マーケットを取り巻くリスクの解は「悪魔の証明」
- 2024.04.18
- トレード雑感
以前からかなりピントの外れたことばかりレポートしていたIMF(国際通貨基金)だが、ラガルドが専務理事を退いた直後あたりから、少しは真っ当なレポートを出すようになった。とは言え、現在2期目に突入したクリスタリナ・ゲオルギエバは、ブルガリア出身の環境エコノミスト。欧州委員会副委員長、世界銀行総裁、を経てIMF専務理事に就任した言わば環境グローバリスト。なので、IMFもまた世銀同様に米国民主党との繋がりから、大した期待は出来ないかな、と思うし、米国が最大の出資国(2位は日本)なので、ほとんど米国の出先機関のようなものだと思って当然。
そんなIMFだけど、今回ブルームバーグに記事掲載されたIMF報告書の指摘はかなりきわどい線を突いていると思った。
このレポートで問題にしているのは、米中両大国の公的債務の急拡大が今後も止まらないということで、米国の場合は政府支出の拡大によって金利が高止まりし、その結果他国はドル調達コストを上昇させ続ける。その結果、新興国のドル建て債務が急拡大しドル調達コストが経済を圧迫し続けるということ。でも、この問題は現在すでに慢性的なドル不足ともあいまって危機的な状況にあるわけで、将来ではなく足下の危機なんだけどね
また中国の場合は、膨大な民間債務と公的債務によってほとんど破綻状態にあるわけで、中国自身はもちろんだが中国と貿易の多い国々は、人民元決済を強いられているわけで・・・。
けれども、IMFは相変わらず、本質を覆い隠すような言い回しに終始する。IMFが最大出資国の米国や出資比率第三位の中国の真実は最初から指摘できるはずがないんだけどね。世界的な危機の本質は、この両大国の為替にあるということは、口が裂けてもレポート出来ないのだろう。
世界経済の中で、最大の米国とGDP第二位の中国が、これまた天文学的な国家債務を抱えていて、ドルと人民元が管理相場制を維持しているとする異次元の異常事態。一体どのくらい債務があるのかさえ分からない国の通貨を、勝手に交換比率を決めてしまっている・・・。もっと言えば、紙屑の人民元の価値をドルが保証しているという、資本主義史上最悪の異常事態が、世界経済を覆っていると言ってもいい状況。
実際の取引では無尽蔵に人民元とドルの兌換が行われているわけではないけれど、レートが決まるということが事実上の人民元の価値をドルが保証していることと同義。つまりドルはいくら財務があるのか分からない国の紙くず同然の通貨に価値を付けちゃってるということなんだ。
なので、議論としては人民元を管理相場制から変動相場制に移行させないといけない、というのはあるけれど、今やそんなことをすれば世界経済は二度と立ち直れないほどのクラッシュに陥るのは目に見えている。マーケットは正直だから、変動相場制に移行したら人民元は大暴落するのは確実。けれどGDP世界第二位の経済が破綻すれば、世界中がパニックになるだろう。
けれどもこのまま、両大国の国家債務が急増し続けることが、果たして現在の資本主義経済の枠組みの中で容認され続けるのか?という問題の解は、今となっては「悪魔の証明」だ。
「悪魔の証明」と言えば、中東問題の解もその一つ。今回イスラエルとイランの対立は、どちらが良い悪いを語ることそのものが、過去の経緯からしてまるで悪魔の証明をするようなもの。
そもそも、昨年のイスラエルで行われた「音楽フェス」でのハマスのテロ行為が発展したガザ地区の戦闘を起点に考えて、イスラエルが遣り過ぎだ、ハマスがテロ組織だから悪い、と盛んに議論していて、それが発展してシリアのヒズボラやイエメンのフーシと言った民兵組織を含めて支援しているイランが悪い、とか結論付けようとするけれど、トランプ大統領が主導したアブラハム合意を破ってヨルダン川西岸地区の入植拡大を勧めたイスラエルの行為が、今回のハマスのテロを誘発したということもある。ヒズボラやフーシはイランの支援で増強してことあるごとにイランを攻撃してくる。そしてイランは従来からイスラム革命を標榜し、イスラエルを公然と敵視していた。そのイランが核開発に邁進していて、現時点でほぼウラン濃縮が臨界可能値に達していて、イスラエルの危機感は半端なものではない。
そしてイスラム教もユダヤ教もハムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」という「同害報復」の思想が生きているし、何より歴史的経緯から「10倍返しの報復」という考え方を持たざるを得ない状況があったことも、中東問題を複雑にしている。そして中東諸国の紛争には常に米国という仕掛け人の存在があったし、そもそもユダヤ人国家はイスラエルだけでなく、言い換えれば米国もユダヤ人国家を言えなくはない。
当事国のイスラエルはイランの報復攻撃とは言え、本土直接の大規模攻撃を受け、反撃すると宣言した。G7各国や中東各国は、イスラエルの抑制を説得するものの、ネタニヤフ政権は「同害報復」に踏み切る可能性が強まった。それに対してイランは、攻撃が実行されればさらなる報復を宣言しているわけで、中東エリアに紛争拡大の危機か迫っている。
いずれにしても、今のマーケットの置かれている状況は、異常な環境下であるという認識をしておくべきだと思う。株式市場も債務問題で下げるとすれば、金利の高止まりと企業業績の低下でかなり長期になることも十分にあり得るし、中東有事が現実化すると特に日本経済にとっては極めて厳しい状況が待っていると覚悟しないといけないしね。
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