悠長に株価の底当てゲームをしている場合なのか!?

悠長に株価の底当てゲームをしている場合なのか!?

如何に多くの投資家が株高を望んでいるのか・・・今夜の欧州市場、米国市場の値動きを見れば、そのことがよく分かる。欧州市場はエネルギー問題とウクライナ問題が解決しない限り、延々と続く景気後退の中にあっても需給によって株価は反発する。また米国市場もPCEが強めに出てもなお、FRBの利上げはすでに織り込んでいるとばかりに買い方が頑張ってしまう。

「織り込む」という意味

株式市場が目先の底打ちとなったのは今年6月だったけれど、ちょうど9月末にかけて日米株式市場はその底値に接近、または突き抜けるという同程度の水準になった。株価というのは半年先、1年先の企業業績、経済状況を表すという言い方をされるけれど、それは株価が常に現実価値以上のプレミアムを乗せて形成されるからです。

つまり、6月から約3ヵ月経ったいま現在でも、6月と同等のプレミアムを株式市場は考えていると言うことになる。6月時点で想定されていたFRBの利上げの最も厳しいパターンが実行されたにも関わらず、そうしてもなお、消費や雇用が活発で、米国経済は6月時点で考えられていたのと同程度プラス成長すると見込むという意味。

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けれども同程度の株価ながら、先行きの想定は全く異なっているんだよね。つまりは6月時点よりもさらに厳しい利上げ見通しながら、予想よりも米国経済は頑張っていて、先行きの経済・企業業績の見通しに変化はないと考えている。たとえ想定が悪化したとしても十分のそれを吸収し熟すことが出来ると考える。

これが株価における「織り込む」という意味で、もちろん今のようにネガティブな材料の場合もあれば、ポジティブな場合も同じでしょう。現在の想定でこのまま来年春になっても、とりあえず今の株価は維持できると考えている結果だよね。

「現実」に動揺するのが株価変動

今夜8月のPCEデフレータが発表されたけれど、消費は予想よりも堅調だった。それを見て「高インフレでも消費が堅調なのだから、これからインフレが低下してゆけばさらに消費も増え、経済は予想よりも良好」と考える投資家もいれば「FRBの言う通り今後はもっと厳しい状況になるのは間違いない」と判断する投資家もいる。したがって今夜の株価の変動は、この両陣営の綱引きともとれる。

現時点での株価には想定された条件によって形成されているのだから、それを覆すような、または変化をもたらすような新たな条件が発表されると、株価に追加的条件が加えられることになるから、変動するのは当たり前だと思う。

けれども一方、預金金利が1%変動したから銀行預金を弄るということはまずないのと同じで、大抵の変化は実は株価を動かすことはないか、あっても極めて短時間で修正されてしまうのが常だ。なぜならば、市場に積極的に参加して株価を変動させて利鞘を取るという短期投資家の比率が小さいからだよね。

なので、目前に姿を現した現実が、将来の企業業績や経済状況を左右するほど重大なことなのかを判断して投資行動をする必要がある。

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8月PCEに対する市場の反応

8月のPCEがどのような数値であっても、FRBの年内利上げ予定に影響はないと判断するはずなので、株価は反応しないはず。ただしプラスに振れたことで、よりFRBの利上げ(金融引き締め)を支持する方向ということで、買う理由には本来ならないはず・・・。

それよりも、株式市場は別の理由を意識してるし、それが英国の金融政策の行方なのだろうな、と想像できる。英国はトラス政権が財政的な裏付けが取れないほどの大型金融緩和を発表した。それに対して英国のインフレがさらに加速してしまい、財政破綻する可能性もあるとして急激な株安と長期金利高、ポンド安に見舞われた。そこで、イングランド銀行(英国中銀)は、緊急に10月14日まで無制限に長期国債を買い入れると発表し、長期金利を上昇を抑え込んだ。

実はこれと全く同じ政策を日銀が行っていて、表面上は機能していることを英国中銀は見ているわけです。また日銀(財務省)が為替介入を断行し一時的に円安を止め、なおかつ急激な円安に対しては何度も介入すると宣言したことも、参考にしてると思う。

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英国経済は今後どうなるのかは未知数だけど、個人的には致命的な失策の可能性があると思っていて、財政緩和以上の負担を国民は(将来)負うことになると思う。

けれども米国投資家は、まさに英国のような、日銀のような政策をFRBに対して望んでいるのだと思うし、経済が変調すれば英国中銀と同様にFRBも動かなくなるのでは?と考えた投資家も多いわけで、そうした投資家は買いに回っていると思う。そしてそこに、「米国株は底打ち」という議論が出てくるわけだ。


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問題はますます深みに嵌る

FRBのインフレ対応で比較されるのが、ポール・ボルカー議長の連続1%利上げだけど、もちろんボルカー時代のFRBは金利引き締めをしただけではなくて、あらゆる金融的手段を講じていたわけだが、目立つのは強硬に大幅利上げをして強引にインフレを抑え込んだという部分。

1979年に就任したポール・ボルカー議長は1986年までにFFレートを11.2%から20%に引き上げて、ボルカーショックを引き起こしGDPはマイナス3%に落ち込んだ結果、ようやくインフレを抑制できたという伝説的な出来事。

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それを引き合いに出せば、今のFRBの政策はさほど過激とは言えないけれど、概ね同じような政策を行っている。その結果、PCEはプラスになり雇用は減らず賃金も上昇し続けている・・・。要するにインフレを抑え込めていないのが実態なのだと思う。

そして決定的に違うのは、当時(1980年代初頭)と比較して現在の米国マネタリーベースは20倍近い爆増状態だという事。GDPは約6倍になってはいるけれどね。そしてこれは米国だけでなく全世界的な状況であり、GDP比較ではさらにはるかにマネタリーベースの増加が突出しているという好ましからぬ状況にある。

そして、現時点での米国のインフレが8%台で今後もそのレベルで推移するとなると、他国はそれでは済まないと思う。だから強引な金融・財政政策に出て、自国通貨安で自滅する最悪なパターンに急激に近づいていると言うことになる。

米ドル独歩高で、英国、ドイツ、韓国、イタリア、デンマーク、アジア新興国、アフリカ新興国・・・そして日本も危ういかな。

となると・・・悠長に「底当てゲーム」なんかしてる場合ではないかも。