タンカー被弾は安倍首相イラン訪問に対する抗議行動?
- 2019.06.13
- 海外情勢
情報が錯綜しているのか、確かなことは不明だが、日本の海運会社が運航するケミカルタンカーがホルムズ海峡で被弾したと国交省が発表した。
また、オマーン湾でタンカー2隻が攻撃を受け、現在も炎上中との情報もある。こちらは米第五艦隊が救援活動をしていると言う。
トランプ政権はイラン核合意を離脱
イラン核合意はイランの核濃縮施設による核兵器開発を防止するために米英仏独露中およびEUが2015年イランと締結した核抑止条約。貯蔵濃縮ウランや遠心分離機を削減する見返りとして経済制裁を一部解除するというもの。
しかしイランの核施設は仏独企業が売却したもので曖昧さが残り、合意通り条件を満たさずとしてトランプ政権は2018年、イラン核合意を離脱し、経済制裁を強化した。
パレスチナ・ガザ地区でハマスはイスラエルを無差別攻撃
イランは米国による経済制裁への報復としてパレスチナガザ地区のイスラエル居住区に対し、ハマスが約600発の無差別攻撃を行いました。多数の民間人が死傷したこの攻撃は、ハマスに対するイランの支援であったと言われています(確定的)。
米国は経済制裁強化
これに対し米国は、経済制裁をさらに強化するとともに、イラン原油の禁輸を(日本を含む)同盟国に完全履行するように求めました。またイラン原油の取引に関する金融制裁を追加、関係企業へのドル調達制限等の厳しい金融制裁を行って、イランの原油輸出を大幅に制限する措置を実行に移しました。
これによってイラン財政は極めて厳しい状況に立たされています。
軍事衝突の危機
5月12日、アラブ首長国連邦(UAE)沖で米国向け原油を搭載した4隻のタンカー4隻が攻撃されました。この攻撃は、同海域の約200隻のタンカーのなかから正確に4隻をピックアップしていることから、米国はイランの関与は確実としました。
イランは米国の主張を否定しましたが、米国は展開中の第五艦隊に加え、原子力空母エイブラハム・リンカーンを中心とする打撃部隊を派遣し、さらには1500人の増派を決定しています。
これによって、米国とイランの武力衝突の緊張が一気に高まっています。
安倍首相訪問
こうした一触即発の状況のなか、安倍総理は突如イラン訪問をぶち上げ、来日したトランプ大統領に提案し、トランプ大統領は承諾したわけです。
しかし安倍首相の調停?は、最初からほぼ望み薄という感じでした。
その理由は、イランは核合意違反疑惑やパレスチナ・ガザ地区の攻撃に関しても、当初から全面的に否定する立場です。しかし、一連の実行部隊は、イラン革命防衛隊の命令によって動く過激派組織によるもので、イランの直接関与は証明できていません。
UAE沖のタンカー攻撃も、今回のオマーン湾におけるタンカー攻撃も、恐らくは安倍首相訪問のタイミングを狙って意図的に行ったテロ行動であると思われます。
つまり、日米の親密さを国際社会にアピールしてきた安倍首相は、イランから見れば明らかにトランプ(米国)の手先でしかないわけです。その安倍首相が、トランプ大統領の意向を伝える、と言うイラン訪問は、仲裁としてはほぼ意味のないものです。
仲裁は本来「中立的立場」であるからこそ成立するわけですから。
火に油を注ぐ?
事前の調整もできていない状況で、ただ「仲裁役をやります」と言うだけでイラン訪問をしたのだとすれば、安倍首相の勇み足と言われても仕方のない結果となりつつあります。
実際に、「国際社会での日本の役割を果たす」と言うのであれば、イランと米国の仲裁であるからには、中立な立場でなくてはならないはずです。
にもかかわらず「トランプ大統領の意向は・・・」とやったら、イラン側はどう感じるでしょう。
その答えが、今回のタンカー攻撃となって現れたのでは?と思わざるを得ません。
今回のイラン訪問が、イランと米国の対立に「火に油を注ぐ結果」になりそうです。
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