アップルとGSがもたらす米金融業界への衝撃!

アップルとGSがもたらす米金融業界への衝撃!

米国銀行業界は、アップルがGSとタッグを組んで開始する貯蓄預金口座をウォレットに付加し、しかも何と年金利4.15%という固定金利は、米銀平均の10倍にも及ぶ。先ごろ遅ればせながら「後払い決済サービス」も導入に漕ぎつけていて、さらに貯蓄口座の残高上限は25万ドル(3360万円)となって、入金するだけで年利4.15%で運用できることになる。こうなるとアップル・ウォレットは一般国民にとっては願ってもない貯蓄口座となり、もっと言えばほぼノンリスクの運用口座にもなる。

上限まで預けると年間約140万円の利回りで運用できることになる。恐らくアップルの財務状況からして預金は全額保証されるだろうし、140万を引きだして投資に回すという選択肢が現実味を帯びてきた。こうなると時期が時期だけに破綻懸念のある中小銀行から預金を引き出してアップル・ウォレットに預けるという米国民は激増すると思うし、逆に預金流出がとまらない銀行にとっては最悪のタイミングでのサービス開始となるだろう。

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このニュースは、本当に流石米国としか言いようがない。保守的な金融業界と言えど、こうしたドラスティックな展開が起こるというのは凄い事だよ。アップルは財務基盤は万全だけど、運用能力があるのかは疑問で、だからこそゴールドマン・サックスという投資銀行の巨人と組むという万全のビジネスモデルは凄い。

ゴールドマン・サックス 本社ビル

 

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今米国では、銀行以外のマネーレンディングが盛んに行われている。銀行の貸し出し条件が急激に厳しくなって、中小企業は資金繰りに詰まってきて、それをプライベート・デット・ファンドがチャンスとみて融資を行っている。もちろんこのファンドは未上場企業に対する貸付専門だから、上場前程でない企業に貸し付けるのは無理なことではない。もちろん金利は多少高く設定されますが、需要は時間とともに増加していると言われてる・・・。

銀行が貸し渋れば渋るほど、こうした金融が増加し、ますます銀行は運用が厳しくなりつつある今、アップルの発表は中小銀行懸念に拍車を掛けるモノ以外の何物でもないからね。その上、今商業用不動産に融資している銀行は、デフォルトの多発に悩んでいて、危機的状況にある銀行も少なくないと言われてる。そんな折に大きな商業用不動産会社がデフォルトでもすれば、たちまちパニックになる・・・。

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今は米国金融危機は落ち着いたという投資家の認識ですが、それはまだまだ甘すぎるんじゃないか?5月FOMCでは最後と言われている0.250pの利上げとなりそうだけど、その後の局面で一気に再度の金融危機の表面化という局面が来る可能性は小さくないと思うけどね。

やはり・・・どうやっても金融危機第二弾は避けられないのではないかな。去年から今年にかけての金利急上昇局面では様々な問題が出ているにもかかわらず、インフレ退治の名目でFRBはタカ派姿勢を貫いてきた。しかし、いままでの金融緩和局面では負債に対する警戒感が非常に希薄になっていて、未曾有の資金が設備投資や開発投資に回り、償却フェーズや回収フェーズにきているというタイミングで、急激な利上げを敢行すれば、当然余波(弊害)は避けられない。

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そしてその余波(弊害)を金融当局がどう見ているのか?が全く伝わってこない。イエレン財務長官はただただ「金融システムは安全」と言うことを繰り返しているだけだが、それはただ「債務上限問題」による債券市場の混乱を避けたいという思惑だけ。この状況で債務上限を引き上げて、バイデン政権の財政拡大政策を続けるために大量の米国債を発行するとして、それを一体誰が引き受けるというのだろう?

そもそも、その懸念があるからこそ、財政規模の縮小を共和党は要求しているわけで、すでに去年までとは米国の金融環境は大きく変わってきている。そこに頼みの綱のオイルマネーと中国マネーが当てにできなくなってしまってイエレン財務長官は焦りに焦っている。

だが、バイデン政権はOPECプラスを中国に掌握され、その中国も台湾問題で米国と対立が激化しつつある最中。こうなってくると、米国発の金融危機はまず避けられないだろうと思う。混乱する債券市場や不安定なドル円、ドルユーロを見れば、すでにその兆候が表れていると思えるけれど・・・。