インフレ、中東有事、ウクライナ。今マーケットは巨大な危機と背中合わせ

インフレ、中東有事、ウクライナ。今マーケットは巨大な危機と背中合わせ

昨夜発表された米国1月PCEは案の定インフレ再燃を明確に示唆するようなものだったことで、再度想定以上のFRB利上げが意識され、米国三市場は大きく下落した。米国債10年物金利も当然上昇したけれど、それ以上に2年物の短期債金利が上昇し、さらに逆イールドが深くなってしまった。同時にドル円はまたしても急変動し¥136台の円安に駆け上った。

こうなると円安を背景にに日経CFDは上昇するかと思いきや、米国市場ほどではないにしても下落模様になっている。こうしたことを総合して考えるに、米国の市場参加者は米国経済が今後間違いなくリセッション入りするだろうと考え始めたということだろう。日本株についていえば確かに想定為替レートからして差益は享受できるだろうけど、現実にリセッションになって売れなくなったら意味がないという見方。

そこまで見ているということは3月FOMCで0.500pの利上げの可能性を織り込み始めてるだろうし、今年のターミナルレートも確実に0.250pは上昇すると見ないわけには行かなくて、5.250p~5.500p辺りを想定しているのかも。でもその場合米国経済がソフトランディングできるのか?という懸念だよね。このタイミングでイエレン財務長官は好調な雇用を背景に「ソフトランディングは可能」とコメントした。

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イエレン財務長官は今、米国の財政が財務上限に到達していて、これから年金資金に手を付けようとしている中で、こうした発言をするということ自体米国経済の危機的状況を白状しているようなものだ。いま、米国債の引き受け手がいない状況で債務上限を拡大したところで、金利の急激な上昇も含めてデフォルトを誘発するようなものだから。だから1月雇用統計が絶好調であるということを根拠に米国経済は大丈夫!としないわけには行かない、所謂ポジショントークなのだと思える。

さて必死の防戦にもかかわらず、米国経済が危機的状況に急激に近づきつつある根拠を示すかのように、PCEの発表とともにコモディティ価格が大きく値を下げた。ゴールド、銀、銅、レアメタル、そして穀物などだが、中でも景気の先行指標と言われている銅価格が、つい先日(2月21日)戻り高値を伺おうかという水準まで戻してから、急落を始めたことが非常に気になる。銅はあらゆる工業製品の要の金属であるわけで、さらには生産量がこの先3年間は増産できる見込みが立たないという中で、下落に転じたことは非常に大きい。

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PCE発表と同時に当然のようにWTI原油もブレントもプラッツドバイも下落したけれど、他のコモディティとは裏腹にいち早く戻ってきた。WTIに関して言うと、米国の原油在庫が大幅に増加したという報道が昨日あって、いかにロシアが減産すると発表した後であっても下落しないのはおかしいのではないか?と感じるんだよ。ポジショントークすれば原油は中東有事を織り込み始めていて徐々に上昇するという目論見だったわけだが、少なくともPCEの結果を受けていま原油が下げない理由は自分にもよく分からない。

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中東有事に関してはイスラエルのエタニアフ首相の強硬な態度にも関わらず、どうやらサウジも米国もかなり腰が引けているらしく、支援が期待できないということで逡巡しているらしい。しかしその間にもイランはウラン濃縮を90%以上に高め核弾頭を完成させることが濃厚になりつつある。このまま行けば、結果として先進国のインフレがイランの核開発を後押ししてしまうというなんとも皮肉な結果になる可能性が高い。

その状況下でイスラエルが単独でイラン本土の核開発施設を攻撃するのか否か。すでにイスラエルはイラン本土の軍事施設に対しドローン攻撃を仕掛けたとされるが、公式にはそれを認めてはいないし、またイランも報復には出ていない。イスラエルは国際的には核保有国とみなされていて、そのことで自国のアイデンティティを守るという方針を貫いてきたけれど、イランが核開発に成功すれば核保有国同士の争いになる。となるとイランは民兵組織(ハマス、ヒズボラ等)を支援してイスラエルを攻撃してきたわけだが、俄然強気に出る可能性も否定できない。現時点でイラン国内はヒジャブ問題で政治的に大荒れの状態にある。こんな時は外敵を作ることで国内世論を外側に向けさせるという独裁国家の常套手段に出ることも十分にあり得ることだから。

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しかし中東有事になって原油価格が跳ね上がるようなことになって一番不利益をこうむるのは、インフレの始末で苦労している米国や欧州であって、いまエネ価格の急騰は世界経済にとっては命取りになることは確実だ。なのでイスラエルのイラン攻撃は絶対に支持できなだろうとは思うが、その結果イランが核保有国になるのも容認できないだろうしね。さらに原油価格の高騰が再現された場合、ロシアは経済的に立ち直ってしまう可能性も十分にあるし、その結果ウクライナ侵攻はますます泥沼化することもあり得る。

この複雑な国際事情の中で、相場を占うのは困難以外の何物でもない、というか不可能に近い。いまマーケットは、極めて巨大なリスクと背中合わせの状況だからね。楽観するなんてとんでもないことだろう?