フッ化水素を日本が韓国に輸出規制した本当の理由

フッ化水素を日本が韓国に輸出規制した本当の理由

フッ化水素 ウランと化学反応させると六フッ化ウランのガスになります。このガスを高速遠心分離機に通すことで、比重差から核分裂する成分としない成分に分離する・・・。つまりウラン濃縮には欠かせない化合物(補助剤)です。

またフッ化水素は半導体のエッジング、洗浄、液晶や有機ELなどのパネル製造に必須ですが、極めて透過性が高く毒性の高い言わば劇薬で、事故等も起きていて厳格な管理が要求されます。

フッ化水素の原料

原料となる高純度蛍石(フッ化カルシウム97%含有)は中国が最大の原産地で、日本のフッ化水素生産の82%を中国からの輸入に依存(他は南アフリカ、モンゴル)しています。

そのため日本企業は中国に合弁会社を設立してフッ化水素の精製を行っているわけですが、高純度化は日本国内に輸入して行い、再輸出しています。

フッ化水素の生産

フッ化水素の生産は、日本企業ではステラケミファ、森田化学工業、ダイキンの3社で世界シェアは80%を超えます。そのうち森田化学工業がほぼ独占状態であるのが実態です。

同社は高純度蛍石の原産が中国であり、製品寿命の短さもあって中国に合弁企業を設立しています。

●浙江森田新材料有限公司

また、合弁ではなく外資企業として中国国内に設立しています。つまり、精製技術の保守を行えている状態なのです。

●森田新能源材料(張家港)有限公司

さらに韓国に合弁企業を設立していて、サムソンやハイネクス等半導体産業、およびLG電子へのパネル産業への供給を行っています。

●大韓民国忠清南道牙山市仁州面仁州産団路 123-34

しかしいずれの場合も、高純度フッ化水素の生産は日本に逆輸入して精製後再輸出しています。

フッ化水素の使途

半導体シリコンウエハ上に転写した回路を残すためのエッチングや酸化膜そのものの除去に使用。

半導体・液晶(有機EL等含む)ディスプレイの洗浄剤用途。

六フッ化ウラン、六フッ化プルトリウムの吸着剤(遠心分離用)として用いられ、核分裂するウランの濃縮を高めるために必須。ウラン濃縮(原発用5%、医療用20%、50%以上は核弾頭)・毒ガス(サリン・VX等)兵器製造に使われる。

輸出貿易管理令(政令)で規制

日本では輸出貿易管理令(政令)において、「軍用の化学製剤の原料となる物質又は軍用の化学製剤と同等の毒性を有する物質若しくはその原料となる物質」として輸出統制品目指定しているとともに、輸出には、経済産業大臣の許可が必須となります。

ホワイト国(包括輸出許可制度)リストから外すというのは、輸出毎に経済産業大臣の許可が必要ということで、韓国の場合、実質的には禁輸と同等になります。

日本が輸出規制に踏み切った理由

韓国フッ化水素輸入量の極端な増加

日本のフッ化水素が北に輸出(瀬取り)されている(可能性が大きい)という国連(国連制裁決議違反)の指摘?

今回韓国向けの輸出に調査が入りました。そしてフッ化水素の漏洩や移送方法、貯蔵などで多数の問題が発覚したということです。

ここで最大の問題はここ2~3年、輸出量が倍増となっていて、その使途が極めて不明確と言う点。在庫貯蔵量からして約30%が行方不明になっています。

さらに「韓国が北朝鮮にフッ化水素を横流ししていて、北朝鮮がそのフッ酸を使って6フッ化ウランという物質を作っている」という米国からの情報がもたらされたこと。

そのフッ化水素がイランにもたらされている可能性をも米国は非常に懸念している・・・。

日本は韓国に対して、以前から疑念を抱いていてここ数年間の間に再三にわたって協議の申し入れをしてきたが、拒否され続けた経緯がある。

そうなると日本としても輸出規制に踏み切らないわけにはいかないし、ある意味これは日米が綿密に計画した共同作戦と見ることができそう。その意味ではすでに安全保障上の国際問題となっているのだ。

経済危機に発展する可能性が極めて高い

どうしてトランプ大統領は金正恩朝鮮労働党委員長と会談したのか?

米国は中国に対して、スパコン用半導体規制を開始しているが、中国は内製で対応するとしています。その根拠の一つが、高純度蛍石の独占にあるわけです。

そして森田化学工業との合弁企業があるために、フッ化水素精製技術も確保できているという自信もあるのだと思います。しかし、先端製品に必要な高純度フッ化水素の精製は日本国内でしかできないということもあり、また技術開発には相当に時間を要することから、現時点では(米国の)特別な動きはありません。

しかし韓国の場合は、GDP輸出比率は40%以上であり、そのうちの20%を半導体が占めているということ、そして液晶パネル、有機ELパネル、さらにはスマホ等の製品を考慮すれば、韓国経済へのダメージは計り知れないものとなる可能性が高い。

また、仮に北朝鮮への輸出と言う国連制裁決議違反ともなれば、国際的な地位は完全に失墜する。この件が発覚して以来ウォンは暴落状態であって(1170ウォン/$)、既に韓国経済は危機に瀕している。

時を同じくしてイランは核合意制限を破りウラン濃縮度を引き上げている。米国はイランに対するフッ化水素の供給元をほぼ特定していて、表面化すれば世界的な混乱を招くだろう。

韓国関連株は要注意

今回の輸出規制はすなわち国内企業に対する命令であって、内政問題であるとする立場をとっている以上、韓国の日本に対する抗議は通用しないと思われる。

従って、北朝鮮の核開発やイランの核開発疑惑が、解明されある程度の決着を観るまでは、日本の輸出制限の解除はないだろう。その場合、韓国に対する輸出比率の高い企業は、大きなリスクを負うことになるので、注意が必要だ。