2024年下期を覚悟する必要がある
- 2024.06.29
- 放言
PCEが予想と完全に一致して、というか米国当局もこういう数字を出さざるを得なくなってるのかもしれないけれど、いずれにしてもアナリストの予想と当局の発表がそれぞれデータソースが異なるにもかかわらず、同じというのは、それはそれで違和感バリバリなんだけどね。
でも市場としては「結局は(当局は)こういう事なんだぁ・・・」という醒めた見方をしてるんだなと、一旦は大きく値を上げたにもかかわらずマイナス圏に沈みつつある米国三市場を見ていて思ってるけどね。その見方を助長しているのが、何といっても昨日の米大統領選挙を前にしたディベートだったと思う。
米大統領選挙討論会
トランプか?バイデンか?という見方をすれば、双方の政策や相変わらずの泥試合的な罵り合いは別にしても、痴呆がありありと分かってしまったバイデンではどうにもならない、と多くの米国国民は感じたろうし、そもそも先ごろおこなわれたイタリアでのG7会合でのバイデンの姿でほぼほぼ終わったと言ってもいいほどだけどね。
そうなってくると、民主党は、本当に巻き返すつもりがあるなら、ロバート・ケネディ・Jrしかいないと思うけど、まぁそんな寝技を発揮できる人はいないだろうし、嫌なのはオバマとヒラリー辺りが何を考えているのか?だけどね。ペロシはお金儲けとスキャンダルが怖くてやめちゃった。
となるとトランプの可能性が非常に高くなってきて、滅茶苦茶風見鶏をしてる司法関係者とか、徐々に民主党の無理筋から方向転換し始めたりもしてる。全く米国の民主主義も出鱈目もいいところだけど、日本よりもマシな部分も拓さあるし・・・。
欧州政治の保守化・右傾化
さて、米国は保守派のトランプ大統領になるとして、欧州でも今は大変な嵐が吹きまくってる。まずは何といっても最近非常に評価が高まってるイタリアのジョルジョ・メローニ首相が、EUの保守回帰に拍車をかけてる。メローニ首相は左派系のイタリア社会運動に参加して政治キャリアを開始したけれど、現在は保守系ポピュリストと言われていて、自ら「イタリアの同胞」という保守政党を2012年に立ち上げ、2022年に首相に選出された。その評価が非常に高まってるわけだよ。
そしてその保守系の波は(メディはすぐに極右と書くけれど)、思った通りフランスに飛び火した。何といっても極右と言われ続けたマリーヌ・ルペンの存在が大きいよね。国民連合の党首の座は譲ったものの、次期大統領候補の筆頭であることに変わりはないし、前回の決選投票ではマクロンに58%対42%と、相当なところまで迫っていた。その国民連合が現在非常に優勢と伝えられている(第一回投票6月30日、決選投票7月7日)。
また逆にイギリスではスナク首相率いる保守党が7月4日の選挙では労働党に敗北する可能性が高まってるし、スナク首相も現役首相として落選するかもしれないという観測もある。けれどもイギリスはEU離脱しているので、EUの保守化の流れには影響しないとも言われてるし、そもそもイギリス労働党は中道左派ということで、日本の自民党よりもはるかに保守色が強い。次期首相はスターマー党首になる可能性が濃厚。
そもそもドイツでも「ドイツのための選択肢」という右派政党が、メルケル前首相の移民政策に反対して台頭したほか、ハンガリーやポーランドでも右派政党が躍進していることから、欧州議会での保守化の流れはもう止めようがないところまで来ていると言われる。
結局のところ、世界中、安価な労働力確保と指示票獲得のために大量の移民を受け入れ、それが深刻な社会問題を引き起こし、財政を圧迫し、社会ルールを毀損することになってしまい大揺れに揺れている。
それと全く同じ状況が米国でさえも深刻化しているのは明らかで、それ(移民政策)を推進しているのがバイデンの民主党なのだから、劣勢になるのは当然のことだと思うし、日本でも本格的にバイデンの子分である岸田降しが始まっているのも当然の事だという感じがする。
2024年後半は世界政治の大変革へ
リベラリストでなければ政治家じゃない!という風潮が2000年代に入り急激に浸透してきたのは、まずは地球温暖化の流れから。その流れを推進しているのが気候変動枠組条約締約国会議(COP)であって、そもそもは1994年の国連主導の国連気候変動枠組条約が原点です。
そもそも何人かのミクロ的な研究をしていた学者の意見や、NASAの気候科学者ジェームズ・ハンセンが米国議会で証言したことが原点とされていて、そこに群がるように様々な学者が様々な学説を言い始めた・・・。それを国連が自らのアイデンティティを示せる絶好のテーマ、ということで取り上げてここまで大きくしてきたという経緯。その中でいかにも象徴的だったのがアル・ゴア米国副大統領がコマーシャルした「不都合な真実」だった。
この問題は年々形を変え、再生可能エネの推進とか人権問題と絡めてSDG’s(持続可能な開発目標)と言ったいかにもリベラルなテーマへと変貌し、EVの開発・推進、化石燃料規制、太陽光・風力等の発電手段の爆発的な普及へと繋がった。
しかし、よく考えてみるとすべては新たなビジネス創出のため、と見えてくる。世界がこうした取り組みをしている中でも圧倒的に温室効果ガスを排出したのは中国でありインドであり米国なのだ。それはCOPの取り組みの全否定であり、世界経済はこれらの国々の経済活動によって支えられ、今日にいたっていることを考えると、何をやってるんだ!と言いたくもなる。しかし気が付くとそこには莫大なビジネスが誕生しているのだ。
また、先進国で共通の課題となっているのが労働力不足であり、各国ともそのインフラを維持するためには移民を受け入れなければならないという企業側の強い要望が政治を動かすのだ。そもそも移民政策というのは、歴史上枚挙にいとまがないし、伝統的に行われてきた手法でもある。そもそも、大昔から文明は奴隷労働なしには発展しなかったし、新たな奴隷を得るために他国を侵略していた。大航海時代に新大陸を発見し、そこを開発して利益を得るためには重労働に対する労働力が必要・・・ということで、アフリカからの奴隷を強制したし、南米では移民の入植を推進したけれど、すべては労働力確保のため。
それと同じことを欧州や米国は推進し、その結果各国の社会制度が破綻寸前に追い込まれている。昔のような強制的な労働力の管理は今の時代では出来ようはずもなく、自由と人権を尊重しつつ、急激かつ大量な移民を受け入れてもなお社会制度を維持することなど、安易に出来るはずもない。
気候変動枠組条約締約国会議(COP)の活動の一つの帰結として、産油国・資源国を中心にしたBRICSという勢力を生み出し、移民政策の失敗によって保守主義が世界中で復権しつつある2024年は世界政治が大きく変わろうとしている。
金融資本主義が危うい
リベラル派はSDG’sを「持続可能な社会」と勝手な解釈をし始めた。あらゆる持続可能な開発目標を実現するには、地球環境を悪化させない新たな事業の創出とそれを維持する労働力の確保、ということになるのだろう。だがしかし、そのために各国の財政は急激な債務膨張に見舞われている。中でも米国と中国の債務はもはや天文学的な領域となって、さらに膨張を続けている。
世界経済を牽引する両大国の経済は、果たして「持続可能」と言えるのだろうか?ここ数年間、世界は中国経済の栄枯盛衰を目の当たりにしたわけだが、結局中国の驚異的な経済成長を支えていたのは無尽蔵に供給されたマネーそのものだった。資本主義成立の要件としての資本の蓄積は、もはや無視された。資本があろうがなかろうが、通貨を無尽蔵に発行する、または証券を無限に発行しロールオバーしさえすれば資本の蓄積など必要ではないと・・・。
そうなると債務も比例的に増加するけれど、そんなのは関係ない。無限にこの金融ループは続くのだ、という理論建てであって、米国は基軸通貨としての役割があるために、一段とエスカレートする。
世界の経済大国、経済成長国は全く例外なく債務を膨張させている。つまりは通貨供給量そのものが株高であり債券高であり経済成長なのだ。
しかし、こうした経済の弱点は金利上昇でありインフレなのだから、世界中その対策に必死に取り組まざるを得ない。だが通貨の量が爆発的に増えたことで、金利が上昇するのは必然である。所得の伸びが止まればインフレは沈静化するだろうが、果たして金利は低下するだろうか?
どう考えても米国の、住宅ローン固定金利が8%、クレジットカード金利が15%、という時代が持続可能とは到底思えない。10%の事業資金は借りようもない。気が付くと足元ではそんな時代になっている米国経済のクラッシュは時間の問題のように見える。
世界中、そして日本も政治や経済の流れが変わりそうな2024年下期は来週から始まる。
(日経平均\40,000を獲った後が怖いと身構えてます。)
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