慌ただしい週末:日銀新総裁と決算サプライズと

慌ただしい週末:日銀新総裁と決算サプライズと

注目の3Q決算とその最中の日銀新役員人事のリークで、この週末はいろいろ慌ただしい感じの漂う休日となってます。今回の決算については、決算勝負をしていることもあって、かなり久しぶりにじっくりと発表に目を通していますけど、やはり毎回ののようにサプライズがあってなかなか面白いし、日本経済の意外なあり様にも気づかされました。そして日銀人事は来週のはずが、この週末引け後にリークされました。これはマーケットを考えると無難な選択であったと思うけどね。

それで決算を見ながら感じたことを書きますけど、その前にまずは日銀人事から。

植田日銀新総裁

まずは岸田内閣はやはり予想通り雨宮副総裁の昇格を打診したということだけど、雨宮氏が固辞したと。同氏は日銀プロパーで恐らくだけど中央銀行総裁会議などで丁々発止の自信がなかったのかもしれないし、黒田日銀の後というやり辛さも感じていたのだろうと推測。世界がインフレで強力な金融引き締めを推進する中で、金融緩和路線を継続している唯一の先進国という状況がある一方、国内インフレはこれからが本番という極めて微妙な金融政策を要求されるわけで、金融政策のかじ取りは難しいに決まってる。

恐らく正解はなくて後は日銀総裁の胆力の問題なんじゃないか、と思う。FRBは景気減速でも仕方ないというスタンスで利上げやQTをやっているけれど、日銀は同じスタンスは獲れるはずがない。もしもいま、インフレに対抗して利上げをすると、恐らく日本はデフレに逆戻りする可能性が高い。また、岸田政権と財務省は増税をしたくて仕方なく、そうなって日銀が利上げを行えば、まず国内経済は立ち行かなくなる。

日銀なんて独立性があると言われてもそれは建前で、常に政府や財務省からの圧力や大手金融機関からのプレッシャーに晒されているわけで、いま利上げを全面に押し出すと岸田首相が推進する「賃上げ」のムードは盛り上がらないし、第一、中小企業の顎が出てしまう。一方、金融機関はYCCを止めてほしいし利上げして欲しい。黒田総裁がYCC上限を0.500pに引き上げたのは、大手銀や大手生損保から日本国債の運用が難しくなるというアピールだったわけで、昨年から今年1月にかけて20兆円以上の外債を売却した国内大手生損保などは、運用手段がなくてアップアップの状態だからね。喉から手が出るほどYCCを廃止して欲しいんだろう。

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もう日銀の国債買いオペも一巡しちゃって、今度は共通担保オペなんか導入したり、国債の貸し出しをしたりで金融界は一体何をしてるんだ!状態だ。財務省は2024年度の10年物金利水準を早くも1.5%前後で見積もっている。それを根拠にして増税を企んでるわけで、日銀に対する利上げ圧力は相当なものだ。なので当面、それに耐えうる人物を総裁に据えないといけないという条件のなかで、サプライズ人事として抜擢されたのが植田和男氏と言うことになる。

植田氏は過去の寄稿やインタビューのなかで、「現状の(金融緩和)政策を早急に変えることは大きな混乱を招く」と断言しているわけで、当面は黒田政策の継続になるはずだ。同時に植田氏は「政策変更(利上げ)には、確実なインフレが十分に確認されないと出来ない」とも言っている。なので、金曜大引け後のマーケットの反応は適当で参考にはならないよね。

ただ就任後、これ以上日本国債の買いオペを継続することも難しいと思うだろうから、YCCの解除くらいはする可能性があり、少しでも日本国債の流動性を向上させるだろうとは思う。個人的にはYCCの上限金利を1%くらいまで引き上げておけば、今度は国内金融機関の買いが期待出来て外資の売り浴びせを粉砕できると思うのでね。その場合の想定為替レートは¥120~¥125くらいにはなるかもしれないけれど、そこは企業努力してもらうしかない。

というわけで今後は植田氏の発言で活況のメガバンク株は上下に踊ることになるかもしれないね。

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決算にみる意外な日本経済の姿

ブログでは都度日本企業の決算が振るわないと書いてきたし、現実に今期はまだしも来期想定をまともな増収増益を思わせるものは、主力企業の決算にはほとんど見られない。そういう意味では決算に対する反応はすこぶる鈍くて、好決算、今期好業績でも株価はあまり上昇しないよね。

製造業受難の時代!?

輸出企業は総じてさえない決算が多く、好決算連発の半導体関連も6723ルネサスのサプライズがあったものの、装置関連は米国の対中輸出規制に日本が同調合意ということで懸念が払しょくできない感じ。業績は何とかなるのは分っていても、手放しで買われないという事かもしれない。

電子部品関連も軒並み不調で、悪材料出尽くし的な買われ方はしているものの、スマホがだめでEVも先行きが見えない中で、来期業績が想像し辛いんじゃないかな。EVはスマホのような台数は売れるはずがなく、恐らくは厳しい状況が続くと思う。

ただ同じ輸出でも意外に悪くなかったのが機械セクターで、世界的に設備投資は好調に推移していることがわかった。ただこのセクターは波が多いから投資し辛い面があるかも。そういう意味では、何と言っても日本経済の運命をるのは自動車で、業績は伸びてはいるものの、買える決算はあまり見当たらない。でも面白かった銘柄はいくつかある。

7912 大日本印刷
普通の決算で金曜日△13.81%もぶち上げられたのがこの銘柄で、これは完全に売り長の踏み上げ相場。これだけ焼かれてまだ売り建てが増えてるんだから、何というか・・・。時々こういうのを見るから、だから売り長での空売りは絶対にやらないって決めてるんだよね。1月25日にカチあげられてその時に手仕舞いしないと・・・。でも頑張っちゃっていたからヤラレタ。こうなると、全部持っていかれる可能性があるから。怖いねぇ・・・。

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5406 神戸製鋼所
安倍元首相がサラリーマンやったこの会社。決算発表で朝寄りから10分でS高!もちろん日本製鉄の株価が急伸中という下地があっての物だけど、理由はコンセンサスを大幅に上回ったこと。そりゃ日本製鉄が値上げを断行してくれたら漁夫の利を得るだろう。鉄鋼業界は横並びの世界だからね。それにしても間髪入れずにS高とは・・・。ただ鉄鋼業界の業績はそれほど期待できるとも思えない部分もあるので「売り銘柄」リストに入れておいた(苦笑)

7012 川崎重工
これ、三菱重工同様に防衛関連で騒がれた側面はあるけれど、実際はアジア諸国でバイクが売れに売れてることが好業績の要因だった・・・。あとモーターボートもね。そういえば7272ヤマハ発動機も好決算だったなぁと改めて思ったよ。けどその割にはホンダは振るわなかった。もっとも潜水艦じゃ儲からないんだね。

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1605 INPEX5020 ENEOS
エネ関連で3Q爆益を計上したINPEXと早くも大幅減益となったENEOS。INPEXは石油にしても天然ガスにしても採掘権を持ってるいわば販売側。だから原油価格や天然ガス価格がぶち上がればウハウハ儲かるんだけど、じゃENEOSは?と言うと高騰した原油・天然ガスを仕入れて売るという卸のような業態。この差が決算に出ちゃったんだね。けど来期は(INPEXは今期)両社ともドル円の影響次第って側面があるのでINPEXは▲30%の経常減益予想を出した。でもINPEXは為替レートを¥125で想定してるのに対してENEOSは¥130・・・。やっぱINPEXは強い。

6723 ルネサス
本決算、爆益計上で△14.69%と舞い上がったこの会社。決算勝負でまよったんだよなぁ・・・。それはいいとしてとにかくこの会社は、半導体不足の恩恵をもろに受けたというかTSMCのように先端半導体じゃなくて、自動車やIoTに十分なクラスの半導体を生産してるから。そしてそここそが完全に不足していたし、価格も上昇したので今回のお祭り決算になったんだよなぁ・・・。まぁ企業なんて最先端が儲かるとは限らないし、そういう意味では今回の決算で好業績だったのは中堅クラスの企業が多かった。それもセクタはあまり問わずにね。今回はそういうことを十分に学んだよ。

もちろん他にも面白いものはあったけれど、好業績・爆安で放置されてる銘柄が多いのにもビックリした。なので株価がぶっ飛んで目立たないとそういう銘柄はなかなか日の目を見ない。もったいないね。

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日本経済は堅調なのか!?

意外だったのは建設セクタの中堅企業の業績がかなり良かったし、とにかくいま内需系で伸びてるのはDXの煽りを受けてシステム開発やコンサル系、それに人材系、介護系だよね。まずシステム系は本当に堅調に業績を伸ばしてる企業が多いし、年々難しくなってるITコンサルを同時にやってる会社が多いし順調だ。以前コンサルの6532ベイカレントを良く弄っていたけれど、あれよ、あれよと言う間に1年半で10バガーになった!これは凄いことで、外資っぽいところも受けたのかな?なんて思ってたけどね。でも今後もコンサル系ではこういう会社が出てくると思うので、今必死に勉強中ですよ。

人材系は昔から、要するに少子化になって人材不足が顕著になってきたときからいろいろある。でも昔のように単純に人材を企業に紹介するとか、人材派遣専門とか、そういうのはもう伸びない。なぜなら働き手がいないから。一人の人が複数の人材派遣に登録しているので、登録者が伸びたという発表はもう通用しないんだよ。なので過当競争真っ最中、人材の奪い合いでまず伸びない。

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だから人材系と言っても専門職に特化したところが良いみたい。ころなで医療関係は人材がものすごく動いた。人件費も高騰してるし看護師だって介護施設で引っ張りだこ。けれど介護施設には給料が安すぎて行かない!そういう部分を解消するようなビジネスモデルを作り出したら、いいんだね。例えばいまは医師、看護師の在宅診療専門という会社もたくさん生まれてる。今年はそうした企業が上場してくるかもしれないよね。新型コロナ禍からヒントを得たモデルなんだろうけど、昔は開業医が往診していたしね。

と言うわけで特殊な部分を見なくても、今の日本は結構設備投資が多いんだよね。去年の夏ごろ、景気が悪くなるぞ、と言いながら設備投資が旺盛だったし、GDPを見ても結構な水準を維持してる。なので、その部分を考えるとある意味日本経済は堅調かもしれないと思ったり。いくつか面白い銘柄も見つけたので、明日また書きますね。今日はこの辺で。