週末だから来週以降の地合いをおさらいしておく

週末だから来週以降の地合いをおさらいしておく

さて大荒れの6月相場がいよいよ本格的に始まったよね。この先はどうなるのか?そんなことは誰にも分らないし、予想しても多分当たらないと思うので、こういう時にこそ、足元の基本的な状況というか地合いを確認しておくことが結構大事なんじゃないか?って思う。大雑把でもまずは全体的な状況をしっかり頭に入れておく必要があるのは、海外大口の行動を理解するのに非常に重要で、彼等の行動でしか株価は動かないからだよね。騰がるも下がるも想定しておかないことには話にならないし、想定していないから「突然の暴落」「突然の暴騰」に見舞われちゃってそれが致命傷になったりするんだね。

なので、いつものことだけど、週末は自分なりに必ず「おさらい」をしておくのが習慣になってる。米国CPIを受けて来週の株価、今後の景気がどうなるか、何がアクシデントになるのか、いろいろ想像しておくことが大事で、それはどういう状況になったときにあれが起こるのだろう、という条件設定をしておけばいい。といっても、そういうのはかなり曖昧なんだけど、元来相場って曖昧なものなのでそれでいいんですよね。

では現時点での俺の捉え方を書きますので。

米国利上げ

昨夜の米国CPIは、相当にショッキングな内容になったけれど、事前にヒントを漏らしたのはFRBのブレイナード副議長財務省のイエレン長官だけだった。ブレイナード副議長は、「9月利上げは0.250pまたは見送り」という楽観論が出たときにすかさずそれを否定したよね。彼女はハト派の代表のような人だったけど、GW明け頃から突如タカ派に変身と言われてた。問題は今後の予想も含めてそう発言せざるを得なくなっているインフレ状況にあったということだから。

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またイエレン財務長官は何度も「昨年の自己の判断は明確な誤りだった」としたうえで、「インフレは高止まりする」とはっきり言っている。彼女の専門は「経済の雇用が占める役割の分析」であって世界の第一人者の学者さんです。その彼女がインフレの高止まりに言及したのは、もちろん今回のインフレの主要因の一つが「雇用のひっ迫と賃金上昇」だから。

今回のインフレは前にも書いた通り、今の水準で高止まりしちゃうと今後5年で資産価値が半分になってしまうんだよね。それはもう大変な事態なわけで何としても抑え込まないといけない。もしも米国がそうなってしまうと、インチキ経済の中国に抜かれちゃうこともあり得るわけで、それは絶対に許容できない。

だから力ずくでもインフレは抑え込みにかかるしか他にいい方法なんかないとFRBは腹を括ったのではないかと思うよね。

次は本命のQT

そしてFRBもマーケットもメディアも出来ることならば言及したくないと思ってるQT。なぜならFRBでさえQTでバランスシートを縮小して金融を引き締めたら、どのような悪影響が出るのか予測不可能だからですよ。ちらほらと様々なアナリストが言及はしているけれど、彼らも分からない。

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今月約6兆円の金融引き締めを開始して9月には約12兆円にまで引き上げる。え~と、6月から9月まで単純に合計で(6、8、10、12と来るので)約36兆円の資金がマーケットから吸い上げられる。けれどもこれを実行したとしても約550兆円もの新型コロナでばら撒いた資金の10%にも満たないわけで・・・。このペースではインフレ抑制にどれほどの効果があるのかは依然未知数と言う感じ。

でもQTによって、とにかく大膨張してしまった株式市場、債券市場、不動産市場、そして企業債務のどこかで必ずアクシデントが発生すると思う。それがどういう形で金融に波及してゆくのか分からない恐ろしさがあるってことだね。

昔の話をするけれど、あのリーマンショックのきっかけは言うまでもなく金融機関が誰彼見境なくモーゲージ(住宅ローン)を貸し付けて、それ単体ではCCCだけど小刻みにして優良債権も小刻みにして、みんな混ぜてしまえばその債券は数学的に破綻確率が極めて少ないAAAになるという理論で起債した債券が、実は(CCCのローンが)返済不能になる例が出始めたとき、評価できなくなってしまったということ。その裏には完全に膨れ上がった住宅バブルがあったんだけどね。

すると金融機関はサブプライム入りの債券の起債を躊躇うようになったことで、貸し渋りが起きた。要は原因はどうであれ、金融機関の貸し渋りが原因だったのは間違いのないことなんだよね。これは日本のバブル崩壊も大蔵省の総量規制で金融機関が貸し渋ったからそれがトリガーになってるという点で全く同じ。

それを考えると、今回のQTだって金融機関にしてみると、手持ちの米国債をFRBに売却して新たな投資を行うというこれまでのサイクルが崩れることを意味するし、金利が上昇すれば保有債券の時価が下落するから、資金サイクルはますますタイトになってくる。そこで貸し渋りが起きるのは当然の流れだからね。

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これが従来極低金利で回していた企業活動に大きな影響を与えることはまず間違いなくて、はっきり言うと新規投資もままならなくなってくる。企業はただでさえインフレでコストが鰻登りのなかで、金融コストもまた上昇したら、どんどん事業がタイトになって行く。しかも今回高水準なインフレ退治の大義名分があるので、FRBの金融引き締めのペースがヤバイ。そこに輪をかけて逆イールドが発生すれば、金融機関は短期資金を借りて長期金利を基準に貸し出して利鞘をえるという通常業務モデルも成り立たなくなるわけで・・・。

これでリセッションにならないはずがない!

もっと言うと、俺自身が最も恐れているのは、ドル円レートに対する影響で、急激なQTはドル不足を促進してしまうから、恐ろしいことになるかもしれないってことだよ。日本だけじゃなくて世界中でドル高になってしまって、非常に恐ろしい事態があり得る!もしかするとドルの争奪戦が始まってしまって、新興国は原油も穀物も何もかもが買えない、なんていう事態に陥るかも。今の急激な円安は、今後の世界中の為替レートを暗示してるのかも。

ハッキリ言って日本がドル円に介入したとしても「一昨日おいで」みたいな話かもしれないという事だよなぁ・・・。世界の基軸通貨の急激な変動は、恐ろしい事態に発展する可能性は、決して妄想なんかじゃないよ。必ず想定の一つに入れておかないといけないことだと思うけどね。

なので、俺自身は以前から書いているように、今回の金融引き締めの根幹は、利上げ以上にQTにあると思ってる。

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円安は何処まで?

そこで円安だけど・・・日本が本格的に介入しようとすれば円買いしかなくて結果としてドル売りなんだけど、同時に米国でQTが始まっているわけだから、はっきり言って通用しない可能性が非常に高いと思う。財務省は準備金をどれほど確保できるのか分からないけれど、少なくとも保有する米国債を売って円買いすることは、多分(政治的にも)出来ないと思うので・・・。

そうなると対外資産を売って、と言うのも考えられるけれど、企業はそんなことはしないだろうしね。なので、もしかしたら米国のQTで最も強烈なアクシデントに見舞われるのは日本円かもしれなくて、そうなるとドル円レートは青天井入りの可能性もある。

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まして日銀は円ジャブジャブを継続するらしいし、最悪のことを考えると、日本国債ってちょっとヤバいかも。鎖国状態で考えると大丈夫でも国際的な「通貨の信認」と言う意味では、とんでもない事態が想定されちゃう。しかも今のペースで貿易赤字が続くと日本の富の海外流出という点で、日本はマジでアルゼンチンになってしまいそう・・・。

下手にFXなんかに手を出すと、逆目に張ったら破滅するね。

だから日本だってオルターナティブの選択をしなくちゃいけないと思う。ここで金融政策を転換して不況突入を覚悟しても円高に誘導する方が、結果的に得策なんじゃないかって個人的には思うけど。そうしないと日本経済は完全に沈没しちゃうと思う。

このまま放置すれば¥150/ドルなんてのもあり得る話で場合によっては¥200/ドルだってある。だって日本だけが金融緩和なんだから・・・。

財務省・金融庁・日銀が「円高の進行を憂慮」という共同声明でドル円相場に口先介入したけれど、そんなのマーケットのポジションからして全く通用しない。「必要ならば介入する」ことを言っているけれど、米国が金融引き締めに動いてる中で、真逆の政策に協調介入なんかするはずがないと、マーケットは完全に足元を見てるね。第一当事者の日銀総裁が「円安歓迎」してるんだよ!まったくとんだ三文芝居だねぇ・・・。

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アクシデントに要注意

こういう状況なので、今後は突如やってくるアクシデントには細心の警戒感を持たないといけないと思う。最近少し原油先物を取引したけれど、原油価格のぶれ方が尋常じゃなくなってるよね。これをテクニカルなんかで見てると強烈なしっぺ返しに合うな、ということで自重することにした。なぜなら今の原油価格って上にも下にも$10くらい1日で動きそうだから。

同時にインフレ時は資源だ、穀物だ、って言ってるけれど、米国でも欧州でも景気悪化が確認できるような段階になったら、急激に相場が変動するかもしれないし、すでにこうした相場はハイリスクな領域に突入してると思うからね。

それとどうしても気になることがある。そう感じるのは俺だけかもしれないけれど、俺は夜間も極力米国市場を見ている。そして最近の明らかな変化、それも日経平均CFDと米国市場の連動性が特に5月以降は大きく変わったと感じるんだよね。とにかく価格の連動性が米国株の1/3~1/2程度になっているという事。週末もダウ▲2.73%、S&P▲2.91%、NASDAQ▲3.52%と比較して日経CFDは▲1.50%にとどまってる。YOUTUBEでもブログでもこのことに言及してる投資家やアナリストはほとんどいないし、日本株は強いという一言で片付けちゃってるけどね。

これは俺には円安進行による日本株のドル建て毀損を防止しようとする動きに見えるんだよ。

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このグラフは日経平均の円建てとドル建ての比較だけど、2021年9月のガースー退任相場以来、海外勢の日本株投資はドル建てでは、米国の三指数と同等の下げになってる。現時点では円安はプラスという機運で日経平均は上昇するけれど、ドル建てでは円安ピッチが速いとさらに下落する。要するに海外勢にとっては日本株をロングすればするほどに円安によって損失が拡大することを意味するんだよね。

と言うことは、ある時点で円安が日本株を押し上げることが止まる可能性がかなり濃厚になってきてるという事でもあるんだよね。日銀が金融緩和を継続すると言っている間は円安止まらんし・・・。となると次回急激に円安に走る場面があるとすると、日本株を売りまくる可能性もあるんじゃないか?

さらに今回の利上げでいち早く崩壊しそうなのが上場されてるSPAC(投資目的会社)とか、ジャンク債だと思う。まずはこういうハイリスクな金融商品から壊滅してゆくんじゃないかと思ってるしね。金融緩和を追い風にしたものは当然、引き締めになれば成り立たなくなるからね。

最後にそれでもどうしても買い勝負したいとなれば、ある程度玉砕覚悟で突っ込める株はあると思うけどね。俺が買いチャンスを狙ってるのは、売りで苦戦続きの7011三菱重工、スルスルと強い6501日立、それに今後漁夫の利を得そうな9513Jパワーかな(笑)。だからこそ、WTI原油の監視だけは続けないといけないと思ってます。