週末の深読み:年内の株式市場と為替(ドル円)

週末の深読み:年内の株式市場と為替(ドル円)

今回の米国企業3Q決算で、陸送(国内輸送)企業の業績にかなり陰りが見え始めていて、「サプライチェーンの混乱と人手不足がインフレを押し上げてる」という理由が剥落し始めてる。各地方連銀の製造業景況指数も悪化し始めてることも考えると、いよいよ此の先米国経済がリセッション入りすることが濃厚になってきた。そして確定的なのが金利上昇による不動産取引の急減速で、価格もいよいよ下げ始めた。

米国の失業率は依然低水準で雇用はまだまだ堅調を維持しそうだけど、年末にかけて徐々に弱含むという予想も出始めてる。恐らくFRBでは、ある程度明確に金利引き上げの効果が出始めたとするデータを把握しているのだろうと思われ、早速FEDの番記者に「11月0.750p、12月は熟考する必要」とコメントさせ、同じような意見をセントルイス連木のブラード総裁やサンフランシスコ連銀のデーリー総裁にコメントさせ、少なくとも12月のFEDの利上げは0.750pと確定していないと市場を牽制した。

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そのことで週末金曜の米国株式市場は三市場揃っての大陽線を作って終わったわけだが・・・。

恐らくFRBは、金融引き締め効果がようやく出始めたと言うことを、様々な物価状況を通じて、マーケットの状況を見て、または景気減速開始とインフレ低下の確信を得るだけの、確固たる証拠を掴んだのではないか?と思われる。そして、FRBに対して厳しい批判を繰り返してきたローレンス・サマーズ元財務長官が、そろそろ利上げペースを検討すべき、FRBはきちんとインフレ対応が出来た、とCNNのインタビューで口にした。

金融政策の効果は、半年~1年のタイムラグがあることは常識だが、これまでのFRBの利上げプロセスを考えると、ようやく経済や企業業績の腰を折るだけの効果が表れ始めたとしても全く違和感はなく、その意味では11月のほぼ確定的な0.750pの利上げは、もしかしたら決定打になるのではないか?と思う。

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もちろん、株式市場はそう予想したから、週末に大きく買われたわけだが、いまは市場のテーマがFRBの利上げという単独イシューだからそうした動きになるのだと思う。そして、株式市場が景気減速を意識するまでは、悪い景気指標や決算は、インフレに抑制的と判断してポジティブな材料視をするかもしれない。だが、当然のことながら、あくまでも景気が減速し始めて、それを株式市場がネガティブと通常の判断をせざるを得なくなるまでの、茶番であることは言うまでもない。

仮に、FRBが12月0.500pの利上げを0.250pに押さえたらどうなのか?株式市場のテーマが利上げとインフレである限り、それは歓迎させることかもしれない。しかし裏を返すとそれはFRB自身が明確にリセッション入りを宣言するのに等しいだろう。金融政策の効果はタイムラグを持って現れるならば、少なくとも来年は株式市場にとって非常に厳しい1年になることが予想される。つまり、年明けから米国市場の本格的な業績相場が始まるということだ。

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さて、それでも、株式市場にとって上昇要因はまだある。それはズバリ、ロシアーウクライナ戦争の休戦だと思う。現状、ロシアはヘルソン州からの撤収を開始した。その方法がまた極悪で、住民に退避命令を出してその流れに精製部隊を小分けにして紛れ込ませるという住民を盾にする撤収作戦。ドネツク州でも素人の動員兵を盾にして、戦力となる兵士を撤退させるという、これもまた残虐な撤収作戦を行いつつある。

これは、所謂厳しい冬に備えて、劣勢の軍を一旦引いて体制を立て直そうとしているのかもしれないが、いずれにしても前線ではウクライナ軍が優勢なのは明らかで、軍隊を何としても温存させたいロシアの苦肉の作戦であるとともに、本格的な冬の前に休戦する可能性は濃厚なのだと思う。

そうなれば株式市場はこれを好感して、大きな上昇となることは十分にあり得ることだ。

 

前の記事で、ドル円の安値は12月頃ピークを打つのではないか?と予想した根拠は、こうした事態が想定できるからです。