9984 ソフトバンクG 巨大なマッチポンプ企業

9984 ソフトバンクG 巨大なマッチポンプ企業

2019年5月9日、SBG(ソフトバンクグループ)の2019年3月期決算が発表されました。発表内容は営業利益が81%増という大幅な増益となり、純利益は1兆4千億円を突破するという表面上は見事なものでした。

ところが株価は地合い悪の影響もあるでしょうが、大きく売られてしまいました。

孫会長の不満

孫会長はここ数年、事あるごとに自社の株価の評価不足を訴えていました。同社株価はこの数年は慢性的にPER一桁に定着していて、PBRは1.5前後、実質ROE18%前後と一見すると非常に割安水準です。

事実、国内のアナリストの評価は常に高く、(個人投資家の)様々な疑問を跳ね返す形を取ってきました。

しかし株価は一向にPER10水準を突破する気配がなかったわけです。

投資ファンドへ業態転換?

そもそもソフトバンクはソフトウエアの卸業からスタートし、株式上場や投資によって拡大してきた企業です。その事業は常に自ら技術開発を行ったものではなく、先端企業への投資や買収によって時代とともに成長してきた、言わば投資ファンドです。

キングストン、YAHOO、ボーダフォン、アリババ、スプリント、アーム、そしてSVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)と事業の中核を構成するのは常に投資、あるいは買収した事業です。

となると、SBGをトヨタやソニーと同格の企業と見る投資家は、少なくとも海外にはいません。

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比較的投資に成功したファンドの一つ

ソフトバンクは過去10年で他のファンドが苦戦する中、比較的投資に成功したファンドのひとつ、という評価です。しかし、世界の主要な投資家から見ると、いかにもその事業経緯が中途半端なのですね。

事業の方向性が常に変わるファンド

そんな評価です。つまり、厳密に投資ファンドという見方をすれば、事業経営のウエイトが高過ぎ、資金調達の方法もおおよそファンドらしくない銀行借り入れや社債の発行を定期的に繰り返す手法を取っていることが疑問なのでしょう。

事業会社と見れば、成功と言えるのはYAHOO JAPANとボーダフォン(現ソフトバンク)であり、スプリント、アームは成功とは言えない状況です。そしてそれら一連の事業を支えているのは、アリババ株の莫大な含み益であることは言うまでもありません。

2019年の株価の推移

今年になって「評価不足」というSBGに突如買いが入ってきました。後に米系投資ファンドによる買いと判明したわけですが、割安と言う割には株価は伸びませんでした。そして、今回の2019年3月期決算で再び売られました。

この経緯を見ていると、9日の決算発表を受けて10日から¥10,000割れまでの下落が、投資家の評価であると言えるかもしれません。

現時点での株価では実績ベースでPER8台の水準になります。

これを孫会長は「いまだに評価不足」と考えているでしょう。同社は6月27日に株式の2分割を発表しています。

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投資家の疑問

 

SBGには、いまだに多くの疑問が解消されないまま残っています。最近未来を語ることが多くなった孫会長の言動も何か理由があるのかもしれません。

純利益は含み益

SBGの決算で2.35兆円の営業利益、そして1.45兆円の純利益のうちの6割近くがSVFの含み益(株式評価益)です。そもそも、投資して上場をしていない企業の株式評価に疑問を感じる投資家がいて当然です。

世界的にSBGの投資は高すぎる、という評価ですし、また本質的に含み益=純利益と投資ファンドが理解されることはありません。

スプリントがTモバイルと合併できない理由

米国では常にスプリントの財務状況が疑問視されています。2016年の電波オークションに参加しなかったことや、スプリントの再生に疑問があること、さらには巨額な設備投資に耐えうる体力もないのでは?という懸念もあります。

米国司法省がTモバイルとの合併を承認しない理由は、Tモバイルの本社のドイツがファーウェイ排除に同意しないと言う状況や、スプリントの通信設備の多くがファーウェイ製であることも要因とされています。

しかしその経緯をSBGは開示していません。

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SVFの内容が開示されない

10兆円ファンドということで、大風呂敷を広げた孫会長ですが、このファンドの出資の6割以上がサウジ系のオイルマネーで、海外投資家は常に地政学リスクを意識せざるを得ないわけです。そして、トルコのカショギ氏殺害事件では、SVF最大の出資者であるサウジ皇太子の関係性が取り沙汰されました。

しかし、最も重要なことは、このファンドの契約内容が開示されていないと言うことです。確かに評価益をもって純利益に計上しているものの、配当や金利やその他の条件を開示せず、また決算計上もしていないことを、投資家は問題視しています。

アリババとの関係

アリババは中国共産党系の企業であり、ジャック・マー会長は中国共産党員であることを人民日報が伝えました。つまり、急速に発展を遂げているアリババですが、投資をした孫会長との関係が懸念されています。

またアリババの米国市場上場の経緯も、当時民主党政権下で実に有り得ないものでした。考えられないことですが、米国に上場しているアリババに経営実権がないのです。実際の支配権は中国本土のありながらホールディングの形式をとって米国上場を果たす、という極めて不自然な上場をアドバイスしたのが、孫会長と言われています。

SBGは巨大なマッチポンプ企業

SBGは投資ファンドですから、自社の投資物件や事業を投資家に対して訴求をして、資金を集め投資して、配当をし、さらに資金を集めると言う、マッチポンプ事業です。

マッチポンプの意味

マッチポンプとは「自らが引き起こした要因によって商売をする」という意味です。つまり日本語では「自作自演」という言葉に近いわけですが、まさにSBGの事業というのは、そうした自作自演の繰り返しによってのみ成り立つマッチポンプ企業と言えると思います。

そうした事業の本質を考えれば、おのずとSBGの見方がわかってくるのかもしれません。

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ハイリスク・ハイリターンファンド

SBGは純然たる投資ファンド化のためにソフトバンクを親子上場させ、さらにそのソフトバンクとYAHOOの合併を行いました。つまりその時点でSBGは事業会社ではないのです。

しかるに、依然としてSBGは大量の社債を発行し、株式の上場益と合わせて14兆円~20兆円に上る有利子負債返済と社債償還しながら、非常に危うい財務状況を解消できずにいます。

この状況ではいくらSVFによる利益計上をしたところで状況は好転しないでしょう。出来る手段は何でも使って資金調達するという姿勢は、ハイリスク・ハイリターンファンドと見られても仕方ないでしょう。

まとめ

SBGの孫会長は名経営者であることは間違いありません。ここまでのマネージメントを出来るトップは今の状況では見当たりません。しかし、SBGのベースは持ち株企業の含み益であり、それを考えると依然として財務は厳しい状況と言わざるを得ません。

従って仮にリーマンショック級の経済危機、金融危機に見舞われた場合、相当の窮地に陥ることは否定できないですね。

個人的にはこの投資モデルを維持するのは極めて困難と判断しています。

(記事の内容は個人的意見であって、風説の流布等が目的ではありません)

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