重要なのはジャクソンホール(パウエル議長講演)よりもPCE!?

重要なのはジャクソンホール(パウエル議長講演)よりもPCE!?

米国経済は急速に悪化している・・・ブルームバーグに掲載された「米で6分の1の世帯が公共料金を滞納」という記事は、今後の消費動向を予想するのに極めて重要なんじゃないかと思う。6分の1と言えば約2000万世帯に相当するけれど、ならば高騰する家賃はどうなのか?自動車ローンはどうか?等々、気がかりな点は多々あるだろう。

しかし公共料金の滞納というのは、生活に直結した必須の支払いであるわけで、反面ライフラインという観点から督促は比較的甘いから、返済の優先順位を米国民がどう考えるのかは分からない。ただFRBが公表している消費者信用残高と個人貯蓄率の推移を見れば、現時点で多くの家計が債務返済が非常に厳しい状況であることが分かる。

(米消費者信用残高)

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クレジットカードや住宅ローン、自動車ローン等の借入残高を指数化したものを毎月FRBが公表しているわけだが、最新の6月の数値が40.15であり今後も高止まりが予想されていて、これは新型コロナ禍以前の約2倍の水準となる。つまり米国民は、コロナ給付金で大いに消費意欲が刺激され、結果的に好景気を演出して大小の買い物をしまくった様子が分かる。

しかし、インフレの上昇とともに、FRBが金融引き締めに転じて急激な利上げを志向していることで、米国の消費者は厳しい状況に追い込まれつつある。

(米個人貯蓄率)

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新型コロナ給付金で急増した貯蓄率もほどなくして使い果たし、好景気とインフレを演出する結果になっただけでなく、2008年以来の5%割れの水準となったところで、現時点では正面からインフレに晒されているという状況であり、今後さらに低下することも十分に考えられる。

おまけに家賃の高止まりが続き、年末にかけてさらなる利上げに晒されるわけで、現時点で米国の個人消費は危機的状況であるとはっきり言える。にもかかわらず、米国の国内消費は予想以上に好調であると言われていて、これがFRBのソフトランディングの根拠にもなっている(らしい)。

米国民は所謂消費中毒であって、基本的に手元に余裕がなくても与信残高があれば、消費を減らさないという態度だ。これは景気が順調に拡大を続けている間は、信用創造が拡大するわけで、さらに好景気を加速してゆく。しかし、インフレが高止まりし、現在のようにインフレ率が貯蓄率よりもはるかに高い水準で推移すれば、当然景気減速の過程で個人消費は危機的な影響を受ける。

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いうまでもなく、これまでは高インフレでもなんとか消費レベルを維持できた。というか本来消費を抑えなければならない局面で、可能な限り消費ペースを落とさずに来てしまったということで、消費者信用残高の急増を招いている。

今月のメインイベントは26日のジャクソンホールでのパウエル議長講演であるとされている。しかしそれ以上の重要なのは同日発表される7月個人消費支出(PCEデフレータ)なのではないか?当然パウエル議長講演はこの数値を加味した形で行われるだろうから、PCEの数値が悪ければ、ハト的なニュアンスを持たせる可能性もある。

個人的には現時点での米国の消費動向からして、コンセンサスとなっている数値以上に悪化していると思っていて、それで初めて米国株式市場もリセッション(景気後退)を本格的に意識し始めると思うのだが・・・。