11月相場スタート:その前に地合いを整理してみた

11月相場スタート:その前に地合いを整理してみた

さて大荒れだった10月相場が終わり、今日から11月相場に突入です。日本はこれから本格的な決算相場に突入するけれど、2Qの数字をどうこうしても始まらないというか、問題は期末までの世界経済の変化なんだろうな、と思って観てますよ。結構この時期で通期の上方修正も出てるみたいだけどね、2Qまでと3Q以降では状況が大分違うということを、考えるべきなんだけどね。

と言うわけで、11月相場に何が起こりそうなのか、ちょっと考えてみました。11月、特に今年の11月は米国経済のターンイングポイントになると思うので。まずは地合いを整理しておく意味でね。

機能不全の日本銀行

植田総裁就任で日銀はボロボロになった。はっきり言って植田総裁は日銀審議委員だった時代(1998年当時)から相当のタイムラグがあって、その間世界の金融状況は激変しているにもかかわらず、少々勉強が足りなかったのではないかな。その間、終始財務省寄り、政府寄りの仕事だけをしているわけで、金融政策の現場からは離れていた。というか最初から現場経験はほとんどないに等しい学者さんなのだから、今の金融情勢を理論で動かそうと思っても無理がある。

岸田首相以下政府人事、官僚人事、そして日銀人事も含めて、どう考えても今の政治家が決めた人事はほとんどガラクタに近い。特に黒田総裁の後任人事は、慎重にすべきだったところ、いきなり閑職同然の植田氏を担ぎ出してきたのは、財務省。岸田は財務相の言う事には逆らえないので、どんどんおかしな方向へ進んでしまう。

と言うわけで、7月に続いてまたしても日銀はYCCの変更を余儀なくされた。これは平たく言えば、国内のインフレ云々と言うよりも、米国債の大量発行がもたらす金利上昇を全く読めてなかったという事で、これって国際金融マンとしては失格もいいところだろう。この半年以上、米国をまともにウォッチしていれば、この状況がどういうものなのか想像がつくだろうし、まして今後のことももっと配慮すべきだと思うんだが。

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僅かにYCC上限を1.000pオーバーも許容するという今回のYCC変更は、今頃あたふたしている中銀という印象を与えて、完全に外資から馬鹿にされた感じがする。ピークでホバリング(揉みあい)を続けていたドル買ポジションが下手をするといよいよ上放れるかもしれない。ドル円¥151.700なんていうのは、その兆候アリと見なければならない。そして米国政府は今後大量の米国債を起債しないといけないわけで、しかも米国景気の悪化は避けられないとなれば、どんなことが起こるのかはある程度計算できるはず。

学者は遅行データを頼りに政策決定しがちだけど、今の金融政策はそれではミスマッチになる。FRBでさえインフレ急増時には失敗しているくらいなので、(米国の)後追いの状況の日本では、同じ金融政策でも楽なはずなのだが・・・。

と言うわけで、もうそろそろ為替介入が必要なレベル感が出てきた。明日のFOMCで金利据え置きとなれば、米国債10年物金利は上げ止まるという予想は当てにならない。むしろ米国債務懸念で加速する可能性もある。なので今回の日銀のYCC変更が出れ程の効果があるのかは疑問だし、効果が分からない政策をこの局面で打ってくるというのも、日銀が慌てている証拠だろう。

これ以上の円安は、国内物価高が止まらない。YCC変更でも効果はほとんどないだろうし、むしろ景気が腰折れる。とにかく財務省が出鱈目(増税)ばかりやってるから、金融政策が機能しないんだよ。もう日本の金融政策は「為替介入」しかなくなったように見えるけどね。とにかくドル買いポジを崩すしかないのよ。

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FOMCは利上げ終了

明日FOMCがあるけれど、大方の予想通り利上げはナシだと思うし、もはや出る状態ではないということを一番わかっているのがFRBだからね。その意味は、これ以上銀行に資金投入が出来ないからです。春に地銀破綻が相次いでからますます地銀の財務内容は劣化の一途。所謂米国債の価格下落による資本劣化をFRBは貸出で埋めてきた。

一方でQTと利上げを実施して金融を引き締めつつ、他方では湯水のごとく地銀に資金投入をしてきて、マネタリーベースを維持するような異形の金融政策を続けてるわけだけど、来春からはいよいよ地銀の返済が始まるわけで、それまでに何としても米国債金利を抑え込みたいという苦しい事情があるんです。

しかし、利上げを行うと、ますます地銀の財務は悪化するし、商業用不動産関連が吹っ飛ぶのは目に見えているし、唯一米国債を支えている個人消費もアウトになりかねない(というかすでにアウト)。そこが市場が想定していた来年のFRB利下げの根拠なんだけど、いまのままではインフレは抑え込むことが出来ないという矛盾があるんだよね。

なので、この状況はこれ以上の金融政策でどうこう出来るレベルを超えてしまっているという何とも厳しい状況が目前にあるんだけど、にもかかわらずバイデン政権は大量の国債発行をせざるを得ない状況に陥っているという・・・。今回米国財務省の起債は約15兆円で、これはイスラエル支援で一瞬に吹っ飛ぶ規模。ウクライナはもうやりたくないという感じ。

下院では11月17日までの暫定予算を通してそれ以降も本予算は組まないという大変な状況に陥りつつあって、これが来年の大統領選挙を追い込んでるんだよね。なので、正直パウエル議長も手に負えないという感じじゃないかな。

景気悪化を織り込むFRB

FRB理事や投票権を持つ各連銀総裁の中には、金利水準はこれでいいのではないか?という発言が目立つけれど、パウエル議長は常に利上げ余地を残した物言いをする。けれども恐らくFRBの総意としては金利据え置きでも消費は減速する、ということで一致していると思う。

インフレを抑え込める唯一の方法は、消費の減速、雇用の悪化しかない。何としても住宅価格を抑え込める状況に持って行かないといまのインフレ鎮静化は無理です。それも明日利上げ出来ない根拠の一つで、恐らく年内の地上げもないと予想します。

その一番大きな理由は、11月のクリスマス商戦は必ず不発になって、ここを外す企業が続出すると思うから。米国の消費の4割が集中するクリスマス商戦をしくじるということは、必ず物価が下がることを意味するしね。なにせここでキャッシュを確保できなければ、もう借りる当てがないから。銀行の貸出基準の高止まりから、小売業にキャッシュは供給されそうにない。

もちろんこの時期、雇用は増加してしまうけれど、年が明ければすぐにレイオフされるから気にしない。なので強靭と言われる米国の個人消費もついにこの11月を起点に悪化の一途へ向かうと思うのでね。

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鍵を握る原油価格

イスラエルとハマスの紛争は、イスラエルの国内的にはネタニアフ退陣論にまで発展しているものの、ネタニアフは辞任を否定し、ますます戦闘を拡大している。ガザ地区北部は恐らく跡形もないほど破壊しつくされるだろうし、その結果ハマスの半数が殺害されると見る。

しかし、この状況をハマスの支援国がどう見るか?だろうと思う。ハマスの最大の支援国はイランであり、最近ではカタールであるという説が有力だけど、そのイランはハマス以上にレバノンのヒズボラを支援しているわけで、もしもこの戦いが民族対立に根差したものであるなら、少なくともヒズボラが動いてもいいはずだと見ていた。

結局、ヒズボラはイスラエル北部の国境付近から牽制するような攻撃しかしていないし、仮にガザのハマスが全滅するようなことになればヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治は、失われる可能性があるとと思う。イスラエルはここに入植と称して半数以上の地域の自治を治安を奪っている。なので、ガザの次はパレスチナ自治区を一掃しようとするだろう。

問題は、そうした流れを周辺国がどうみるか?にかかってる。そしてイランが次々にシーア派の拠点を失うことを指を咥えて見ているのか?ということだ。イランが動く可能性は5分5分なんじゃないかと思う。

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けれども、個人的には結局ハマスを見限るんじゃないか、と。今の時代、戦争よりも「カネ」なんだとみんな思うようになっている。少なくともイスラエル経済は今回のガザ侵攻で相当に疲弊するわけで、パレスチナ自治区に手を出さない限りは、耳目を塞ぐと思うんだよね。

一方米軍は、この機会にシリアまで何とかしようと思ってる。イスラエル軍がシリア国内のイラン革命防衛隊の施設を空爆し始めてるけど、ロシアが動けないので、チャンスと考える。

要はイランが動かなければ原油供給は問題なく継続するのだろうけど、その場合ヘッジファンドが狙っているように原油価格は$70台前半くらいに下落する可能性も相当にある。まだ見極めることが出来ないのでポジションを解いていないけれど、イランにイスラエルと戦争する気力はないだろうと・・・。最近原油販売に復帰して、ようやく「カネ」を手にすることが出来たので、その状況を手放さないだろうなぁ・・・と。

結局11月相場は?

11月相場は年高に向かいたい投資家は買う向かうだろう。けれども例年通りの投資傾向になれば良し、そうならない場合には、相当の痛手を被ることは覚悟しないといけない相場。特にロングでの読み違いは年明けを考えると致命的かもしれない。

加えて来年からは新NISAに移行ということで個人投資家も買いに回る。ここで押し目買い、逆張りをすれば、それはかなり危険な投資行動ではないか、と思ってる。大幅高でスタートする日本市場、油断すると取り返すのは容易じゃない気がする。