米中対立は米国の金融制裁発動で短期決戦へ!

米中対立は米国の金融制裁発動で短期決戦へ!

世界中、右を見ても左を見ても、リーマンショック級の金融危機を誘発する要因がゴロゴロと転がっている・・。こんな時代は今までにはありませんでした。

もちろんその最大の要因は米中対立です。

2008年のリーマンショック以降、影響が軽微だった中国は大規模な財政出動を行って一気に自国経済を立て直すと、市場を開放し、手詰まりだった海外からの投資を呼び込み世界経済の牽引役としてGDP世界第二位の地位を確立しました。

特に国内経済を牽引したのは不動産で、異常な不動産開発を繰り返すことで、債務を覆い隠し好景気を演出してきたわけですが、既に天文学的な債務にまで膨れ上がり完全に行き詰まっています。

そこで習近平は新たな投資先として中国製造2025を打ちだし、不動産からハイテク分野への投資シフトを行いましたが、技術や情報などの知的財産権侵害(盗用)を問題視され、米中貿易戦争へと発展しています。

米中対立の激化

2018年に勃発した米中の関税合戦(貿易戦争)は、交渉を繰り返して1年を経過した現在でも収束の目途すらたっていません。しかし国家覇権主義を打ちだした中国に対し、米国議会ではECRA(輸出管理改革法)等次々に新法を通過させ、不正によって米国の国益を侵害する中国を制裁する方針です。

そうした流れを受けてトランプ大統領は、安価な労働力と不正取得した技術によって製品をつくり、米国に輸出するばかりで(米国製品を)輸入をしない中国に対し大幅な関税を課していますが、現時点では思うような効果が得られていません。

中国製品にいくら関税を賦課しても、中国は値引きでそれを吸収してしまい、米国の消費者物価に対する影響すら出ていないわけです。

中国は市場経済ではない

そもそも中国は、市場経済を模倣してはいますが資本政策は共産主義そのものです。企業はすべて共産党の支配下にあり、価格は市場ではなくて政策的に決定します。したがって、米国が資本主義理論で対応しても中国の覇権主義は容易には抑制出来ないのです。

米国が敵視したファーウェイは、米国の強力な制裁にもかかわらず、昨年度よりも23%の増益を発表しています。世界各国の5G通信網において基地局を無償に近い値段で提供してしまっているために、拡大を抑制することができないわけです。

つまり、中国の経済政策や企業活動は資本原理に基づく資本主義ではないわけです。

全輸入品に関税賦課

G20大阪サミットでの米中首脳会談では、それまで関税賦課対象としていない約3500億ドル相当の輸入品に対する25%の関税賦課を凍結する代わりに米国農産物を大量購入するというバーターに合意しました。

しかし中国は、のらりくらりを輸入を引きのばし、僅かな輸入しか行わなかったことで、「約束違反」であると激怒したトランプ大統領は、約3000億ドル相当に10%の関税を9月1日から実施すると通告しました。

従来の関税対象は、米国企業や個人消費への影響に配慮した選定でしたが、いよいよ中国製の消費財にはすべて関税がかけられることになり、米国経済への影響が懸念されています。

その上で、トランプ政権は9月より米国で交渉再開としていますが、交渉妥結の見込みはありません。

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米中報復合戦

これに対し中国は、国営企業に対し米国農産物の輸入を差し止めるとともに、人民元レートを安値誘導して、10%関税をすべて吸収可能な体制としてしまったわけです。

10%人民元安に誘導すれば、現在実行中の関税もほとんど効果が得られなくなります。人民元レートは前日の中央値プラスマイナス0.3%の範囲で管理するという管理相場制(準固定相場制)ですから、変動は当局の為替政策次第という側面があります。

トランプ大統領が関税賦課を発表後、人民元-ドルは7.14まで急落しましたが、これは4月の水準の約7%安であって、ジワジワと米国関税を吸収しているわけです。

為替操作国認定

8月5日、ムニューシン財務長官は「中国を為替操作国に認定する」と発表しました。これは従来の関税効果が思ったほど得られていないという状況や、9月1日からの新たな関税に対して中国(人民元)にたいして楔を打ち込んだと言えます。

米国が「為替操作国認定」したとしても、それ自体に強制力はありませんが、為替変動を理由に関税を機動的に引き上げることが可能になり、それが中国へのプレッシャーになることは確実です。

中国の強かさ

米国の関税政策、そして知的財産権保護と資本移動の自由化といった要求に対し、中国はあらゆる対抗手段を用いて反発しています。

関税に関しては米国製品の輸入を制限し人民元安誘導で、知的財産権に関しても名目だけで実効性のない国内法整備で、そして資本移動の自由化は実質的な資産凍結で対抗しています。

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領土拡張主義が加速

さらに中国の経済圏拡大政策によって、ラオス、カンボジアの事実上の属国化を行い、一国二制を主張している香港、台湾を統一して、香港の金融センターを上海と統合し、台湾の半導体技術を吸収してしまう目的で、軍事介入の準備を進めています。

特に台湾に関しては、一触即発の状況で、蔡英文総統は米国に対し支援を求めています。そうした中、占領した南沙諸島で中国は弾道ミサイル実験を開始し、台湾に圧力をかけています。

またすでに統治下に収めたチベット・ウイグルでは宗教弾圧が苛烈を極め、特にウイグルではイスラム教信者の改宗と称して強制収容所で200万人の洗脳・再教育を行うとともに、臓器移植ドナー化するという21世紀最悪の人権弾圧を行っています。

そして次のターゲットは韓国です。韓国の文在寅大統領は中国の支援を受けて当選した時から、朝鮮半島の統一を政策公約としていました。

朝鮮半島からの米軍排除

中国にとって目の上のタンコブは韓国駐留の米軍と配備されたTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)で、北京を含め中国の主要都市がその射程に入ります。

このシステムは迎撃だけでなく、中国のあらゆる作戦行動を把握可能な高性能レーダーシステムを備えていて、人民解放軍の作戦行動は丸裸と言われる程です。

8月5日、日本の輸出規制強化に対し、韓国文在寅大統領は「北朝鮮との経済協力で平和経済が実現すれば、一気に日本の優位に追い付くことができる」と発言しました。

事実上北朝鮮という国連制裁決議を受けたテロ支援国家、核開発国家と経済協力すると表明してしまったのです。

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つまり、韓国は資本主義圏から離脱し、共産国家と協力するという宣言であって、日韓対立云々ではないのです。これは中国の思惑通りで、朝鮮半島はいずれ中国の柵封体制に回帰するのかもしれません。

トランプ政権は短期決着へ

どうやらトランプ大統領は中国問題に関し、短期決着を目指していると思われます。来年は大統領選挙イヤーとなり、年明けから共和党の予備選挙も始まりますが、そうなると大統領職は多忙を極めます。

そんななか、来年の大統領選挙での再選が危ぶまれる状況になってきています。米国内では銃乱射事件の多発によって銃規制の声が拡大していますが、共和党は基本的に全米ライフル協会の支持を無視できず、容認派です。

選挙制度も都市部の支持やマイノリティー支持が多い民主党が有利なので、誰もが考えるほどトランプ大統領の再戦は簡単ではありません。

日米共同作戦

日本政府は戦後初めて、毅然とした態度で韓国の貿易管理に対しNOを突きつけました。そして韓国のホワイト国除外の政令を28日から施行すると言う閣議決定をしました。

こうした日本の姿勢は韓国にとって初めての毅然としたもので、文在寅大統領も冷静さを失ってひたすらに反日・抗日の姿勢です。

しかし、ホワイト国除外は韓国経済のガリバーであるサムソンに致命的な影響を与えるものです。ホワイト国であれば、韓国サムソンへの輸出品を中国サムソンへ再輸出することができましたが、キャッチオール規制適用でそれが出来なくなります。

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また輸出申請に必要な品目は1100以上と言われ、韓国経済そのものが多大な影響を受けるわけです。

一方米国は中国に対しスパコン関連部品の禁輸を発動しました。すでにCPU、メモリ、SSD等の製品は輸出出来ませんが、日本の韓国に対する対応によってサムソン製品の供給が止まる可能性が濃厚です。

こと半導体に関して中国は独自の生産に立ち遅れていて、独自開発のために台湾の半導体製造設備技術、韓国サムソンの半導体技術が必要だったわけですが・・・。

米国のワイルドカードは金融制裁

強かな政策を続けている中国ですが、最大の弱点は金融です。トランプ政権は7月に中国の小規模行数行に対し、ドル取引停止の制裁を加えました。

そしてさらに、北朝鮮の核開発資金調達が疑われる取引に関し、中国3行が関与したということで捜査を開始しました。その3行のうち招商銀行交通銀行は香港の大陸系8行の一角で、制裁対象となれば、かなりの影響が予想されます。

中国の貿易の多くはドル建て決済で、何らかのペナルティによってドル換金(為替業務)が出来なくなると、直ちに業務は行き詰まります。

また米国は中国の主要銀行に対して米国内での知的財産権略取に関係した資金の流れを綿密に調査していますが、すでにファーウェイやアリババの資金の流れに関して大方把握していると思われます。

トランプ政権はこのワイルドカードを温存していますが、仮に切る(金融制裁に持ち込む)ことになれば・・・中国発の金融危機となり、中国国内へ波及すると莫大な負債のために中国経済は一気に崩壊する可能性もあります。ドル経済圏からの締め出しですね。

トランプ大統領は短期決戦に挑む

トランプ大統領の政策は、2020年の大統領選挙をにらんだものになるのは政治家として当然なのでしょう。現在日本では安倍首相と蜜月であることから、人気の高いトランプ大統領ですが、米国では支持と不支持の綱引き状態なのです。

つまり拮抗した2大政党制下では、政策で支持を得なければ勝つのは難しいと言うわけです。

しかるに、トランプ大統領の政策のなかで対中政策だけは、共和党、民主党の共通の支持を得ているわけで、まずはこれを強力に推進することが再選には不可欠なのです。

来年の選挙戦は、経済問題はもちろんですが、人権問題が主要のテーマになります。そうした選挙戦を勝ち抜くためには中国問題で実績の伴った早期決着トランプ大統領は指向しています。

株式市場は大荒れ

トランプ大統領はFRB利下げ後、中国製品への関税を発表した時、FRBへの不満と同時に「株価動向を気にしない」と発言しました。つまり、米国株が下落した場合は、FRBの利下げが不十分であると言えるからです。

それは年内の対中政策が株価に影響するほど厳しいものになるということの裏返しと見ます。

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