にロシア経済は後戻りできないほどの壊滅的な痛手を被る結果になってしまった。言ってみればプーチンにとってはすべてが大誤算だったと言えるかもしれない。
誤算と言えばロシアだけではなくて、欧州各国や米国にとっても大きな誤算が生じた。恐らくロシアのウクライナ侵攻が起こらなければ、そして少なくとも無差別に民間人を巻き込むような本格的な戦争とならなければ、インフレはまだ金融と財政のシステマティックな対応で対処出来たかもしれない。ところが、未曾有の経済制裁によって資源大国であるロシア経済が破綻する情勢になって、需給とは別に戦争プレミアムで押し上げられたコモディティが、インフレ退治のシナリオを完全にぶち壊してしまった。
GDP世界11位と言えど、資源や穀物を輸出することで成り立つロシア経済は、ベルリンの壁が崩壊して以降中国経済と同様に資本主義へ組み入れられることになたわけで、現行の資本主義経済のなかで決して無視できないウエイトを持つに至っている。もちろん関係ないと無視できるようなかかわり方ではないのは十分に分っているわけだが、今月5日にプーチンが「外貨建て債務のルーブル決済を行う」と発表した時点でロシア経済は実質的に破綻したと言える。もちろん現状ロシアに対する債権はほぼ無価値となったわけだが、それ以上に今後のロシアに対する投資を全否定したことになるからだ。
現在、ロシアと関わりのある資産に関しては世界中の金融機関、投資家、ファンド、企業が生き馬の目を射抜くほどの緊急性を持って計算しているはずで、特に複雑に絡み合ったデリバティブという地雷も多数埋まっていることは確実で、それが徐々に表明化し始めるのは4月以降だと思われる。ということはつまり、金融政策という点では現状のインフレ高止まりはむしろこれからより加速する可能性がある反面、金融政策では対応できない可能性が非常に高いこと、そしてロシア破綻の影響の広がりが見えないことで、西側資本主義も大きな影響を受けると思っておいた方が良い。「ロシア経済破綻の影響は限定的」という楽観など、全く通用しないということが、近々のうちに表面化するはずである。
とにかくいま、プーチンは追い込まれているのは間違いなく、追い込まれた独裁者は、必ず一気に事態の好転を狙って、大規模かつ残忍な手段を繰り出して、自己の目的達成だけを考えるものだ。拷問と同じでより苛烈な痛みを与えるとそのレベルに従って必ず自白するものだ、と考える。だからこそ、ウクライナが抵抗をすればするほどに大きな悲劇が待っているような、そんな気がしてならないのだ。ロシアは攻撃をしながら、民間人の命を奪いながら停戦交渉をしているのが、その何よりの証でもあるだろう。
だからこそプーチンは追い込まれたら、予想出来ないような手段に出ることも十分にあり得るからこそ、あえてより残虐な市街戦や原発からの放射能漏れ、そして戦術核の使用に幾度も言及したわけだが、万が一そうした事態となれば、ロシアは経済のみならず国家としての存続もできないのではないか?と思う。そうなればたとえ政治が許しても世界の世論が許さないはずだ。
現段階でそこまで見通せる状況であるからこそ、現時点での株式投資は大きなリスクを伴うと思う。もっと言えば、リーマンショック以降の金融資本主義が完全に行き詰まりを呈しているいま、見通せるのはごくごくわずかな将来だけだということ。目先はどうにもならないが、将来はもっと悪化することも十分に考えられる。
新型コロナも克服できず、戦争がはじまりロシア経済が破綻するという状況が足下にある。欧米は高インフレに晒されているが、今の日本であれば株式投資よりも資産防衛を優先するべき状況ではないかと思う。
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