新型コロナに勝てないムーブメント
- 2020.10.24
- トレード雑感
10月23日の米国での新型コロナ感染者数が1日としては過去最高の83,757人となった。しかも今回は、冬に向かってのコロナウイルスの増加が始まる季節での過去最高ということで、今後感染者は増加し続けるのはほぼ間違いない状況だと思う。
もちろん、米国だけでなくすでに悲惨なまでの感染拡大となっている欧州も散々な状況で、23日にドイツで1日の感染者数が22,236人と第一波の最高が7000人弱だったことを考えると、3倍以上というとんでもない感染者数になったのを筆頭に、フランスやイギリスでも第一波をはるかに上回る感染者数となって、いよいよ新型コロナはこの冬にどれだけ広がるのか分からないほどの急増となる気配だ。
新型コロナウイルスに関して、様々な情報が分かってきたことで、各国とも警戒感が薄れてきてる。しかも、経済破綻が目前に迫っていたために、コロナで死ぬか貧困で死ぬか、のような究極の選択に迫られた結果、これ以上経済を止められぬということで、感染覚悟で経済活動を再開せざるを得ないという苦しい事情だ。
そうなると、世界中いたるところで、新型コロナの感染拡大をどこまで無視できるのか?という不安にさいなまれていて、新型コロナワクチンに対する十分な安全確認の時間が確保できないほど状況は切迫しつつある。そして米国では、大統領選挙の只中にあって、新型コロナに対して楽観的な姿勢を続けている現職大統領がますます窮地に追い込まれている。
トランプ大統領は新型コロナに負ける?
今回の大統領選挙は、共和党対民主党、トランプ対バイデンの対立が焦点となっているようで、バイデン優位と報道されている実体は実はトランプ大統領の信任選挙そのものになった。反トランプを煽る左派系のメディアではなく中立的な信頼できる世論調査では、バイデン支持はバイデンの政策を支持するものではなく、トランプ大統領を信任できないという結果であるといわれている。
トランプ大統領は、新型コロナに対して最初から楽観的な姿勢を変えていない。感染予防効果は別にしても、国民のリーダーである大統領が「マスクは嫌い」といって装着しなかったり、「やがて自然に(感染は)収まる」と発言する一方で、感染拡大が収まる気配を見せなければ、トランプに対する信頼感は失われる。
米国大統領選挙史上、圧倒的な大差で2期目を勝利し絶大な人気を誇ったリチャード・ニクソンが、ウォーターゲート事件(民主党本部の盗聴)の発覚によって瞬く間に辞任に追い込まれ、悪役に転落してしまったが、トランプは新型コロナに対する発言で自らの首を絞めることになって、急激に支持を失ったのかもしれない。
トランプ大統領が、いかに雇用を増やし、経済を活性化させようと、また歴代大統領のなかで最も国際紛争を起こさなかった(米国民を死なせなかった)大統領であろうと、今回の新型コロナによってもたらされた米国労働者の経済的な不遇は深く深刻なものだということを見誤っている気がする。
もちろん、トランプの言うように新型コロナはインフルエンザと大差ないのかもしれないし、有効なワクチンも早晩開発されるだろう。経済活動を止めることで起こる悲劇は新型コロナ感染よりも深刻かもしれない。しかし現実として今横たわっているのは、トランプ発言とは裏腹な状況であることは否めない。
トランプ大統領自身とその家族、ホワイトハウスのメンバー達も感染したわけだが、深刻な状況に至らずに回復を見せた。そして自ら進んで新薬を投与し、国民に劇的なほどの回復を見せる姿を印象付けたが、第二回TV討論で楽観主義を変えなかったことが、返って逆効果になった。
トランプ大統領は明らかに新型コロナを軽視し、楽観したわけだが、今回の大統領選挙に勝利するのはバイデン候補ではなく新型コロナなのかもしれない。
中国の術中に嵌る米国?
米国は民主党バイデン候補が勝利することで、まんまと中国の術中に嵌ってしまうかもしれない。米国のみならず欧州も同様だろう。現時点で中国では新型コロナの感染報告はなく、完全に封じ込めたと発表しているが、万に一つもその可能性はなく、単に中国が感染者を発表しないかまたは感染確認をやめてしまったのだろうと思う。中国は新型コロナを単にインフルエンザ並みとして処理する道を選んだ。
しかし、世界は新型コロナが重篤な状態を引き起こす恐るべき伝染病として処理するという、ムーブメントになってしまった。
感染拡大が始まるや、都市封鎖をし、行動制限をして経済を完全に止めてしまったわけだが、その目的は感染の封じ込めにあったはずだ。一時的には成功し、経済活動の再開に漕ぎつけたが現在ではますます悪化する一方で、当然第一波よりも感染拡大が急な第二波を迎えている。その間に新型コロナの研究が進んだ結果、大幅に脅威は薄らいだのだが・・・。
しかし、米国も欧州も一度盛り上がったムーブメントを路線変更することができない。実態は経済活動を止めないのだから、新型コロナは恐れるに足りずという姿勢であるにも関わらずそれを表明することはできない。そこが中国との大きな差であり、一党独裁と民主主義の壁でもある。
いま、中国はそのような欧米の状況をじっと息をひそめて見ているだろう。そして今回の米国大統領選挙で楽観主義のトランプ大統領がバイデン候補に敗れたなら、それは中国の思うツボだろうと思う。トランプ大統領が今回敗れ、新型コロナ対策を批判したバイデン候補が勝つと、金輪際このムーブメントは覆ることはなくなってしまう。
常に欧米の経済は、新型コロナの感染状況によって制限され、対策費を湯水のごとく投入せざるを得ない。それこそが中国の術中ということだと思う。
新型コロナ感染拡大は爆発的に増加する?
過去のコロナウイルス感染症の例を見れば、第一波よりも第二波の方がはるかに感染者数は多い。今回の新型コロナも今までのところ同じような経緯をたどっていると考えるべきだ。インフルエンザは秋から翌春先まで猛威を振るい、そして春から初秋にかけて沈静化し、そして初冬から第二波でいよいよ本格化する。現時点で欧米の感染者数の急増はこのパターンを踏襲すると考えられる。
だが、残念なことに、欧米も日本も第一波をはるかに凌駕する第二波が到来したときの政治的方針はまったく決まっていない。新型コロナウイルスのムーブメントが変わらないとすれば、爆発的な拡大となった場合に現状のまま経済活動を継続するという選択肢が果たして可能か?と言えば、恐らく難しいだろう。
世論はより強力な対策を政府に望むだろうし、特にバイデンが勝った米国では感染抑制のために最大限の政策を行わないわけには行かないのだ。PCR検査をより増やすだろうし、行動はより厳格に制限されるだろう。そうなれば、このムーブメントが続く限り、実体経済がコロナ以前に回帰することはあり得ないのではないか?
そして米国の財政負担は厳しくなる一方であり、当面は行わないとした大幅増税をバイデンは早期に実行せざるを得なくなるのではないか?その結果ますますドル安が進行するだろうし、ユーロも同様な事態になる可能性が高い。すでにFRBは金融政策はやれるところまでやった、後は財政政策しかない、として実質的にさじを投げている状況で、ECBもEU全体の強調した金融政策を早晩放棄せざるを得なくなりそうだ。
株式市場は臨界点を迎えつつある?
世界の株式市場は3月末で底を打ち、4月から明らかにV字回復となって現時点ではおおむね新型コロナ以前の水準を回復した。しかし、明らかに期待先行であってその前提は間もなく新型コロナは収束へと向かい、経済は新型コロナ以前の状態に回復するというものだった。また急ピッチで開発されつつある新型コロナワクチンの登場で、この感染症は克服されるとつい数か月前には考えられていた。
だが、ここにきてそれらの前提は成立しないことが、徐々に明確になってきた。もしも当初の期待値通りであるなら今回の大統領選挙でトランプは負けることはないはずだ。しかし、9月あたりから米国の株式市場はバイデン勝利を徐々に織り込み始めたといわれている。
冷静に考えるなら、そもそもバイデン優勢となること自体、当初の予想から遠ざかっているという意味なのだ。さらに現在の株価を維持するためには、大幅なEPSの増加が不可欠なのだが、いまだ道半ばで再度感染が急拡大となったならば、投資家はどのような行動に出るだろう。
先週の22日(木)23日(金)と日本の小型株が暴落し、マザーズはサーキットブレーカ発動に追い込まれた。東証マザーズと言えば(新型コロナ後)世界で最もハイパフォーマンスとなった株式指標と海外勢は評価していたわけだが、それが俄然売りモードに突入した。
この下落要因は個人投資家が投げたから、という単純なものではないと思う。少し詳細にみると、22日(木)の暴落模様で追証に追い込まれた個人投資家が、翌23日(金)に回避売りを余儀なくされたという解説がなされている。その根拠は23日(金)後場の買戻しに有るというが・・・。
世界の新型コロナ拡大の現状を見れば、そのような局所的な事象ではないかもしれない。まずはハイパフォーマンスの市場を整理するというのは海外勢の常道であって、過去に幾度となく繰り返されてきた投資行動だ。
そう考えると今回の2Q決算に対して割高が際立ってきたという判断か、または決算にかかわらず株式に対する懸念の増大を反映したものかのどちらか、または両方だろうと思う。そして仮に後者の懸念が強ければ強いほど、徐々にその傾向は大型株に波及するのではないかと思う。
問題は株式市場がどこまで新型コロナの感染急増を容認できるか?ということだが・・・徐々に臨界点に接近していると考える。
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