米国株式市場上昇:中治りか?金融緩和相場に回帰の様相
- 2019.11.05
- 海外情勢
4日、米国ダウが$27,462で大引となり、引け値ベースで史上最高値を更新した。高値は$27,517まであって、これは7月17日の$27,398を$119ブレイクだ。
経済が減速する中で、株価だけが上昇すると言う所謂「不況下の株高」現象であって、何が何でも株高を演出すると言うトランプ大統領の執念か、ウクライナゲートでトランプ窮地に対する最後の上昇なのか、理由は定かではないが・・・。
だが、個人的には死ぬ前に一時的に回復する「中治り」に近い状態のような気がするが・・・。
米国経済成長鈍化
先週末の10月雇用統計は12.8万人増と2018年平均の半分程度であって、既に米国経済は、雇用統計をベースと見ると完全に頭打ちとなっている。
現在の数字はほぼ完全雇用と言える水準で、ここからさらに経済成長を裏付けるものは、賃金の上昇、物価の上昇しかない。
しかし、10月の平均時給は前年比0.2%上昇程度であって、トランプ政策で著しく移民を抑制しての数字という意味では、堅調とは程遠い。
また製造業の沈下は止まらず、10月PMI(製造業購買担当者景気指数)は51.3、ISM製造業景況指数は48.3と低迷を続けいる。さらに個人消費は完全に頭打ちとなっていて、これがFRB利下げの心理的効果で年末商戦を盛り上げるかどうかは分からない。
FRB利下げの意味
FRBは7月、9月、10月とFOMCで3回連続で利下げを行ったが、これはトランプ大統領のFRB攻撃に呼応したものではない。FRBが利下げを行うには、それなりの理由があってのことであり、それが逆イールドの解消であったことは明らかだ。
逆イールドの解消
FRBは逆イールドの要因を、短期債券市場におけるドル資金不足にあると考えている。つまり、逆イールドの発生期間は短期債から長期債への資金シフトが継続的に行われていることを意味し、現実にその結果米国債10年物金利はこの1年で1.5%以上下落した。
そうなると、米国経済は常に短期債、ジャンク債、CLO等デリバティブの暴落の危機に晒される。ちょっとしたきっかけで、短期債券市場に異常をきたせば、即金融危機と言われるほど、投資資金量は増大しているわけだ。
短期債券市場の安定化
同時に10月頭にレポ市場(債券担保の銀行間市場)で、金利が突如として10%に跳ね上がる事件が発生した。
きっかけはJPモルガンのバランスシート変更と言われるが、FRBはこの急激な変動に対し、毎月6兆円の資金供給を行って、流動性を確保した。
FRBはこうした逆イールドが要因となる債券市場での乗り換え(短期債から長期債へ)に対し、事故防止のために流動性確保を強いられた格好で、こうしたことはすべて逆イールドの弊害である。
ドル不足の緩和
米銀の業績は米中対立やブレグジットによって生じたドル・プレミアムによって、大きく改善している。
しかし、これはトランプ政権の政策的な影響が強いため、エスカレートすれば、財務内容に不安を抱える欧州系金融機関や、国防権限法で著しく制限されつつある中国系金融機関の破綻等によって引き起こされる金融パニックの可能性が高まるため、その対策という意味合いもある。
個人消費の下支え
米国の個人消費は、積み上がった個人ファイナンスの上に成り立っている。
いま、米国の消費者は、借金をして消費をするという消費サイクルになっていて、好景気はこれを肯定するが、景気減速となればエスカレートした部門から破綻をきたしかねない。
個人消費の比率が高い経済では、好景気ではファイナンスが拡大し、不況では(ファイナンスが)減少することで景気循環となるために、FRBは利下げをするのが妥当と判断した。
バブル最終段階へ突入?
FRBが利下げを行い、また債券市場に対し資金供給し、ある意味で量的緩和に舵を切ったことで、米国の投資資金はリスクオンの状態に突入してしまったと言えそうだ。
債券市場のリスクが軽減されたならば、大量の資金が株式市場に流入すると言う道理である。
ここでも「金融政策の変わり目が相場の変わり目」という、(個人的な)師匠の教えが生きていることになった。
つまり、ある一定比率以上のリスク資金は常に存在し、それが地合いによって株式と債券の間で行き来することで、株価は形成されるという、単純だが否定しえない原則の通りに、株式市場は動いていると言うことになる。
既に11年以上、下げることなく続いている株式市場の上昇は、再び金融緩和バブル路線へと回帰したのかもしれない。ただし、トランプ弾劾の行方には要注意である。
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