株価変動の要因を理解することが株式投資の基本

株価変動の要因を理解することが株式投資の基本

私が失意の中で縁あって証券業界に40年以上身を置いた「師匠」と呼べる方に出会い、弟子入りしてから最初に投げかけられた質問は、「株価はどうして変動すると思いますか?」でした。

「それは需要と供給で・・・」と。それまではあまり疑問に感じなかったことなので、改めて考えさせられたのです。「その辺が第一歩ですね」と師匠。今思えば必要なことだったと、改めて感じます。

株価変動の要因は一言で言えば「基本は買い注文と売り注文の差=需給」なのですが・・・。

株価変動のミクロ的要因

まずは個別株の変動要因(需給要因)を考えてみました。

企業業績の変動

企業は「生き物」と言われますが、刻々と業績には変動が生じます。企業側の発表の他にそれを取材した新聞報道やアナリストレポートなどにより株価は影響を受けます。

大きな資金(ファンドや機関投資家、大口投資家等)による売買

大きな資金が流入(または流出)すると、需給は大きな影響を受けますから変動幅も大きくなります。

具体的な大口運用者としては国内ではGPIF(年金機構)を筆頭とする年金や金融機関の資産運用、生保・損保の資金運用、そして証券の組成するファンドや独立系のファンドです。

また海外では米欧の投資銀行、欧州の政府系ファンド、欧米のファンドやヘッジファンド等莫大な資金を持つものが多数存在し、機動的な資産運用を行っています。

 

テクニカル要因

多くの投資家の投資行動は、チャートや各種株価指標によって行われています。そのために、これらテクニカル要因は株価変動の重要な要素であることは間違いありません。

また、個別株の信用取り組み(信用買い残・信用売り残)や信用期日(制度信用取引の6ヵ月の決済期限)なども、厳密にはテクニカル要因となり、株価変動に影響を与えます。

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個別IR情報

企業が個別に発表する業績や事業情報によって株価は大きく変動することになります。

上場企業は基本的に事業に対し大きな影響がある、と判断する事項に対し情報開示義務が存在します。そのため、業績は確実に開示してゆかねばなりませんが、業務提携やM&A、新技術の開発や新規事業参入、新規取引の開始等も、IR開示します。

短期的にはその内容によって株価は大きく変動します。

市場テーマ性の高い材料

株式市場では常に「テーマ」が取沙汰され、それに関連した銘柄が積極的に売買される傾向が強く、株価は変動しやすくなります。

投資家は常に「投資動機」を求めています。そして、ニュースやIR情報に反応して関連銘柄に取引が集中する傾向があり、それが市場テーマとなって横展開する傾向があります。

そうした関連銘柄は短期的に相場となる可能性が高くなります。

株価変動の特別なミクロ的要因

株価の変動は企業行動、突発的な事象にも大きく左右されることになります。

個別企業の資本政策

増資・新株予約権発行・業務提携などによる資本の持ち合い等、そしてM&Aや合併、子会社の上場等個別の資本政策によって大きく需給が変動する場合があります。

個別企業の事件・事故・不祥事

個別企業の決済トラブル、自然災害や火災、企業ぐるみの隠蔽等々、投資家の想定外の事象が起きる場合もあります。

株価変動のマクロ的要因

国内のみならず世界的な経済環境の変化によって、企業業績は様々な影響を受けることになります。株式市場はそうした経済環境の変化に敏感に反応し、全体的な値動きとなります。

為替・資源価格・金利の変動

日本市場の場合、日中のアクティブ取引の約70%が海外資本によるものと言われています。当然海外資本はドル建てで投資を考えることになりますから、為替(ドル円レート等)の影響を受けやすくなります。

また資源価格(WTI原油等)や日米金利の変動に対して敏感に株価は反応します。

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日米経済指標

株価が影響されやすいのは内需株の場合国内景気動向ですが、日本市場全体を考えると、輸出企業の比重が高いことから、特に米国の経済指標(雇用統計、CPI、ISM指数、GDP等)が株価変動要因となります。

世界主要国の金融政策

日本では日銀の金融政策、そして米国はFRB、EUはECB、中国人民銀行といった主要国の中央銀行の金融政策は、株式市場にとって大きな影響があります。

特にFRBの金利政策は、ドルが世界の基軸通貨であることから、多方面に渡って大きな影響が出ます。もちろん、為替(ドル円レート)への影響はダイレクトで、日本株は大きく反応することになりますね。

日米財政政策

日米の財政政策は日本市場に直接的な影響をもたらします。なかでも特に米国の財政政策は、日米の株式市場の連動性を考慮すると、非常に重要な株価変動の要因になります。

2018年トランプ政権は、大幅な法人税減税、個人の所得税減税を行いました。その結果米国輸出比率の高い企業は業績が向上し、現地法人の所得も増え、株価は上昇しました。

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国際的な資金動向

リーマンショック以来世界中は大幅な金融緩和となったことで、世界中には投資資金が溢れてる状況と言えます。つまりそうした投資資金がどう運用されるかで各国の株式市場は大きな影響を受けることになります。

またそうした資金の大半は債券市場に向かっているために、債券価格の動向も株式市場に少なからず影響をもたらします。

株価変動の特別なマクロ的要因

国際社会の対立や国際社会の政治・経済の枠組みの変動などによっても経済環境が大きく左右されるとされ、株式市場の変動要因になります。

国家間の対立・紛争等地政学上の問題

現時点では貿易や知的財産権、資本政策を巡る米中の対立、そして核開発に関する米朝対立、米イラン対立などがあり、それらは株式市場にとってリスクと認識されています。

国際的な政治経済上の枠組みの変化

ブレグジットは英国とEUでの対立であり、合意がなされない場合には株式市場のみならず世界経済への大きなリスクになり得ます。また、EUに関しては様々な問題(イタリア離脱問題、ドイツ銀行を筆頭とする金融問題)が内包されており、十分な注意が必要ですね。

さらに中国の一帯一路構想も経済の枠組み上の大きな変化となりえるために、さらなる広がりを見せるようであれば、世界経済に対する影響も十分に考えられます。

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AIシステムトレードによる株価の変動

ヘッジファンドや米系大手投資銀行では、巨大なネットワーク取引システムを通じて世界の株式市場で24時間取引をAIシステムによって行っています。

つまり、株価に影響があると判断される出来事が起こった場合、瞬時に世界の株式市場は同時多発的に株価変動が起こる可能性があります。

Touching stock market graph on a touch screen device.

その他の株価変動要因

株式市場全体の信用取り組み(信用買い・信用売りの比率)、裁定買残、先物取引等による短期的な地合いの変化、ヘッジファンドや投資銀行による仕掛け的な取引等による市場全体の変動によって個別株価は大きく影響を受けることになります。

特に日本株先物取引やCDS取引は基本的に24時間取引であり、夜間(日本時間)のうちにこれらの価格が大きく変動し、翌日の株式市場に返ってくるために注意しなければなりません。

まとめ

株価変動の要因は、詳細に言及すると非常に多義にわたりますが、個人投資家としてこうした要因があるということを念頭に置いておくことが重要、というのが私の師匠の教えでした。

株価は「買い手と売り手の差=需給」で変動するわけですが、その変動要因を把握することで、日々のニュースや世界の出来事に対して反応ができるようになるはずです。

株式投資の基礎知識として重要であると思い、ブログ開始にあたり掲載しました。参考にしていただければ幸いです。

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