突然だけど、米国はリセッションに突入した感じがする・・・

突然だけど、米国はリセッションに突入した感じがする・・・

マーケット的にある重大な懸念が生じる案件がクローズアップされて相場が急落することは、いつでも、そしていくらでもあり得ることだと思うし、実際にそうだった。

例えばサブプライムローン債権が、通常債券に組み入れられて「確率的にAAAの格付けを毀損しないと判断されたまま売り出された高利回り証券」として人気化していたところに「(住宅ローン利用者の)同時多発的デフォルト」という金融工学的に限りなく低い確率とされた事態がいとも簡単に発生してしまい、一気に流動性を失うという危機に直面したのがリーマンショック(世界金融ショック)だった。

しかるにこれさえも、所謂サブプライム債券の懸念という単一イシューが引き起こした金融パニックだったわけで、金融機関が如何に出鱈目に資金運用して、暴利をむさぼっていたかが明るみに出ると同時に、すべてが高レバレッジを利かせた拝金取引であったことが、元本毀損を引き起こしたということで、つまりは金融機関の問題で発生した金融パニックだったわけだよ。

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その結果一気に短時間に世界中が不況に陥ったけれど、それは通常の経済活動に対する問題ではなかったんだよね。金融機関が通常の業務運営が出来なくなったことで波及した不況だったわけで、すべては(本当に腹立たしいことだけど)銀行や保険会社の運用の失敗だったわけです。

勿論背景には景気の過熱感があって、もうそろそろ景気の後退局面を意識されてもおかしくないというタイミングで米国の住宅金融大手の破綻危機やベアスターンズという米国大手証券が破綻してもなお、半年もの間マーケットは通常運転していた。もっと言えばサブプライムローンのデフォルトが急増してから1年以上はどこ吹く風だったわけだ。

けれどその理由は十分に理解できる。つまり金融機関以外の企業は、通常の経済活動は、つつがなく行われていたからだ。

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当時それが分かっていたから米国財政当局やFRBは所謂日本方式、つまり金融機関の不良債権処理のために財政や金融を拡大し「毒を持って毒を制す」と言うやり方を採用したわけだ。小泉政権で民間時登用された竹中平蔵は、金融機関の不良債権問題の解決にバーナンキ方式を指示され、実験台にされたわけだが、これが上手く行ってしまったことを、米国は思い出したんだ。

そこからの米国はただひたすらに金融をふかすことで景気を持ち上げてきた。失われた利益は新たな信用創造(金融緩和)で回復しうることをバーナンキ議長は(日本の実験で)十分に分っていたんだよ。なのでそれ以降、今に至るまで金融機関に対する規制は強化されてきたけれど、金融緩和規模を拡大すれば全く問題なかったわけだ。

それと同じことを新型コロナショックの時もためらわず実践して短期間のうちに経済を持ち上げることに成功した。けれどもその代償は未曾有の金融緩和(マネタリーベース拡大)という大きな付けを残したんだよね。

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そこで流石に遣り過ぎてインフレの兆候が見え始めても、なぜか(根拠もなく)イエレン財務長官やパウエル議長もインフレは一過性と問題にしなかった。理由は多分コロナ禍で低下した労働参加率が戻ると踏んでいたから。ところがバイデンのばら撒きによって労働参加率は低下したままの状態で今度はウクライナ侵攻が始まってしまい、エネ価格が暴騰を始めてインフレは決定になってしまった。そこでFRBは粟を食って政策金利を乱暴なまでに引き上げてインフレを抑え込もうとしてきた。

なぜ、こんなことを書くかと言えば、今回はリーマンショックのような決定的な原因の下に株価が下げるような局面ではないということが言いたいのだ。

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つまり、いままで市場が変調をきたす兆候が現れたらすぐに金融緩和(QE)で火消を繰り返してきたFRB。そしてポピュリズム化がはなはだしい政権による財政規模の拡大とばら撒き政策。そうやってまるで仕手株相場のように短期間でマネタリーベースを、しかも超低金利で拡大し続けてきた現状が、5%の政策金利、10%貸付金利、20%のカード金利に耐えられなくなる、という極めて単純だけど、決定的な事態であるということなんだ。

本当に何度も、何度も、書いてきたけれど、通常企業が5%の純利益を叩き出すのはかなり難しいこと。恐らく中小企業では一握りだと思う。そして10%のローン金利に耐えられる個人もいないということ。まして20%のカードキャッシング金利は狂気の沙汰だ。

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けれどもいまだ、景気指標にリセッションの兆しはないといって、ソフトランディングしたといって、株価が上昇を続けてきたというぬるま湯っぷり。本当にそうなるなら、今まで以上に当局が財政をふかして、FRBが金融機関の大穴を埋め捲って、限りなくジャブジャブを続けるしかない。

実際、中国はそれをしてきたんだよ。とにかく管理相場制をいいことに人民元を乱発しまくって、経済成長を見せかけてきた。けれども遂にその限界を迎えてしまった。もう、どう考えてもこれ以上は無理と言うレベルに達した。今まで以上に拡大できる市場もない。一帯一路とかBRICSとかアフリカとか南米とか、世界中で市場拡大しようとしたけれど全部失敗で、断末魔を迎えつつある。

欧米も温室効果ガス排出権から始まって、再生可能エネやEVというネタを次々に繰り出したけれど、とにかくジャブジャブ規模が大きすぎてそんな「小ネタ」では支えきれないことが分かってきてしまった。頼みの綱だった中国経済がパンクしてしまった今、何処をどう考えても今のマネタリーベースを支えられるだけの材料は見当たらない。

そこにOPECプラスやBRICSプラスという経済圏が誕生してしまって、エネ価格と市場を押さえられてしまった・・・。

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普通に考えてこれは無理だよ。今回の相場が下落を始めた、というのは何か「莫大な新ネタ」が出てこない限り、支えられない。市場は生成AIに期待してるみたいだけど、俺には「小ネタ」に見える。

だから今回は今までと本質的に異なった下落になると思うんだ。これから個人消費も雇用も真綿で首を絞めるような悪化が続くと思う。そしてそれに伴って企業業績も悪化する中で原油価格だけが高止まりするという、考えただけでも恐ろしい状況が来ると思うんだ。

中国をみていて分かるように、かつての日本がそうであったように、こういう狂気じみた宴のあとは、デフレになってしまうんじゃないかと思う。来年はFRBは早い時期に利下げせざるを得なくなるかも。でもそうなったら、その時はもう完全にリセッション只中、ということだよね。

いままで、こういうことは、恐らく経験がない。もしかしたら日本のように10年、20年かかるかも。

日本は運悪く明日は権利取り日、そして28日は落ち日とくる。最悪だろ!