ムーディーズの格下げショック!日米株式市場は正念場か!?

ムーディーズの格下げショック!日米株式市場は正念場か!?

ムーディーズの金融機関格下げが思い切り波紋を呼んでいる米国市場。先日のフィッチ・レーティングスの米国(債)格下げも広範囲に金利に影響する事態になったけれど、シェアが少ないためにある意味影響は限定的だったと言えなくもないが、国債よりも社債市場が大きく影響を受けたのは間違いない。

米国で社債を起債するためには、基本的にS&P、ムーディーズ、フィッチの各格付け機関のうち2社の格付けを獲得する必要がある。そして現時点では、S&P40%、ムーディーズ40%、フィッチ15%のシェアであるから影響を受けるのは理論的にはS&P+フィッチ、またはムーディーズ+フィッチの格付けと言えるけれど、今回は米国債そのものを格下げたわけで、他のすべての債券、ローン等は準じた動きをするはずだ(債券やローンはソブリン債金利以下は有り得ない)。

ところが今回ムーディーズは、銀行全体の格付け見直し、または格下げに踏み切った。これは基本的には個別企業をまとめて見直すという事であり、これで銀行の信用格付けはフィッチと合わせるとほとんどすべての信用格付けが実質格下げになったと考えるべきだ。

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3月から4月にかけて、シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行など4行が実質破綻して以来、米地銀の預金量は減り続け、FRBからの借り入れでかろうじて息をつないでいると言った状況で、貸出基準の厳格化などにより、ビジネス規模は極端に縮小し続けている。米国では経営体質が脆弱な地銀から大手銀行へ、そしてMMFへと預金流出が今も続いている。

しかし、銀行の経営状況が底打ちし、FRBからの借り入れが底打ちする兆候が見えない限り、日に日に地銀の信用状況は悪化し続けていると言える。その上ムーディーズは、商業用不動産に対する貸出が非常に高リスクであることをあげ、なおかつ銀行の自己資本比率に反映されていない含み損を問題にしている。実際GS(ゴールドマンサックス)と言った投資銀行でさえ、リテール部門の採算悪化や不動産向け投資の毀損により大きく業績を下げているわけで、こうした問題は商業銀行とて例外ではないはずだ。

そうした状況にあって、最大行であるJPモルガンやCITIと言った大手商業銀行は、「リセッションは来ない可能性が大きい」とのアナリストの意見を発表している。しかし今の米銀にとって問題なのはFRBの高金利政策が長期間続くことであり、手持ちの米国債価格が金利上昇で毀損することであり、FRBからの融資に対する担保が枯渇することだ。

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3月のシリコンバレー銀行破綻劇からいままで、イエレン財務長官やFRB理事達は、米国の金融システムは堅牢であると言い続けてきた。しかし堅牢なのは約10行に満たない大手銀だけであり、最大手のフレディ・マックやファニーメイと言った住宅専門銀行でさえ、個人ローンのデフォルトが増加しているという現実を見ないふりをしているし、約20%に跳ね上がった個人カードローン金利などは歯牙にもかけていない。

そうした金融状況の実態について、改めてムーディーズの格付け見直し、格下げが問題提起をしたと言えるし、個人ファイナンスの劣化状況、学資ローンの返済開始、失業率の増加等々3Q以降の米国経済は正念場を迎えることになる。そして何をどう考えようと「米国経済は堅調なのでリセッションには陥らない」という楽観は肯定できるものではないと思う。

フィッチが米国債を格下げし、ムーディーズが米国銀行の格付けを見直し、格下げを行ったという状況は、現時点での信用状況の身を反映するのではなく、将来の危惧を加味したものであり、それをこの時期に行ったという事実を近い将来真剣に受け止めねばならなくなる。

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そして状況は異なるが、日本経済もまた正念場に差し掛かっていることは間違いない。厚生労働省は発表した毎月勤労統計によれば6月の実質賃金は前年比1.6%低下し、15ヵ月連続で減少中であるとした。名目賃金は前年比2.3%増加したものの、物価上昇にかき消されてしまった格好ということだ。この状況で岸田政権は増税しか頭にないというお粗末さなのだ。

日本経済は中国経済の実質破綻というお荷物を抱え、なお米国経済の変調という正念場を迎えている。そのいい例が早くから業績不振に見舞われている化学セクターの凋落だ。大口顧客が中国だったわけだが、その中国はもはや正常な経済活動を行ってはいないことがよく分かる。また中国でのEV販売量は極端に落ち込み、VW等欧州系メーカーは撤退を発表している。そうした傾向は中国販売が約30%落ち込んだ日産の業績を見ても如実だろう。

またトヨタやメガバンク、商社等の好決算にもかかわらず8日の日経平均予想EPSは¥2,139まで落ち込んでいる。円安が進んでいてこの状況であることを加味すれば、世界経済の落ち込みが端的に表れているのではないか?となれば、日本経済は好調に推移し、日本株は独歩高するという楽観は通用するものではないと思う。まして現政権の政策を見れば(そもそも政策立案を担っていた木原官房副長官がレームダック状態では)、秋の補正予算さえ視野には入っていないだろう。

今夜を過ぎて明日以降米国市場が今回の格下げ劇をどう捉えるのかが焦点であり、10日の7月CPIが低下しないということになると、いよいよ株式相場は暴落モードに入るかもしれない。日米株式市場はいよいよ8月の正念場を迎える。