日本を代表する自動車メーカー、トヨタ・日産の大きな分岐点
- 2023.01.26
- 国内情勢
ここにきて日本を代表する自動車メーカー2社が大きな分岐点を迎えようとしている。日本経済に大きな影響のある自動車産業だけに、その動向は当然のごとく無視できるものではないよね。
トヨタの社長交代というニュース。最近のトヨタはいろいろ変革期に差し掛かっているような感じで、53歳の若手というサプライズ人事に踏み切ったね。個人的には凄く難しい選択だった気がするし、企業の将来を賭けた重要な選択だったと思う。トヨタの将来はすなわち日本経済の将来とほとんど同義だと思うからね。
これからの時代、単に自動車を生産、販売するだけでは立ち行かなくて、自動車を端末にしたサービスを強化しないと、ということで、それはAPPLEの選択と非常に似てると思う。ただし自動車が難しいのは道路環境やら何やら、インフラ整備との連動が必ず必要になるところ。そこはAPPLEなどとは大きく異なる点で、自由に思い切った変革に切り込めるかが非常に大事になってくる。その意味ではレクサスを軌道に乗せたということにあまり意味はなく、佐藤恒治新社長の起用は大きな賭けだと思う。
トヨタは結局方向を決めてなくて「何でもやる、全部やる」と章男社長は言っていた。でも、ハイブリッド、プラグイン、EV、水素、そしてガソリンと同時に全部やる意味はあまりない。路線を絞らない、という選択が吉と出るか凶と出るか、今後が面白くなりそうだけどね。
一方日産は、いよいよルノーとの出資比率見直しに目途が立ってきた。けれども交換条件としてルノーの主導するEV新会社に日産、三菱自工ともに参加することが条件になっている。要するに、ルノーはEVを作る技術が大きく立ち遅れてしまっていて、そこを一気に挽回しないと会社自体の存続が危うくなってくる、というかすでに危うい。だから当面、日産株を売却またはファイナンスして資金調達することに決めたんだと思うんだ。
けれども、ただ資本関係を見直すだけでは、ルノーの将来は絶望的なので、日産との協業開発技術はもちろんのこと、日産の持つEV技術やらサプライチェーンを今後も継続して使いたい。ルノーは中国吉利集団、サウジアラムコとで、新会社を設立して内燃機関(含むハイブリッド)を製造する会社(社名ホース)とEV製造を目指す新会社(社名アンペア)に分割する。その場合、新会社ホースはルノー・日産の協業技術を継続して使う事や、新会社のアンペアでは日産・三菱が出資することで虎の子の自動運転技術や全個体電池を使いたい。
そこが両者が揉めている主要因だけど、結局技術を限定することで日産・ルノーが妥協して資本比率の対等化を実現すると思われる。ブルームバーグによると、インドに関するプロジェクトや新たなプロジェクトに取り組むことで、ルノーは日産を説き伏せた格好になったらしいけど、要はこのままでは日産の技術は、ホース、アンペアの2社に流出して、それが中国各社へと伝搬してしまうのは避けられないと思うのだが・・・。
ちなみにホース社に40%出資する中国・吉利汽車はメルセデスの大株主であったりボルボの親会社であったりするわけで、そこにサウジアラムコが20%で参加するというと、まぁまぁ、先日の習近平サウジ訪問からも推して知るべし、ホース社の経営権は中国・サウジ主導と言うことになるよね。それでもいい、と言うくらいルノーは逼迫しているということかもしれない。
と言うわけで日本のワンツーの自動車メーカーが、それこそ重大な岐路に立たされているわけで、それはある意味日本の自動車産業の将来を決めることになるかも。個人的にはルノーの出資を受け入れた時点で、こうなっても仕方なかったということ。そしていくら日産が独立経営を主張しても、資本の原理に従うしかないということだよ。そこに日産の経営陣の甘さがあった。カルロス・ゴーンを追い落としたけれど、そこで経営責任を追及し、徹底的に資本関係の見直しまで持って行くべきだった。下手な小細工を使って追い落としただけで、浅はかだったな、と思うよね。
トヨタは販売で苦戦してる。コモディティ化するEVには腰が引けてるしね。一方日産はEV路線まっしぐらだけど、ルノー、吉利、サウジアラムコという強大な足枷が付く。独立祭りも早々に切り上げて、事業重視の相場になるんじゃないかな。
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