日経平均上昇と円安の理由を探る

日経平均上昇と円安の理由を探る

何故米国債10年物金利が上昇しているのか?それとともに円安ドル高が加速してるのか?これを分からなければ相場にならないってことだけど・・・。なんとなく理解できたような気がするので、その辺のことを書きますよ。どうしても書いて、自分でも整理しておかないと戦えないからね。週末きっちりと戦闘準備しておかないと、ザラ場で痛い目に会うから・・・。



米国経済の懸念

米国経済は全く持ち直してもいないし、相変わらずインフレの影響で景気悪化のプロセスにあるという気がするけれど、如何せん個人消費と雇用が強すぎて、景気悪化による自立発生的な事故が起きにくいのも事実。なので、FEDの利上げやQTと実体経済が綱引きをしているという状況が続くのかもしれない。なので個別に課題となっているテーマを考えてみた。

債務上限問題

イエレン財務長官は議会に対して、6月1日がXデーだと通知していたけれど、昨日の段階では6月5日がXデーという通知を行った。議会民主党と共和党の協議はいまだに妥結はしていないものの、週明けには何らかの妥結をみて早ければ今月中にも採決に持ち込み、バイデンの署名を完了すると思われる。遅れても数日だろうし、これで恒例の茶番劇は決着を見ることになる。

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米国債緊急増発・格下げ懸念

勿論、債務上限問題決着後には、当面の財政を維持するためにイエレン財務長官は緊急的かつ大量に米国債を発行しなければならない。その際入札・応札の不調を回避するために、とにかく先日のG7ではしっかりと日本に根回ししたのだと思うし、それ以前にも米国の主要企業の経営者と面談を重ねたりしていた。

なので特にメガバンクを中心に引き受けざるを得ないのだろうけど、またしても日本が大量引き受けを行うことはまず間違いない。以前ならば中東のオイルマネーやら中国へ要請したところだが、バイデン外交の失策によって極めて厳しい状況に追い込まれていることは事実。

なので、仮に応札が不調ならば、S&Pもムーディーズも米国債の格付け引き下げに言及する可能性はかなり高いと思うし、極端な金利上昇局面もあり得るかもしれない。またそうなってくると極端なドル不足になりかねず、その懸念からドル円が「ドル買い円売り」となっていると考えられる。

金利上昇懸念

現在のような金融状況で米国債が急激に発行された時、一時的ではあるかもしれないが金利が急騰する可能性がある。米国の債務上限は今年の2月に到達していて、4、5か月は取り崩しとやり繰りで予算を賄ってきたけれど、そのリペアと償還にために結構多額の国債発行となる。

格付け会社が引き下げるか否かは別にしても、米国債金利はじり高すれども下げることはまずないのではないか?という見方が主流となっていて、その部分でも円安を助長していると思われる。

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インフレ上昇懸念

さて、昨夜4月PCEが発表になったけれど、米国のインフレはこれを見る限り完全に下げ止まってしまったと言える。要因は明らかに堅調な雇用と賃金の上昇、と言うことになるけれど、ここからエネ価格が怪しくなってきている。先日サウジ・エネルギー庁の高官発言で、「原油ショートに対し警告する」というコメントがあり6月のOPEC会合ではさらなる減産の可能性があることを示した。

それに先立って米国は戦略備蓄放出分の埋め合わせのために7月から購入を開始すると発表している。にもかかわらず米国のシェールリグの稼働数は労働力不足もあって減少傾向が続いているわけで、WTI原油は大きく上昇する可能性が否定できない。住宅価格も建築許可数も回復してきており、インフレに対する悪影響が懸念される。

FED利上げ懸念

昨夜の4月PCEの発表を受けて、6月FOMCでの利上げ可能性が急激に高まった。つい先日までパウエル議長発言のなかで、利上げ一時停止を思わせる発言があり、コンセンサスの大半が金利据え置きに傾いていたのだから、一夜にして逆転したことになる。

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これを受けて米国債10年物金利は大きく上昇したものの、その上昇分を打ち消して週末の取引を終えたけれども、ドル円は一気に¥140.595と跳ね上がって取引を終えた。これは完全にショートカバーのためとみられ、売り方の敗北はほぼ決定した感がある。

日本経済の懸念

日本経済の延々と続いてきたデフレ基調は、アベノミクスによって何とか中立付近にまで戻すことに成功した。黒田総裁就任と同時に行われた未曾有の金融緩和は、足掛け10年間続いたわけだが、これだけの無茶な金融緩和をしてようやくデフレ基調が収まったというのだから、いかにそれまでの金融政策が無策であったかが分かる。

極端な人口の逆ピラミッドや高齢化社会維持のための高コスト等々、経済成長できない理由はいくらでも上げることが出来たわけだが、いまインフレ転換出来るとするならば、それらは皆誤った見方であることが分かる。

ここまでデフレ脱却が伸びてしまった原因は、明らかに可処分所得の減少が原因であって、そうした政策を主導してきた財務省の存在は、財政再建の名の下に増税を推進してゆく姿勢を修正しない限り、日本経済の懸念であり続けると思う。

インフレ懸念

さて日本経済は、今年に入りインフレ転換が顕著になった。そのきっかけは円安であることは明白で、原材料を含む輸入物価が急騰したことで、値上げが相次ぎ、嫌でも物価が上昇した。一方輸出企業は円安基調を背景に好業績をあげて主要企業は賃上げ、上場主力企業では増配と自社株買に拍車がかかった。資源高の影響で電気・ガス等公共負担も増え、2022年後半方はインフレ基調となりその傾向はことにし入り鮮明化した。

しかし平均的な可処分所得の減少傾向が止まらない中での物価上昇であって、これか国内投資を活発化するには至っていないという意味では、このまま行けば「悪いインフレ」「インフレの悪循環」となる恐れが多分にある。

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日銀の緩和政策継続の誤り

いずれにしても日本経済は、円安基調が止まらない限りインフレ傾向はジワジワと強まることは明白で、日銀は従来の金融緩和路線を維持するのが、日に日に困難になりつつある。植田新総裁は、物価上昇が安定的に2%を維持できる状況になるまでは、現状の金融政策の継続を再三にわたって発言しているわけだが、大手内需企業は値上げにより為替差損を埋めてなお好決算となるところも多く、基調としてインフレが継続的に上昇するのはほぼ間違いない状況で、注意すべきリスクはデフレではなくスタフレであることを意識すべきだ。

従って金利水準を一段高めることで、インフレ対応をすべきなのであって、これは海外投資家から見れば当然の経済政策変更なのだが、日銀の姿勢は頑なだ。また海外の景気動向次第では、日本の貿易赤字に歯止めがかからないことも懸念されるところで、その結果、円に対する見方が変わりつつあることも事実だ。

日米金利差の拡大、金融政策の相違、貿易収支の悪化等々の観点から円安基調となるのは、明らかと言える。

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円安は止まらない?

米国がFEDの利上げ停止、年内利下げを想定してのポジション、つまり5月0.250p利上げ以降の株式及び為替のポジションが、変更を余儀なくされつつある。特にドル円は、米国の利上げ停止、早期利下げを想定し拡大していたポジションが一気にショートカバーされ、ドル円は¥132から¥8以上円安に傾いた。

もちろん需給だけの問題ではなくて、米国金融政策や日本のそれを加味しての円安であって、少なくともFEDは年内利下げを想定しておらず、日銀も政策変更(利上げ)を当面継続という姿勢を変えない以上、円安基調は今後も継続する可能性が否定できないし、場合によっては昨年安値の¥150をブレイクすることもあり得ると見るべき。

2022年、財務省は¥142、¥150と2度の円買い介入を行ったが、昨年と今年では国内の経済状況は変化していて、必ずしもその水準で為替介入してくるか、と言えば、現在までに「悪い円安」議論が全く高まっていないわけで、介入の理由がないのでは?と思う。円安によって大幅に増収になったことが分かった以上、敢えて介入の必要がないのではないか?

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株式市場は暴落するのか?

米国市場はインフレが低下しない以上、少なくとも利下げを出来る状態には程遠く、現在の金利水準を消化できるのであれば、調整局面はあっても暴落する意味合いはさほどないと言える。しかしFEDの利上げ姿勢が今後も継続するようなインフレの展開になれば、米国全体のファイナンスを維持できなくなることも十分にあり得るわけで、6月以降のFEDの政策によっては、金融危機の再燃は十分にあり得る。

一方日本市場は、このまま円安基調が続くのであれば、今期企業業績は少なくとも2Qまでは上方修正される可能性が高いし、それが日経平均EPSを押し上げることにもなる。今のドル円水準は日経平均¥31,000でもPERが実質的に13倍台になることも十分にあり得る話だろう。

ただし、日経平均の上昇が急である場合は必ず急落場面は発生する。がしかし、それが日経平均の基調を変える下落である可能性は現状を加味すれば、それほど高くはないと思う。

いま国内個人投資家はまだ買いには回っていないし、GPIFもかれこれ7ヵ月間連続で益出し売りをしているわけで、大量害しているのは海外勢という図式。これが個人、機関投資家が国内株に対し買いに回ったときから、株価は急騰を開始するのではないか?けれども同時にそのタイミングが、海外勢の益出しのポイントになるはずで、深めの調整局面は必ず来ると思われる。

個人的にはそのタイミングは6月8日のMSQ、または7月なのではないか?と思っているのだが・・・。