株価暴落要因:米中対立と日韓対立の背景を知っておく

株価暴落要因:米中対立と日韓対立の背景を知っておく

米国トランプ大統領は、中国がG20大阪サミットで合意した農産物輸入を履行していないとして、9月1日から3000億ドル相当の中国製品に10%の関税を賦課すると発表した。

一方安倍政権は、韓国に輸出する核開発や化学兵器開発に転用可能な3種の重要化合物(フッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミド)に事実上の輸出制限を実施するとともに、8月28日付けで韓国をホワイト国リストから除外する閣議決定を行った。

米国対中国、そして日本対韓国の対立はリーマンショックを凌駕する経済危機へと発展する可能性が急激に高まった。6日の米国株式市場の暴落はまさにリーマンショックを彷彿とさせる真夏の悪夢となった。

米中は新たな報復合戦に突入

いよいよ中国共産党は経済の危機的状況に対し強権を発動し始めた。中国では外資系企業の国外移転い歯止がかからず、失業者が急増。それに対して当局は民間企業に対し「解雇禁止令」を発動した。ほぼ同時に動乱の続く香港に対し人民解放軍を待機させ軍事的介入を身構え、台湾への民間人渡航を禁止した。

一方米国では、共和党全国委員会で中国の「臓器狩り非難決議」を採択し、上下院議会提出の準備を整えた。米国議会では中国への経済制裁に続き「チベット・ウイグル人への宗教弾圧、人権弾圧」を糾弾する姿勢を鮮明に打ち出す。

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大統領選挙で引けないトランプ

2020年の大統領選挙に向かってトランプ大統領は政策を(選挙対策に)集中している。制度上民主党優勢と言われる米国大統領選挙で共和党候補が勝つためには、地盤票はとりこぼせない。

特に共和党の地盤と言われる中西部農業地帯や自動車産業が集中する東部では、米中貿易摩擦の影響が大きく、移民政策で反対も根強いトランプ大統領は事実上劣勢に立たされている。

従ってG20で合意を取り付けた中国の農産物購入は、是が非でも実現しなければならない政策だった。しかし事実上反故にされ、その対応として中国製品に対する関税第4弾を発動するという報復行動に出た。

 

北戴河(ほくたいが)会議で突き上げられる習近平

中国共産党の非公式会議である北戴河(ほくたいが)会議が間もなく開催予定と成っているが、対米政策と国内経済政策の失敗を厳しく糾弾される可能性が高い習近平は、国営企業に対し米国農産品の輸入を差し止めてしまった。

米国に対する強硬姿勢を示すことで、共産党内での孤立状況を打破する腹積もりだが、会議の行方次第でより強硬な姿勢を打ち出す可能性が高いと思われる。

FRBパウエル議長は通告を受けていた?

7月31日、FRBは政策金利(FFレート)誘導目標を0.250%引き下げ、同時に資産売却の量的引き締めを即時停止した。しかし、トランプ大統領はFOMC開催まで強行に大幅な金融緩和を要求していた。

トランプ大統領は、FRBに対し米中貿易摩擦拡大を通告し、「予防的大幅引き下げ」を要求していたが、事実上FRBは政権の介入を嫌い受け入れなかった。それが「継続的な金利引き下げではない」とする悔し紛れのパウエル議長の会見に繋がって、市場は失望した。

 

韓国は金融危機に突入

韓国ウォンの下落が止まらない。週明け(5日)1ドル1204ウォンでスタートした為替マーケットでは、同日瞬く間に1218ウォンを超え、調整(韓国当局の為替介入?)を経て6日未明には1221ウォンを付けた。

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5日の米国株式市場が暴落したことから、6日以降の為替マーケットではウォン暴落の可能性が高まった。韓国金融の崩壊が現実のものとなる極めて危険な状況に突入した。

 

 

前例のない強行姿勢

安倍政権は、韓国に対し従来の日本政府になかった強硬な姿勢で臨んでいる。その裏には、対中制裁を打ち出したトランプ政権との協調姿勢が見え隠れする。

韓国は日本からの輸入品を管理せずに第三国輸出を行っている。特にウラン濃縮のために吸着剤として必須のフッ化水素、半導体回路工程で必須のレジストやフッ化ポリイミドは韓国が横流しを行っていると指摘された重要戦略物質である。

しかるに、これが第三国に横流しとなれば、北朝鮮やイランの核開発に使われている可能性が高く、またECRA(米国輸出管理改革法)で指定される可能性も考慮すれば、日本は「核開発・化学兵器開発支援国」と成りかねない。

既に昨年より韓国の第三国への横流しは米国によって確認されていて、今回の日本政府の措置は、明らかに米国と共同歩調を獲った結果でもある。

 

 

安倍首相は予期していた?

日本の韓国への輸出規制は、米国にとっては対中戦略として極めて重要であり、また北朝鮮・イランの核開発を抑止するために必要な措置でもある。

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一方安倍政権にとっては、韓国の枚挙にいとまのない反日・抗日的な姿勢を封じ込める絶好の機会となる。

特に慰安婦問題で妥協し10億円を拠出して解決したことは、安倍首相にとってはかつての河野談話に匹敵する汚点なのだ。そしてさらに徴用工問題とエスカレートしてきた韓国に業を煮やすとともに、状況の変化によっては憲法改正までを視野に入れていると思われる。

 

つまり、安倍首相はこうした事態(米中、日韓対立がもたらす株式市場の暴落)を日米との話し合いのなかで、予期していたと思われる。

だからこそ、常々「リーマンショック級が・・・」と消費税増税にたいしてコメントしていた。

欧州は合意なきブレグジットへ

ブレグジットの英国内における最大の課題はアイルランドの国境問題で、メイ首相案はEUと合意(関税同盟残留)を模索して従来通りの関税なしを追及していた。

しかし、アイルランド問題のためにEUに多額の拠出を続けることは実質的なEU残留であるとして、保守派(離脱派)が反対してまとまらない。

だが3年間の交渉期間中に米中対立の影響で中国経済・ドイツ経済が失速し、EUの経済状況が悪化してきたことで、EUとの離脱合意条件が英国に不利となったために、合意なき離脱を主張するボリス・ジョンソンが首相指名を受けた。

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ボリス・ジョンソン首相は強行する

既にEU経済はリセッションに突入していて、ドイツ銀行を筆頭に欧州系金融機関は債務問題、不良債権問題を処理出来なくなっている。

またECBのドラギ総裁はこの秋の退任にあたり金融緩和路線を確定した。つまり、欧州系金融機関の経営はますます苦境に立たされ、健全な英国系金融機関は早期離脱を望んでいる。

タックスヘイブンを手放したくないという英国の思惑も、正当化されつつある状況になったことも受けて、ボリス・ジョンソン首相はEU離脱を10月末付けで強行すると思われる。

結果としてEU経済は、中国という成長エンジンを失い、極めて厳しい状況に置かれることになるのは明白だ。

世界経済悪化に翻弄される第三国

米国・中国・日本という世界のGDPワン・ツー・スリーが、貿易戦争の只中にあっては、そしてEUという経済圏の経済が減速の只中にあればなおのこと、第三国・新興国経済は翻弄されることになるのは不可避だ。

北朝鮮は過去最悪の経済状態

3度の米朝会談を経ても、北朝鮮に対する国連の経済制裁、および日米の個別経済制裁は緩和されることはなかった。そして現時点での北朝鮮の主張は、(米国本土に届かない)核保有容認をトランプ大統領に求めている。

しかし安倍首相は完全な核兵器破棄を譲らず、また韓国の密輸(瀬取り)取り締まりの強化(日仏英米)が実行されているために、北朝鮮の困窮は建国以来最大級と言われている。

そうした状況の中で韓国文在寅大統領が5日「半島統一で日本に対抗」と始めて公式に発言した。

金正恩は半島統一で再び「中国の柵封国家に戻るか否かの選択」を迫られて、自国の存在感をアピールするためにミサイル発射を繰り返している。

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疲弊するイラン経済

米国の核合意離脱以降、大幅に経済制裁が強化され、原油が売れなくなったイラン経済は破綻の淵に立たされている。唯一のよりどころが中国であって、ホルムズ海峡の閉鎖は自国のクビを締めることになる。

昨年発生した未曾有の大洪水の影響で国民生活は疲弊し急激なインフレが蔓延していることから、革命防衛隊による軍事国家化が懸念されている。イラン経済は米中対立激化で破綻の可能性が濃厚だ。

忘れた頃にやってきたリーマンショック級

安倍首相は「リーマンショック級なら消費税増税凍結」と言い続けてきたが、G20大阪サミットの直前にこの秋からの増税を閣議決定した。

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しかし、その日本の消費税増税を遅れてきたリーマンショック級が襲う可能性が濃厚になってきた。日米の共同作戦である程度予期していたとはいえ、閣議決定したものを覆すのは秋の臨時国会で法改正をするしか手段がない。

だが、安倍首相は「全品目軽減税率適用」を最終手段として考えていると思われる。

10月には世界195カ国を招待したうえで「令和天皇の即位の礼」が開催されるが・・・。

日米共同作戦の結末

トランプ大統領は中国に対する覇権国家抑止の手綱を緩めることは決してない。

かつて世界は共産主義と資本主義に分断されていたが、ソ連の崩壊によって冷戦構造は終結した。しかし、中国がかつてのソ連を凌駕するほどの経済大国になり、さらに領土拡大や人権・宗教弾圧を志向しているとなれば、そこで闘うのが米国だのである。

同時に日本は米国と共同歩調を取ることを選択している。だからこそ、日米共同作戦で中国に対峙する道を選んでいる。

日米が反共路線で協調するのであれば、反日・抗日を鮮明に打ち出した文在寅大統領の韓国との対立は避けられない。

いよいよ日本は反共の矢面に立つ時代を迎えることになる。

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