週末の深読み:日米株高は続くのか?

週末の深読み:日米株高は続くのか?

このところの、特にダウの急騰をさして、「米国の茶番劇」と書いているけれど、日経平均がさしたる上昇要因もなくて米国市場に連動することを考えると、そして円安が少なくとも現状水準で維持されそうなことを考えると、そうそう「茶番」とばかり言ってるわけにもいかないし、今日は再度じっくりと考えてみた。

理由のない米国株の急騰

今の、特にダウの連騰、そしてGAFAM暴落後のNASDAQの大陽線の包み線での反騰と、それらは大した理由なんかないと思うんだよね。景気減速を考えると本当に2023年には本格的なリセッションになる可能性が濃厚になってきて、いまだ好調な企業業績も本格的にかつ全面的に陰りが鮮明になるだろうということも明らか。そして多分そのことはFRBは確信を持ってるはずで、だから12月の利上げが最後になるのかも、という希望的観測がこの戻りを演出している?というよく分からない理由付けがなされてるけど、そんなことは取って付けたこじ付けでしかない。

もともとFRBってインフレを2%に戻すために金融政策をやるのであって、8%のインフレが7%になればいいというものではないだろう?インフレってのは前年同月比が問題で、8%になった翌年に6%に下がっても、前年よりもはるかに大変なことは明らかだものね。インフレは複利計算のようなものだから、普通は8%に上昇した年よりもその翌年さらに6%になった方がはるかに重大な事態だって事だよ。

だから2年で物価が14%も上昇したら、もう金利も何も追いつかなくなる。だから大口ロングは株や債券をるしかなかったし、FRBが暗に推奨するようにキャッシュにしてもぜんぜんダメだよ。とにかく、この局面でインフレが抑え込めない状態でFRBが利上げを緩めたら・・・それこそすべてがアウトなんじゃないの?

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だから、FRBは急激にインフレを抑え込まなきゃいけないわけだよ。インフレ8%の翌年にさらに2%になっても苦しいわけだから。この状況を何とかごまかすには、さらに大量の金融緩和をするか、金利をインフレ以上に引き上げるかのどちらかだよ。前者は明らかにまたしてもバブルになるし、後者は大不況に突入する。なので、その両方のコントロールをしつつ、なんとか穏便にインフレが下がるのを待つというソフトランディングっていうのが如何に難しいかってことだろうし、もっというとソフトランディング=景気後退なわけだから・・・。

そのレベルをFRBは失業率4.1%、年末4.000%って言ってたわけだが、どちらも外れ、いや大外れは免れそうにない。ということで、俺が「茶番」と書いた理由はそこにあるんだよね。今回のGAFAMの業績っていうのは、言ってみれば先行指標的なものだと思うわけで、今後は段階を踏んで他の企業の業績も悪化してくるわけで、理論的には必ずそうなる。

でも株価は、まるで「底打ち確認」と言いたそうに上昇を始めてるし、金融系の業績が好調だったダウは暴騰を始めたよね。一つには、政治忖度って側面もあることはあるだろう。8日に中間選挙があって下馬評では共和党有利ってなってるけど、あの民主党のやることだからね。そのためにウォール街は株価を上げてポーズをとってるってわけだよ。そしてもう一つは、積もりに積もったショートを焼いてるってことだろうね。そしてその流れはまだ結構続くかも。12月のFOMCまでくらいは、なんやかんやで上昇するかもしれないと読んでるんだけど。

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日本株も上昇?

日本が不況になる、とか言って日銀はYCCを止めないし、金利も引き上げないどころか、YCCの結果無制限の金融緩和を相変わらず継続中だよね。その結果、日米金利差は大きく開いたままで、円安は¥147.476で週末の取引を終えている。ここでちょっと疑問があるんだけど、財務省ー日銀は単独で為替介入を3度?やってるよね。そのたびに¥145くらいまでは戻せるけど、時間が経つと元の黙阿弥になっちゃう。だったら黒田総裁はYCCのレベルを0.500%まで上げますというだけで、途端に円安は解消されちゃうわけで、為替介入するよりもよほど効果があるんじゃ?って思うよね。

米国ではFRBがドル高要因は日本の金融緩和によるところが大きいとかFOMCで話してるし、イエレン財務長官も日本が勝手にやってること、と突き放した言い方をしてる。でもね、そんなはずないじゃん!って思うよね。日本が単独で、日本の意思で為替介入なんか絶対にするはずがないし、財務省にそんな度胸があるはずがない!

イエレン財務長官は「米国債の流動性欠如は大きな問題」と言っている。それで分ったことは、つまり米国債の流動性を確保するためにドル売りしてるんだな、ということ。FRBがせっせと金融引き締めでドル資金を吸い上げてる中で、米国債うぃを買う資金が枯れてると言いうことでドル売り円買いをやったんだと思うし、その影響で10年物国債は3%台まで金利がさがった。それって米国債が買われたってことだから、流動性は確実に上がったのだろうけどね。

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結局米国は、インフレを抑えるために金融引き締めをやる反面、債券の暴落を防ぐために政権側では金融緩和と同じようなことを、日本の当局を使ってやっている・・・。日本は日本で、YCCを止めて固定金利水準にまでYCCの上限を緩めて、なおかつゼロ金利を継続すれば、円安は抑制できてなおかつ住宅ローンは守れるわけで、どうってことはないはずだけど、黒田総裁はほとんど精神論に近い言い訳をして止めないわけだよ。

止めないならば、輸出の多い日本企業の業績は、円安差益がますます増えるんで、日経平均EPSは¥2,300とか行っちゃうんじゃないかな。とすればPER12.5で日経平均¥28,750はあるんじゃ?PER13になると\30,000になっちゃうけど。これを抑え込むのは米国や中国の景気後退ってことだけど、やっぱりそれでも、米国ダウやNASDAQの上昇に連動してゆく可能性が高いと思う。

っていうか日本株って独自の視点がないからね、米国について行くしかないんだろうけどね。まったく売り坊の俺としては商売あがったりだよ(苦笑)

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FRBの利上げはどうなる?

だから米国株はもちろん、日本株だって基本的にFRBの影響を受けて動くわけだから、重要なのはFRBが今後どう動くかなんだよね。そもそもパウエル議長の任期は2期目に突入したので2026年までかな。なので名議長として名を残すためには何としても今のインフレを退治しないといけないよね。で、結局やることはポール・ボルカーと同じように、強烈な利上げとQTで金融を引き締めるしかない。

それでも高水準のインフレを鎮めるためには、2年、3年は最低でもかかるわけで、あと3年半で達成するには、相当の引き締めをやらないと無理だと思う。けれども、少々いい決算が出たからといって囃されるダウのように、株価が底打ちして急反発ってなったら、ちょっと愉快じゃないはずだろう。

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そもそも今月に、FRBは連銀総裁やFEDウォッチャーに12月の利上げを緩めるかもという観測気球を上げさせたんだけど、その効果は見ての通り抜群だった。株式市場は12月に緩んで、その辺が利上げの天井かも、という楽観で一斉に買いに走り始めてる最中だけどね。

こんな高いインフレ水準で金融引き締めを緩めたら・・・インフレ鎮圧どころか、来年はもっと酷いことになることは分り切ってるし、まだまだ株式市場は買い意欲が旺盛で、ちょっと緩めるとリスク投資に向かうな、と感じたろうし、それってインフレも同じなんじゃないか?って思ったろうと。

なので、俺は12月も0.750Pやるか、さもなければ12月0.500P、2月0.500Pって連荘するかもと思ってる。でも12月に0.750Pの気配が遠のけば、株価は年内イケイケになっちゃうような気がするけれど。インフレが11月、12月に低下する可能性は思ったよりも低いと思う。何せ年末商戦だからね、とにかく安売りして売る必要もないわけだからね。となると12月14日のFOMC辺りかその直前のCPI発表あたりがが鬼門なのかも。

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茶番劇の裏側

とにかく米国民主党政権は、中間選挙の前に株式市場の暴落は避けたいと思ってることは確か。その圧力がFRBに観測気球を上げさせたというのが俺の読み。でも選挙が終わって共和党、民主党どちらが勝っても、FRBはマイペースでインフレ抑制に励むだろうと思う。一旦市場は8月のラリーのように楽観が増幅して上昇するものの、企業業績悪化はこれからが本番、ということを考えると、今度ばかりは天井当てゲームをしないわけには行かないかな、と思う。

11月のCPIが7%台に突入したら上昇継続だから、12月のCPIと12月14日のFOMCまでは、楽観・イケイケ継続。でもその時点でFRBのタカ派的姿勢が変わらないと、年内に下げに転じる可能性も十分にある。

以上がこの週末の深読みです。