韓国ウォンが暴落!?:原因は米中貿易戦争だが反日は致命的
- 2019.08.05
- 海外情勢
韓国ウォン安が止まりません。G20直後日本が、核開発や半導体生産などに使われる三種類の化合物(フッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミド)の韓国への輸出を(包括輸出品目から)通常手続きに戻したことで影響が懸念され、ウォン安が再燃しています。
しかし、ウォン安は既に4月中旬がら動意を見せていて、貿易を巡る米中合意が中国側による一方的破棄によって白紙に戻った5月以前の段階で1,145ウォンから1,160ウォンへと急落しています。
ウォン安の原因は米中対立
韓国経済は貿易依存度が高く、さらに中国依存度が高いという極めてアンバランスな貿易構造を抱えているために、米中対立によって、中国経済が減速すればそれ以上にダイレクトな影響を受けると世界の投資家は懸念を持っています。
日本の韓国向け輸出規制ばかりが問題にされていますが、ウォン安の原因は米中貿易戦争であると言えるのです。
ウォンの通貨脆弱性
ウォンはハードカレンシー(国際決済通貨)ではなく、それ自体では個別に国別交渉をしない限り、貿易決済はできません。またウォン自体の信用度は、外貨準備高に依存しているために、外貨準備と対外債務の比率が問題となります。
外貨準備と対外債務
韓国の外貨準備の総額は2018年3月時点で約3,853億ドルとしていますが、韓国経済は極めて貿易依存度が高く、政府準備と民間蓄積の割合が極めて不透明です。一方、対外債務は1200億ドル程度と韓国銀行の循環統計で発表されていますが、外貨建て債務と思われる別勘定に約1500億ドル計上されていて、実質的な外貨建て対外債務は約2700億ドル程度では?と言う懸念が持たれています。
外貨準備は流動性を考慮すると1000億ドル~2000億ドル程度と考えられ、外貨準備不足は明白になってきます。
その状況を従来は、日韓通貨スワップ協定によって補完してきて、なおかつ邦銀が与信供与を行うことで、貿易立国・韓国は成り立ってきたわけですから、文政権による日韓スワップ継続拒否は実質的に韓国経済にとって致命傷なはずです。
ウォン安は致命的
貿易立国である韓国の経済基盤は、以上の通りかなり脆弱であることが、米中対立によって注目されています。4月後半からのウォン安は、そうした韓国経済の状況を考慮してキャピタルフライトが起りつつあることを示唆しました。
1ドル1200ウォンがボーダーとする考え方は、(リーマンショック後のウォン危機等)過去の事例に習ったものと言えますが、根拠は十分すぎるほどあります。
仮にウォン安に拍車がかかれば、対外債務の急増によってウォンの信頼性は失われ、韓国経済はたちどころに危機的状況に追い込まれます。
為替介入余力がない
さらに韓国には、為替介入の余力がないのではないか?という懸念も持たれています。実際に外貨準備を持ち出してウォン買いをすれば、ウォン高に誘導できるかもしれませんが、その場合外貨準備縮小となってしまいます。
結局、為替介入をしたことろで、ウォンの信頼性が改善すると言う話ではないのです。
また反対にウォン安を放置した場合は、対外債務の急増という悪夢に見舞われるわけで、日韓通貨スワップを拒否した韓国経済は四面楚歌の状況と言えるのです。
強気の姿勢を崩さない韓国だが・・・
韓国金融委員会(FSC)は3日、日本の輸出管理厳格化による影響を受ける企業に「迅速かつ十分な」金融支援を提供すると発表した。韓国経済への影響を抑える取り組みの一環。FSCの崔鍾球(チェ・ジョング)委員長は声明で、韓国産業銀行など金融機関が日本の措置による影響が及ぶ企業の債務の満期を速やかに1年延長する一方、商業銀行も自主的に同措置を講じると説明した。(ブルームバーグ記事より引用)
FSCの崔委員長は「日本に金融依存しなくてもどこからでも借りられる」と強気の発言をする一方、通常では考えられない上記の企業債務満期延長を打ちだしました。
現在自国通貨のウォンの信頼性不安から急落の最中で、こうした金融措置をするとウォンの信頼性はますます低下してしまいます。
まして一般の商業銀行にも同様の措置をとるよう指導するということは、つまり一定期間の企業債務凍結であり自らがウォンの信頼性を著しく阻害するような結果になりかねません。
こうした対策を金融当局がこの時期に打ち出すと言うこと自体、FSCは通貨危機の本質を理解できていないのかもしれません。
中国と心中を選んだ文大統領
韓国は前政権(パク・クネ政権)時代の2013年から親中路線に大きく舵を切りました。それ以前の韓国は、反共、反日路線の外交を続けてきましたが、リーマンショック直後のウォン危機を日韓通貨スワップで切り抜けた(日本が助けた)という事実を無視し、経済成長の著しい中国寄りの路線に大幅転換したわけです。
そして現在の文在寅大統領は、より中国依存度を高める政策を行い、同時に日韓通貨スワップの継続拒否によって、反日路線を強調してきました。
しかし、米中貿易戦争が開始されたことによって、状況は一変したわけです。韓国の対中輸出の柱はサムソンを通じた半導体輸出ですが、自動車産業(現代自動車)や造船は恩恵を受けることはありませんでした。
その中国経済は米国の制裁関税によって深刻な打撃を受け、遂には一般企業に対し(社員の)解雇禁止令まで飛び出しました。その結果、民間企業の倒産はこれまで以上に激増するとみられています。
中国も自国経済の立て直しに必死の状況で、韓国経済を支援する余裕はありません。
つまり文大統領の反日、親中政策は、自らの首を絞めるだけでなく、中国経済と心中の道であると言うことですが、残念ながら韓国国民はそのことに気づいていないのですね。
最後に反日姿勢がトドメを刺す
米国トランプ政権の対中国政策は中国の覇権を否定するもので、それは経済のみならず、軍事問題や領土問題、そして人権問題へと拡大してゆきます。
2019年には大統領選挙がありトランプ大統領は再選を目指しますが、対中政策は政権以上に議会(共和党・民主党一致)の総意であって緩める(妥協する)という選択肢はありません。
昨年から打ち出したファーウェイの5G覇権は結果的に阻止することができませんでした。だからこそ、今後はあらゆるハイテク技術に関し規制をかけてゆくことは明白です。
その主眼は半導体で、すでに米国メーカーに対し禁輸を行っていますが、台湾と韓国からの技術流出を防止することが現在の最大の課題となっています。
その一環として日本は韓国に対して圧力をかけていることはほぼ間違いありません。
気がつくと韓国は中国の柵封国家路線に極めて近い状況です。
中国は年初に国営企業に20兆円以上の資金を投下し、鉄鋼やセメントを膨大に生産しました。そしてGDPをドレッシングして全人代を乗り切ったわけですが、それらの大半は韓国が買いとっているわけです。
つまり、今回のウォン安はそうした韓国の中国依存を反映した動きであることは明らかです。そして世界の投資家は、韓国を中国経済とリンクさせて考えています。
そこで中国に同調する以上に、反日姿勢を強めると言うことに対し、世界の投資家はキャピタルフライトを考えざるを得ないのです。
8月28日、日本政府は韓国のホワイト国除外の政令施行を迎えますが、このまま反日を続けるならば確実に韓国経済は破綻危機を迎えると思われます。
9月1日に米国の(3000億ドル相当の中国製品に対する)関税10%が決まっている以上、ウォンは耐えられないでしょう。
文大統領の反日姿勢は最後に自らのトドメを差すかもしれません。
-
前の記事
韓国経済危機に身構える週:日本株を読め!【8.5~8.9】 2019.08.04
-
次の記事
ウォン暴落!遂に韓国金融危機突入か?:8月5日(月)前場 2019.08.05