アナリストの楽観か!?日本株の独歩高を主張する根拠を考える。

アナリストの楽観か!?日本株の独歩高を主張する根拠を考える。

気が付くと日本株を取り巻く状況は、とんでもないことになりつつある。このブログは「株・修羅の道」から来月で丸9年になるけれど、今までの中でもっとも地合いが悪いのではないか?と感じるほど。相当危険な状況だと思う。なぜなら、日本市場は明確な理由もなく急騰を続けた高値圏にあるからだけど、それに加えて外部要因の急激な悪化に歯止めがかからなくなってきているから。

怖いのは、この状態で昨日5兆円越えの大商いを演じ、目先の天井を付け、バイング・クライマックス的な動きになったという需給のなかでの外部要因の悪化ということ。一度はショーター撤退宣言をしてみたものの、この外部要因の悪化はとても看過できるものじゃないし。

今夜は12月米国小売売上高がサプライズとなって、米国金利上昇、ドル円は一気に¥148台にまで円安が進むという波乱の只中に居るけれど、これが返って仇になるんじゃないか?と感じるんだよね。流石に米国市場は小売売上高を冷静に受け止め始めてる・・・。

米国経済は壊れたか?

異常なまでの米国国民の楽観主義は、12月の消費に現れた。個人のファイナンスはほぼ過去最悪の水準であり、ローンの延滞率もとんでもない上昇を続けているにもかかわらず、手元にキャッシュが無いとなると、最近流行の「バイナウ・ペイレイター(後払い)」を使ってまでも、消費をやめないわけだ。

これで、消費が活況なので米国経済は強いと投資家は楽観しているけれど、消費が止まらなければインフレ低下への懸念も増大し、もとより市場が織り込んでいる2024年に7回の利下げなどは夢物語と化してしまう。

がしかし、米国の消費はもはや限界を超えた危険水準にあるのは明らかで、ハイテク大手やメガバンクでは軒並みリストラ計画を発表している。特にメガバンクは、完全に近い将来のリセッションを織り込み始めていると言える。

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米国経済は、完全に借金を回転することによって信用創造により成立するけれど、すでに企業のそれは完全に止まっている。だが、個人はいまだに従来同様の経済行動しかとれないでいる。個人は大きな勘違いをしているのだ。いざとなったらバイデン政権がばら撒きをするだろうとか、自給が上昇しているから何とかなる、という日本人にはあり得ない感覚が、米国経済を壊滅させることになりかねない。いや、この春先の米国株は悲惨なことになっているということが、今夜の小売売上高で見えた気がする。

今頃、FRBは頭を抱えているだろう。この局面は利上げ局面よりもはるかに難しい選択を迫られている。と言うか恐らくFRBの金融政策でコントロールできるのは株価や債券金利だけで、ここまで来てしまった経済そのものを制御することは恐らく不可能だと思う。

米国経済は個人(消費者)の借金でつぶれる可能性が濃厚だ。したがってもしかしたら市場が織り込む利下げが正しいのかもしれないが、その時には確実にハードランディングだろう。

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中国経済の泥沼!

中国経済は手の打ちようがないほどの悪化がいよいよ本番を迎えつつある。中国に関するニュースは、不動産が売れるとか売れないとかくらいのもので、シャドーバンク大手の中植集団は表向きには約20兆円の負債を抱えて倒産したということになっているけれど、実債務は誰にも分かっていない。つまりこの部分は中国の地方政府が深く関与しているからだ。

大手不動産ディベが相次いで、実質破綻に追い込まれている中国では、債務総額がどれほどの規模になっていて、どれだけの人民に影響を与えているのかが、実際のところ分からないのが問題で、一説には数百兆円以上と推定されている。

なので、中銀が金融緩和をして資金供給をすると言ったレベルでは焼け石に水。かろうじて中国経済が生きているのは、管理相場制で人民元のドルレート、ユーロレートが暴落を起こさないから。しかし株式市場はそのことを看過しているわけではなく、日本株の今回の急上昇の原動力はキャピタルフライトした中国への投資マネー再投資が要因である。

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勘違いできないのは、日本市場が、中国よりもはるかにマシだ、という比較論で日本に投資されたということ。日本経済が、日本企業の先行きが安泰であるという理由ではなくて、一見中国経済の影響が限定的な日本市場を選んだに過ぎない。

今日も中国市場からは大量の資金が引揚げられた。日本市場の急落も、中国上海や香港ハンセンが寄り付きで急落したのがトリガーだったらしいけど、リスクマネーをリスク市場で再投資するという選択には限界があるだろう。中国株式市場はすでに抜け殻となった。

欧州もリセッション入り?

欧州の中国依存度は、日本とは比較にならないほど。特にけん引役と目されるドイツ経済は、これから本格的な影響を市場が織り込むことになると思う。EUもインフレ低下と利下げを巡って株式市場はこれを好感し、値を飛ばしてきた。けれども米国同様に実体経済は厳しい状況が続いている。

そしてウクライナへの財政負担が急増し、さらにはスエズ運河閉鎖の影響も徐々に出始めている。中国からの輸入はコンテナコストの急騰により、物価に悪影響を及ぼす。そのために欧州中銀の幹部からは利下げを急がないという発言も出始めた。

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そもそも、EU経済をけん引しているのはドイツであり、ドイツ経済が怪しくなっている今、南欧加盟国や東欧加盟国は相当に厳しい状況に追いこまれている。ドイツは中国はもとより、EU域内に輸出することで経済を維持しているわけだが、生活必需品や農産物などを中国から輸入していることが非常に問題視されているわけだが、いよいよ歪んだEU経済にも本格的な危機が訪れるだろう。

日本株独歩高の夢

結論から言えば、中国が悪くて米国や欧州が良いということはまずあり得ない。これがグローバル化を推進してきた末路であって、膨大な投資資金が世界中を右往左往し始めた。中国市場の代わりに、何処に投資するのか?が一番の問題で、2023年は他国と比較して出遅れ・割安の日本市場に大量の資金が投資された結果、日経平均は大きく上昇した。

従って東証が低PBR改善を推進したとか、新NISAの買いが入っているとか、日本企業の業績期待や円安という様々な要因によって日本市場は今後、独歩高になる、というのは、上昇要因をこじつけたアナリストの言ではある。

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けれども、それが今後も延々と続いて、日本株世界の中で独歩高を演じ続けることが出来るのか?というと、株式市場と言うのは早々楽観出来たものじゃないと思う。

その昔、バブルになって日経平均が¥40,000手前まで、PBRが40とかという狂乱相場を演じたときには、日本市場の海外投資家比率は僅かなものだった。けれども今は、ザラ場のプレーヤーの7割が海外製と言う状況であって、バブル時のような株価を裏付ける不動産の値上がりとかいう資産効果はない。

あるのは、中国市場を回避した資金の動きだけであって、こうした無分別な上値追いをする意味はつまり、中国市場の危機感の表れだったと思う。確かに今月の買われ方も去年の5月、6月の時も、一方的な買い相場になった。

けれども、中国経済が崩壊に向かい、米国経済もまもなく個人消費が壊滅するという局面で、日本株だけがこのまま上値を追う相場になるのだろうか?少なくとも来期の日本企業の業績は厳しいものになるのは決まっている(ようなもの)。日本の主力企業はみなグローバル企業であるからだ。

国内需要がダメで、海外で稼ごうとする日本企業にとって、外部環境の急激な悪化を無視していいのだろうか?