新型肺炎は蟻の一穴:日本株を読め!【2.3~2.7】
- 2020.02.01
- トレード予想
1月31日(金)日経平均株価 ¥23,205(前週予想¥23,200) 日経平均CFD ¥22,712
日米市場現状
週末の日米株式市場は先週に引き続き新型肺炎に翻弄されるハイボラ相場になった。先週末の時点では、新型肺炎の感染者数は約1000人、死者は41名だったが、今週末は(現時点:1日14:00)感染者数11,374名、死者数は259名と感染者数で11倍強、死者数で6倍強という急激な伸びを示した。
30日になりWHOは「緊急事態宣言」を行ったが、実質的な規制や提言はまったく行わず、このことが米国株式市場の30日の急上昇(日本市場は31日)と31日の大幅下落というハイボラをもたらす結果になった。
日米市場ともに新型肺炎に対する警戒感が増大したことは言うまでもないが、その根本にあるのは中国経済への懸念である。1月24日から中国では春節に突入しているが、既にこのときには新型肺炎に対する懸念が増大していたわけで、延べ30億人の中国国民が大移動すると言われている春節の影響は避けられないとこは事前に予想されていた。
しかし、習近平国家主席は、急激に悪化する国内経済への影響を最優先し、WHOに圧力をかけて「緊急事態宣言」を見遅らせたことが、完全に裏目に出た形となった。僅か1週間で感染者数が10倍以上になるということは、来週末には10万人となることを意味する。現在有効な対策が見当たらないわけで、これは極めて合理的な予測となるだろう。
それは今週半ばの時点で、米英研究者グループが発表した2月10日までに感染者数19万人~25万人という予測が現実となることを意味する。しかし、現時点での発表値が(感染者数11,374名)が、実態の10分の1程度であるとの意見が中国国内からも多数出ていることを考慮すると、新型肺炎の規模は世界的なパンデミックの入り口にある可能性が高くなる。
戦後の株式市場では、伝染病の蔓延による下落を経験していない。今回の場合、中国という14億を超える大国での歯止めがかからない蔓延という激震に直面している。中国はGDP世界第2位の大国である。
中国と言う大国は、もっと言えば過剰流動性による世界経済の好調は新型肺炎という「蟻の一穴」によって崩れさるのかもしれない。
米国ダウ日足チャート・テクニカル
新型肺炎の影響は、米国に対して直接的な被害をもたらすものではない、という楽観的な見方が週前半には支配的であった。そのために週明けの月曜の下げを戻す形で推移し、30日のWHOの「緊急事態宣言」において「入出国および貿易を制限しない」という内容を好感する形で大きく戻したことが、完全に裏目に出た形となった。
30日の引け値は$28,859でありこれは5日線、25日線をブレイクして短期のDCを回避するかに見えた。そもそもWHOの緊急会議の終了が(日本時間で31日の午前4時前)と長引き、その結果の内容が極めて曖昧なものになったことで、米国市場は状況を冷静に吟味する時間がなかった。
そうした情報によってAIが上昇(買い)と判断すると、新たな情報が出ない限りそのまま大引けに至ってしまう。そうしたザラバ中の動きに対し、翌日は現実を冷静に検討する時間もあり、投資家は「新型肺炎を客観的にみると明らかな世界経済のリスク」と認めざるを得なかったわけだ。
それに加えて冴えない経済指数や、週明けの上海市場に対する懸念が、株価下落を加速した。結果的に米国ダウは▲$603という大幅な下落となり、加えて米国債10年物金利は1.509P、WTI原油先物は$51.62、半導体指数(SOX)はマイナス3.55%とそれぞれ大幅な下落となり、VIX指数は19.99まで跳ね上がった。
来週、米国ダウは75日線を下回ることが濃厚であってそれが下髭で戻るようであれば、目先の底打ち感が出てくるだろう。しかし、週後半はさらに新型肺炎の感染者数が増えることが予想されること、中国上海市場に当局の規制が入る可能性等も考慮すれば、来週以降、最終的には200日線(水色)までの深い調整もあり得るかもしれない。
日経平均日足チャート・テクニカル
日経平均は1月27日(月)に▲¥483、1月30日(木)に▲¥401という大幅下落となり、特に30日の大陰線は前日の75日線回復からの大陰線であり、これでほぼ下落トレンド入りを確定付けることになった。従って31日の米国ダウ上昇を受けた△¥227の上昇でさえ、5日線に戻される結果となり、トレンドを変えられなかったことが非常に痛い。
この時点で、日本市場の需給は悪化したままであり、戻り売り圧力は相当に強いと判断できる。そこに昨夜の米国ダウの▲$603が直撃したのだから堪らない。
そもそも今回の3Q決算は、日本企業にとっては鬼門となっている。それは、3Q決算の数字が良好で本来上昇要因となるべきものも、現状の新型肺炎蔓延の状況を加味すれば、通期、そして来季を楽観できなくなる。従って「好業績=買い」が通用しないことが非常に厳しいし、たとえ買われても上昇は続かないだろう。
今回の3Q決算において、主力各社は新型肺炎の影響を加味する時間はほぼなかったと見てもいい。ということは、今後通期決算の下方修正絡み、そして来季予想の悪化を織り込む必要がある相場になると言うことだろう。
CME日経先物チャート
実際昨夜の米国ダウ大幅下落を受けたCME日経平均先物は、75日線を大きく割り込み、200日線との中間に位置している。そしてその状況で週明けの中国上海市場を迎えることになるのだ。
既に中国上海市場の暴落は決定的となっていて、場合によっては中国当局の規制もあり得る場面であり、その状況で日本市場が反転する可能性は極めて低い。となると、近々日経平均株価の200日線タッチが現実的になってくる。
200日線の水準は¥22,000近辺であって、それは昨年8月以降の海外勢の買いを全否定するに等しいのだ。連日日銀はETF買いを実施するだろうけど、週末に向かっての新型肺炎の拡大圧力に対抗できるかどうかは甚だ疑問である。
ドル円5年チャート
ドル円は長期レジストラインを跳ね返すことができず、結局5年間継続する三角持ち合いでの動きとなった。日経平均の下落トレンド入りの根拠の一つが、このドル円の動きであることは言うまでもないが、今回の新型肺炎騒動によって、人民元の暴落は回避できない状況になってきていて、今後、ドル買い、円買いが加速すると思われる。
つまりドル円はドル買いと円買いのバランシングによって決まるのであるが、当面は海外に利益留保金を多く持つ日本企業の円買いが旺盛になる可能性が非常に高くなっている。
なので、ジワジワと下値のレジストラインである¥105.00近辺までは下落余地十分であると見る。しかし、すでに長期移動平均線がいずれも下向きに転換していることを考えると、長期的には円高方向は避けられないのではないか。個人投機は東京五輪終了後の年内には¥100.00に接近する場面もあるとみているが・・・。
2月7日(金)日経平均予想
今週は日経平均予想¥23,200に対し、¥23,205と週刊予想を開始して以来の的中となった。先週末に久しぶりに体調の許す限りじっくりと状況を調査したからだと思うが、今週の予想は現時点では非常に難しい。
まずは、先週末の日本市場で先物を大幅に買い越しているのが野村であるという点で、2位のSBIの約3倍の買い越しとなっている。週初は当然ポジションを手仕舞うだろうから、日経平均の現物は厳しいと思う。
そして4日(火)の朝寄りが目先の底値のような気がするので、一旦はリバウンドするかもしれない。しかし、水曜以降の大きな値動きは望めないと思われるので、結局は週末は下げて引けるのではないかと思う。従って週末の日経平均とドル円レートは、
日経平均株価 ¥22,500 ドル円 ¥107.80
と予想する。
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