ソフトバンクG(孫マジック)へ懸念:宝くじに2度目はない!

ソフトバンクG(孫マジック)へ懸念:宝くじに2度目はない!

過去のブログを振り返ると、ソフトバンクGに懸念を抱き始めたのは、2016年度の決算でスプリントのV字回復を誇らしげに孫会長が解説していた頃だったと思う。以来、現在のソフトバンクGの経営形態になった今日でも、一貫して9984ソフトバンクGは、売り目線で見てきた。

詳細は書けないが、現在のソフトバンクGの経営を支えることになったアリババの出資も、リアルタイムで知る一人として、アリババの米国上場のカラクリに気付いた時、正直「こんな上場が許されるのか?」と大いに米国の拝金主義に失望したことも記憶にある。

以来、(自分自身)どん底で泥水を啜るような生活をしていても、ソフトバンクGの経営は見続けていた。そして今年の4月に本ブログに移行してからも、5月にはソフトバンクGに対する評価の概要記事を書いている。

ソフトバンクG懸念の高まり

孫会長はいままで二度のビッグチャンスを掴み、ソフトバンク帝国を築き上げてきた。一つは言うまでもなくYAHOOへの出資で、この成功でソフトバンクの経営が財務も含めて軌道に乗ったと言える。そしてもう一つがアリババへの出資だった。

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実はソフトバンクが最初にアリババに触手を伸ばしたのは、2002年前後だったと記憶している。と言っても孫会長の直感で当時ほとんど売上のなかったベンチャー起業家のジャック・マーと数回会談して決めたと聞いたことがある。

孫会長は日本では傑出した企業家であり、投資家であることは間違いない。そのソフトバンクGがここにきて行き詰まったと多くの投資家が懸念していることが、指摘されるようになった。きっかけはWeWorkの上場失敗にあったわけだ。

懸念の本質

実際、孫会長の投資手法は、常に有望と思われる未上場企業に小額出資をして、上場することで大きな利益を得るというもの。これは既に大企業になっていた1990年代の米国メモリーメーカーであるキングストン投資の失敗から学んだのではないか?と思う。

事業の未来を予測して投資することへのリスクは、孫会長と言えども抗えない。ならば、上場ゴールを狙う。そしてあわよくばアリババのような大化けを狙う。それが孫会長の投資手法だった。

しかし、孫会長はボーダフォン買収で2度目の失敗に直面した時、自ら経営に関与することで立て直した実績がある。だからこそ、スプリント買収に躊躇いはなかったのだろう。そして、買収したスプリントの財務状況の悪さを実質的な債務飛ばし(関連会社が莫大な金額で一部資産を買い取り、スプリントにリースバックする手法)で、V字回復を演出してしまった。

このときに、直感でソフトバンクGの将来に暗雲、と思い始めた。

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その意味では孫会長が全部で20億円をアリババに投資し、数年かけて米国上場の下準備(有望企業であると思わせるビジネスのドレッシング)を行って、経営権のない持ち株会社という形式で上場を果たし、さらに中国共産党の優遇で巨大化して持ち株を20兆円にしたというのは、(通常では)あり得ない軌跡だ。

そうなったことで、孫会長は莫大な資産を作り上げてしまい、それが現在のソフトバンクGの経営基盤となっているのは言うまでもない。

庶民の夢であるジャンボ宝くじ。今の孫会長のSVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)は、幸運にも10億円を当選させ生活が一変した男が、再度の当選を狙ってるようなものだ。

孫会長のその発想や思考が、現在のソフトバンクGの懸念の本質だと思う。

未上場企業への投資失敗

とは言え、現在指摘されている懸念は2つある。一つは上場させたウーバー、スラック・テクノロジーの株価がダダ下がりとなっていることやWeWorkに至っては、孫会長が企業価値5兆円と主張したにも関わらず、経営陣を始め数々の問題点が指摘され、遂には上場を断念せざるを得ない結果になってしまったこと。

しかもWeWorkに関しては、SVFから上場前に約1兆円の投資をして、今回経営再建のためにさらに約1兆円を追加投資せざるを得ない状況に追い込まれた。そしてその追加投資については、SVFではなくソフトバンクGから行われることに対する不信感も噴出している。

そもそも、大都市圏の不動産価格の値上がりから、所有または賃貸が(高額なため)難しくなった企業に対し、シェア・オフィスを提供するという極めてマイナーなビジネスモデルが5兆円の価値などあろうはずがない。

しかし、そうした素朴なビジネスモデルへの疑問を封じ込めるのが「孫マジック」と言えるもの。企業が大きな資金を集めてしまえば、後はどうにでもなる、という孫会長流の経営に対し、投資家はNOと言ったわけだ。

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なぜ、WeWorkで孫マジックが通用しなかったか?と言えば、その原因は明らかにSVF2の失敗にある。SVFの10兆円ファンドは、自己投資も含めて何とか10兆円の出資を確保できたソフトバンクGだが、6月にぶち上げたSVF2は自己投資資金意外に未だに資金は全く集まっていないし、その自己投資資金も、社員からのもの(銀行融資によって資金を借りさせ投資させた)が約2兆円と発表して物議をかもした。

要するにファンドの組成資金を集められない孫会長に対し、投資家の信頼感が剥落してしまった結果なのだ。

アリババの行方

ソフトバンクGの経営の屋台骨を支えているのは、所有するアリババ株の資産価値である。これは8月時点で11.3兆円の価値があるとされ、次にソフトバンク株が4.7兆円、スプリント株が2.9兆円である。その他の持ち分を合計するならば、ソフトバンクGは約20兆円の資産を所有していることになる。

一方、借入総債務は約15兆円で、現時点(10月29日)でのソフトバンクGの時価総額が8.5兆円であることから、孫会長は常に「評価不足」と発言している。

しかし、こうしたソフトバンクGの性格な資産状況、債務状況を把握するのは不可能なことだ。ソフトバンクGはアリババ株、ソフトバンク株を担保に借り入れを行っていて、さらに持ち株をどうしているのかが表面にまったく出てこないわけで、正確な内情は当事者以外には分からないだろう。

なので、ソフトバンクGを評価する手段は、孫会長やファンドに対する漠然とした評価以外にない。仮にWeWorkが孫会長の言うとおり時価総額5兆円で上場を果たしたとすれば、持ち株資産はたちまち25兆円と化ける。これを繰り返すことで、孫会長はソフトバンクGを巨大企業にする思惑だった。

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ところが、米国の対中政策によってアリババに異変が起きつつある。既にアリババは米国での資金調達が不可能になっていて、香港上場も民主化デモにより断念せざるを得なくなった。会長のジャック・マーは共産党員であることを暴露された挙句に今年9月に退任した。

そして、中国経済の不振によってアリババの業績懸念も噴出し始めているが、もっとも肝心なことはアリババが中国共産党の方針に従って未曾有の管理社会実現に協力していることが、米国で大きな問題になっていることだ。

アリババは個人の信用スコアを収拾し、中国共産党へ供与している。そのことを、米国は「人権弾圧の管理社会化」とみなしている。そうなると、アリババの創業当時から協力関係にあったソフトバンクGへの投資家の見方も大きく変化するのは当然の流れだ。

米国は明らかに中国企業の米国上場廃止を検討している。そのことがソフトバンクGやSVFに対する大きな懸念になるだろう。

孫会長の行き詰まり

さらに孫会長はSVFによってDiDi(ウーバー同様の配車アプリ企業)をはじめとする多くの中国系企業に対し投資しているが、現時点で中国企業の米国上場はあり得ず、また香港上場も厳しい状況になっていることも、SVFへの信用を大きく毀損している。

ソフトバンクGの利益を支えているのは、投資先の資産評価であり、それをWeWorkで大きく裏切ることになった。

さらには国税庁も海外持ち株会社を使った損失で利益相殺する孫マジックに対してもNOと付きつけようとしている。

こうした数々の懸念を、ソフトバンクGと孫会長がどう決算してくるのか、世界中の投資家が注目してる2020年3月期の中間決算発表は、11月6日である。

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