トヨタがブン投げを喰らった背景

トヨタがブン投げを喰らった背景

大引けにかけてトヨタが爆売りを喰らったことが話題になっている。確かに最後の1分間で成行も含めて1500万株(約300億円)がブン投げられたことで株価は約¥100の急落になったわけで・・・。最初はGPIFの益出しかな?とも思ったけれど、流石にこんな無茶苦茶な売り方はしないと思うし、それが出来る証券なんて日本にはないと思うよ。となると、外資系の売りと思ってます間違いないだろうね。

日本株は絶好調、世界の株式市場の中で最高のパフォーマンス、なんて浮かれてるけれど、なお一層今期利益率が低下した決算を自社株買いでドレッシングしてEPSを引き上げた日本株を海外勢が好んで買うのかなぁ?第一PBR1倍割れの銘柄が目白押しなんていう状況は裏を返すと成長性を全く認められていないということだろう?企業に成長性がなければ普通は投資の対象にはならない。

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だからこそ東証も金融庁も肝入りでPBR上昇のために改善策を要求したりしてるわけで、その結果として日本企業は軒並みに自社株買いを発表したわけで、その結果減益予想なのにEPSが上昇するという奇怪な状況が生まれた。なので、今日の引け値でもPERは14.67と言う水準にある。

こんな状況の中で、トヨタがこういう売られ方をするとなると、流石にインパクトはかなりあると思う。トヨタの決算は全く悪いという印象もなく、今期も増収増益をうたってるけれど、売り上げの伸びに利益率がまったく追いつかない状況を随分と嫌気されていた。なので、株価はほとんど戻らない状況に甘んじていたし、ここ何日かトヨタ買い、自動車買いをしてみたけれど、全然ダメだった。

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海外の投資家は正直、日本の自動車メーカーはもう終わってるな、と見てるのが明確になった今日のトヨタ売り。トヨタは半導体不足やサプライチェーンの混乱の影響を高価格化で凌いだと言われている。年々平均販売価格が上昇し、それによって売り上げの伸びを確保したし、コロナ禍でも思いのほか影響を受けずに来たのはビックリしたけれどね。けれどもその戦略にも限度があるというものだろう。

そして豊田章男氏が社長を退き代表権のある会長に就任し、後任社長にはレクサスでトヨタを支えた功績で佐藤恒治氏を抜擢し、佐藤社長はEVへ大きく舵を切ると宣言した。そもそもトヨタは章男社長が全方位戦略を打ち出して、レシプロ、EV、PHEV、水素、HVとフルラインナップで行くと宣言していた。その結果、トヨタのEV戦略は欧米の(政治的な)思惑通りに大きく後れを取るばかりか、重厚長大なレシプロ用の設備や人材、関連会社や下請け会社の存在、全世界のディーラー網など、世界のEV競争を戦うための合理化は全く進んでいないという散々な状況。

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それに加えて圧倒的なソフトウエア力の欠如は致命的と言えるほどで、この育成には10年単位の時間が必要と言われている。そして究極的には自動車におけるブランド戦略従来のようには通用しなくなるとまで言われている中で、大口ファンドが日本の自動車株を長期ロングで保有する意味が見いだせないというのが現実で、これら一連の動きはまさにトヨタ潰しと言われる所以でもある。

実際この日本市場の上昇相場に置いて、これほど自動車株が買われないというのは、過去にはなかったことだと思うし、現実には出遅れではなくて欲しくないのだろう。逆にホンダと提携してソフトウエア中心に開発を進めているソニーは極めて高く評価されている。それは少なくとも海外投資家はソニーのEV戦略を正解と評価しているからだろう。もっと言えば、EVはソニーでも作れてしまうわけだから。

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と言うことは、仮に自動車メーカーとして評価される部分は、合理的なシャシー製作力ととソフトウエア力なのだということ。モーターや電池は評価の俎上に上らない。日本の自動車産業は設備重視、技術者重視、合理化重視の従来型モデルから抜け出すことはできないだろうからね。