株式市場は調整局面入り!?
- 2020.09.19
- トレード雑感
この秋相場、日米ともに株式市場は調整局面入りしたと言ってほぼ間違いないだろうと思う。日経平均は¥23,500を当面の天井として、調整幅は¥1,500~¥2,000はあるのではないか?
現時点での株価は、新型コロナ発生以降の急激な業績低迷によって、評価基準が変わりつつある。例えば、現時点での225主力株の1株当たり純資産は¥21,213であってPBRは1.09となり、これは過去5年間で最も低い水準となっている。しかし、収益性の大幅低下によって、1株当たり利益は¥1,004であり現行株価(¥23,360)はPER23.25と小型株並みになってしまった。
つまり、現行株価はPBRに照らしてみれば標準値かむしろ安いくらいの水準であると評価できるが、PERでは完全に割高ということになっているわけで、仮にこのままの水準を維持し続けるというこはつまり、日経平均はPBR評価にウエイトが高まった状況ということになる。
日本市場の重石
日経平均株価の上限は現行のファンダメンタルズでは明らかに¥23,500前後の水準。¥24,000にタッチするようなことがあっても水準を維持するためには、金融・財政政策でドラスティックな政策が行われない限り不可能だろう。その理由を冷静に考える必要がある。
円高
現在ドル円は¥104.00~¥107.00のレンジまで円高が進んでいる。これは新型コロナ感染発生前の¥110.00前後から比較して、約3%~5.5%の円高になっていて、新型コロナ下落の下限である¥102.30に迫る可能性もある。
その要因は、米国金利がFRBの債券購入プログラムといった金融政策で抑えられていること、FRBの資金供給量が増加し続けていること、財政政策でも資金供給が続いていることなどだ。そしてフォワードガイダンスによって今後3年間はゼロ金利政策を継続すると市場が解釈していることで、ドル高の要素が見いだせなくなっていることも大きな要因だ。
しかるに日銀は、すでに主要政策を出し尽くしてしまって、今後は菅内閣による財政政策に責任を転嫁している状況であって、海外投機筋等は今後も長期的にドル高・円安の局面を想定できないでいる。
しかしこの円高は、輸出企業の収益を圧迫し始めている。新型コロナ発生以降、ようやく業績回復の方向が見え始めた時期に、円高は日本市場全体の重石になっていることは明らかだろう。
米国政治情勢
11月3日が米国大統領選挙日だが、現在民主党バイデン候補が共和党トランプ大統領を大きくリードしていると報道されている。しかし現時点では株式市場はどちらの候補が当選しても政策に大差はないということで中立を決め込んでいるし、民主党の主張する経済対策規模が、トランプ政権よりもはるかに大きいことを鑑みると、むしろバイデン候補を歓迎する向きすらある。
また、対中制裁については、トランプ政権以上に議会の主張が強硬とされ、バイデン候補が当選という情勢下では同時に行われる上院の改選にも影響がでて、上下院で民主党の逆転を許すことになりかねない。
そうなると親中派と言われるバイデン大統領とて、議会の意向を尊重せざるを得なくなるだろうという予想が多数を占めている。
そうした中で雌雄を決するのは、大統領選挙までに3度行われる予定のディベートになる。仮にその場でバイデン候補の痴呆かまたはそれに準じた状況が露呈されると、一気に支持率逆転という事態もあり得る。
したがって、株式市場では大統領選挙が決するまでに、迂闊にポジションを建てられないという事情も頭を抑える要因であることは間違いない。
菅内閣の政策
恐らく海外投資家は、菅政権に対し安倍政権の政策を継承するという理解で、概ね好意的ではある。したがってデジタル庁や規制改革によるスマホ料金の引き下げといったマクロ政策に対しては、目新しさを感じていないものの、今のところは株価を売る要因とはとらえていない。
しかし、あまりに各論に偏った議論が先行し、マクロ経済目標を提示できないとなると、新型コロナで下落し、デフレ経済へと逆戻りしてしまった日本経済に対し、失望感が台頭してくるだろう。現に財政政策面で景気刺激に対し積極的でないと判断してくれば、売られることも十分にあり得るし、少なくとも投資筋の行動は、ドル売りから徐々に円買いにシフトしつつあると思われる。
したがって、日本経済は、再度デフレの悪夢を再現する可能性のある分岐点にいま、あるのではないか?
新型コロナ
現在新型コロナは、インドで爆発的な感染状況となっていて、欧州でも第二波が異常な速度で拡大しつつある。特にスペイン、フランスなどではすでに第一波を大幅に上回る感染水準に達していて、イタリア、ドイツなどでも感染拡大の傾向を示している。
日本と米国は感染傾向がほぼ同じような経路をたどっていて、第二波が収束方向へと向かいつつあるが、北半球諸国は今後冬に向かってかなり厳しい状況に追い込まれる可能性が指摘されている。
こうした状況のなかで、各国ともに経済活動の再開を継続していて、もはや新型コロナ対策で経済活動を止めるに止められないところまで、経済が弱っているというのが現実だ。
経済活動を止めてしまうと、さらなる莫大な財政支出、および金融緩和措置が必要になり、企業や生産者はどこかの時点で物価を上げる必要に駆られ、インフレ転換するのは明白だろう。
だが当面は、少なくとも効果的なワクチンが認可され量産の目途が立つまでは、新型コロナの第二波、第三波は株価の頭を抑え付けるに十分な要因となる。
感染の優等生と言われる日本にとっても、海外情勢は大きく経済や企業業績に影響してくるはずで、けっして他山の石ではない。
日経平均が上値を追うには?
恐らく菅首相が総裁就任に際してマクロ政策をはっきりと提示できていたのであれば、日経平均株価は¥24,000にタッチしていただろうし、海外投資家の日本株のウェートは高まったに違いない。しかし残念ながら菅首相にはそうした経済のマクロ感覚はほとんど期待できない。
いまだに「ふるさと納税やGOTOは私が推進した」とミクロ政策を自慢し、片や移民法改正で外国人受け入れを大幅に増やしたことや中国人入国制限を渋ったことなどは、どこ吹く風である。しかし実態は国内感染者のうち外国人比率の異常な高さや主要な感染源であることは、まったく反省の色はなし。
いまはお祭り気分に浮かれてはいるものの、徐々にそうした不都合な真実はクローズアップされるだろう。
また日銀の黒田総裁は、会見で「安倍首相とは月に2度ほど話し合っていたが、(暗にこれまで)菅首相とはコンタクトを取っていない」とほのめかした。経済の立て直しを政策目標に掲げながら、菅首相にとっては金融政策は二の次なのかもしれない。
したがって、官邸に経済に精通する有能なブレーンを配してマクロ政策を推進する姿勢を明確にすることが少なくとも日本株上昇の条件になると思う。
また円高を是正する新たな金融緩和策や、財政出動を行うことも必須で、少なくとも米ドルとの量的な均衡を¥110前後に設定することも重要だ。そうした大胆な政策を打ち出せない限り、日本市場はじり貧状況に突入するだろう。
現状では日経平均¥23,500~¥22,000のレンジ相場入りと思わざるを得ない。
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