ルノー連合:三菱自動車の復活は困難
- 2020.07.28
- 自動車
三菱自動車が2020年4月ー6月期の1Q決算で、2021年3月期の業績見通しを3600億円の大幅赤字に転落すると発表した(2020年3月期損失は258億円)。このなかで同社は4月ー6月期に1159億円の減損を計上するとし、さらに岐阜工場を閉鎖するとし、同時に今期無配も発表した。
三菱自動車は日産が34%を出資する、いわゆる日産の関連会社であって実質的な子会社と類似の関係にある。その日産は仏ルノーの出資を43%受けいれる子会社であるわけで、この3社をルノー連合と称しているわけだが世界シェアは第三位で、2020年は約1000万台の販売数量を誇る。
図体が大きくなると、経営的に非効率ばかりが目立つようになる。三菱自動車の場合、常にコンプライアンスの失態から経営三菱自動車が2020年4月ー6月期の1Q決算で、2021年3月期の業績見通しを3600億円の大幅赤字に転落すると発表した(2020年3月期損失は258億円)。このなかで同社は4月ー6月期に1159億円の減損を計上するとし、さらに岐阜工場を閉鎖するとし、同時に今期無配も発表した。
コンプライアンス欠如の自動車メーカに転落
三菱自動車は日産が34%を出資する、いわゆる日産の関連会社であって実質的な子会社と類似の関係にある。その日産は仏ルノーの出資を43%受けいれる子会社であるわけで、この3社をルノー連合と称しているわけだが世界シェアは第三位で、2020年は約1000万台の販売数量を誇る。
図体が大きくなると、経営的に非効率ばかりが目立つようになる。三菱自動車の場合、常にコンプライアンスの失態から危機を招くという体質を改善することなく、当時のカルロス・ゴーン(ルノー会長、日産社長)が、ドイツ・フォルクスワーゲンに次いでトヨタ連合を抜く世界シェア第2位の地位欲しさに苦境の三菱自動車へ出資した経緯があるわけだが、それで安心した三菱自動車側は、完全に経営体制の見直しを怠った。
三菱自動車は、2000年に23年間も隠し続けたリコールが発覚し、さらに2004年にも再度リコール隠しが発覚。前回は三菱グループと通産省の肝いりで海外投資ファンドの出資を受け、二度目は三菱グループによる6300億円の出資で生き延びた。
にもかかわらず2016年には悪質な燃費偽装が発覚し、以来同社の経営改善ははかばかしい効果は見られないまま、2020年度の赤字転落へと繋がったのは明白だ。その間にやったことといえば、車種を廃止し、人員を削減し、ただひたすらに決算に向かっての数字上の帳尻合わせ。そして今回は、そのプロセスで生じた未償却設備の減損を適当に計上したということに過ぎない。岐阜工場を停止するというが、ここはパジェロのようなSUVの専門ラインで、苦し紛れにデリカを2車種投入してお茶を濁していたはずだが・・・。
利益の出ないラインナップ
現在三菱自動車のラインアップは同社のHPによれば18車種とある。主力のSUVは、アウトランダーPHEV(プラグイン・ハイブリッド)、アウトランダー、エクリプスクロス、RVRの4車種であるけれど、プラットフォームは共通であると思われ、どれもみな同じ!
デリカD:5の2車種はほぼ同じ車で、デリカD:2が2車種がハイブリッドでi-MiEVがEV、そのほかにレシプロ乗用車は全く売れないミラージュ1車のみだ。
そしてレシプロは競合が多すぎてビジネス的に苦戦が明白な軽自動車が5車種あるのだが、ほぼ街中で見ることはない。
かつてのフルラインナップ企業が、コンプライアンスの3度の不祥事を経た今、これほどまでに惨めな自動車メーカーになってしまったのか!?とその惨状は目を覆うほど。そもそも最上位車種のアウトランダーPHEVは、赤字車種。そしてデリカD:5もまた、メルセデスと共用しようとして断られたクリーンディーゼルを搭載する三菱オリジナルエンジンで、償却負担が過大でありこれも利益は望めない。
となると、営業上では利益計上していても、設備償却を考えると万年赤字ラインナップしかないのが現状で、今回の減損などはその流れであることの証明みたいなものだ。
EV・HVは中国頼み!?
日産も同じジレンマに陥っているのだが、現時点でHVで何とか赤字を出さずに販売できているのはトヨタだけだ。それもプリウスなどは15年間もエコカー援助(赤字補填)を政府から受けてようやくカスカスで黒字化が実現したというレベル。にもかかわらず、後発の日産や他メーカーはそろってEV、HVに参入し膨大な赤字を積み上げているわけだ。
なので、商売を考えるのであれば少しでも部品単価の安い中国製で武装する以外に選択肢がない。特にモーターや電池は中国企業と提携するなり、現地に生産拠点を置くなりして中国製を使うしかないのだ。
ルノー(カルロス・ゴーン)は、フランス大統領マクロンの肝入りで中国進出を画策、中国企業とのEV技術、HV技術の提携を目論み、2018年の米中貿易戦争によって米国側から差し止められたという経緯がある。
ルノー連合の最大の課題は、EVでいち早く世界のトップとなることであって、EV大量購入を行っていた中国進出にすべてをかけていた節がある。
仮にそれが実現していたら、日産の現在の低迷は回避できたといわれていて、当然三菱自動車も大きく貢献したのかもしれないが、今となっては空しいばかりだ。逃亡したカルロス・ゴーンはレバノンで、「日産・三菱は倒産するだろう」と言っているが、その根拠はこの辺りにあると思われる。
三菱自動車の存在感?
日産自動車の経営がカルロスゴーン事件をきっかけに一気に表面化して以来、日産はルノー連合から離脱すべきという議論が盛んになされた。その際、経産省のシナリオは「三菱商事によるルノー株の10%取得」であり、同社出資によって日産のルノー持ち株比率を25%以上に高め、ルノーから離脱するというものだった。
しかし、マクロンが対中政策において米国に同調する姿勢を示したことで、米国からの圧力もあってルノー連合は維持されることになった。つまり、三菱自動車の存在は、日産にとってルノー連合離脱のために必要な存在ではあったのだが、今となっては単にお荷物以外の何物でもない。
そもそも、日産も三菱自動車も、ルノーの筆頭株主であるフランス政府の意向に逆らえるはずもないし、今回の新型コロナで大きく既存したルノーに対し、最終的には国有化方向での検討が加えられるのは必至の情勢でもある。技術のある日産の存在はともかく、その下の三菱は単に赤字拡大を増加させるだけの鬼っ子なのだ。
すでに三菱自動車は今回の決算で、小手先の言い逃れは通用しない、絶体絶命のピンチに陥っているわけだ。
必要のない自動車メーカー
今回の世界中で吹き荒れる新型コロナ不況では、自動車メーカーの再編は必須といわれている。あの米国でさえ、GMとフォードの両立はかなり困難なのではないかという議論もあるほどで、まして、日本でトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、SUBARU、三菱、鈴木、ダイハツという8社もの自動車メーカーが、そのうちフルラインメーカー6社などは当然淘汰されなければならない。
トヨタはSUBARUを吸収し、日産は三菱を傘下に置くわけだが、それでも4社のフルラインメーカーが残る。そうした状況を考えるとき、少なくとも三菱自動車のブランドは全く必要ないわけで、形はどうあれ、近い将来に消える運命としか思えない。
もはや三菱には魅力的な車を開発する力は在り様がないのだ。
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