ロスカットにルールなんかない!:株式投資術
- 2020.10.31
- トレード雑感
よく「ロスカット(損切)しない投資家は成功しない、勝ち組になれない」という言葉を読んだり聞いたりするけどね。俺としてはそうなのかなぁ?という漠然とした感覚しかないんだけど、ロスカットばかりしてると資金はそのたびにマイナスするわけで、嫌な感じの心理状態にどんどん陥ってゆくことの方が問題と言えば問題じゃないか?
株を持つこと自体、心理的な不安のなかに身を投じるようなもの。しかも、株式投資の状況(地合い)はコロコロと変わってゆく。そのたびに一喜一憂しなきゃならないのが短期投資スタイルなんだが、それでも常に冷静さをできるだけ保つことが間違いをしでかさない唯一の道だと思う。
長期投資家は、株価を忘れて普通に普通の生活をしていればよいわけだけど、短期投資家は、特に俺みたいにデイトレもやってワンナイトもやってスイングもやる、みたいないい加減な投資家は、どうしても地合いに敏感にならざるを得ないし、そのボラティリティが飯の種なわけだから、いつも気持ちは滅茶滅茶揺れてるのよ。
けれど、そんな中でも冷静な時と熱くなってしまった時では、投資行動が全然違ってくるからなぁ。なので、マイナス(含み損)を抱えたままにしておくのは、精神衛生上良くないと思ってる。そこで、自分の感覚でヤバイと思った時に、かなり適当にロスカットするし、そんなときには必ず反対売買をしてロスカット分を埋めにかかるのよ。相場の動きは慣性の法則があるから、結構有効な戦略だと思ってる。
ロスカットをルールでやる?
短期の投資家なら5%とか、結構持つ人でも10%とか、ルール決めをしてロスカットをする、というのが相場の常識みたいに言われると、素人の俺でさえ、「このド素人がっ!」って憤るよ。だいたい、ルールを決めないと株式投資ができないようならやっても無駄だと思うね。
大きな銘柄ならば10%なんて簡単にはブレないし、信用でやってると5%だって大損なんてこともあるよね。第一、短期投資家が信用で5%のロスカットラインなんてあり得ないわ!そんなの儲かる前に破産するわ!
そもそもロスカットって、その銘柄の株価の位置、地合い、状況の変化、情報やニュース等々いろいろな条件を投資する前に理解していると結構判断が付くもの。買い方の場合、買い理由というのがポジティブニュースや業績の推移、株価の現状評価(まだ低い)ということを前提している。つまり上がることしか買うときに想定していないわけだよ。ところが企業なんてものは、いいニュースもあれば悪いニュースもある。その双方が均衡している点が株価だっていうことを忘れちゃうんだよ。
なので、上がると思い込むから下がったときの判断ができないんだよね。もちろん空売りの場合はその逆というのもあるけれど、基本的に株式の売買システム上では空売りは不利だけどね。だから株価均衡の崩れの問題をルール決めしないと処理できないのなら、株式投資自体がかなり危険な行為だと思う。
俺のロスカット例(7270 SUBARU)
このところ、俺自身が何度もロスカットを強いられてる銘柄が、言うまでもなく7270 SUBARUなんで、その理由を分析してみたんだ(こう見えても結構失敗した投資行動は必ず分析しているのよ)。昨日(10月30日)の後場にも必死になって約50万ほどをぶったぎったわけ。その投資を振り返ることにする。
買いの背景
このところ米国ダウは大幅に調整していてそれは取りも直さずトランプ政権とペロシ下院議長との追加景気対策に対して交渉が上手くいかなかったためだ。これが大統領選挙前に合意しておかないと、もしも選挙で揉めたとき、最悪は年越しなんてこともあり得るわけで、ここまで順調に回復してきた米国経済の腰を折る結果になりかねないという懸念だよ。そこに新型コロナの感染拡大が懸念に拍車をかけた格好になった。
そんななかで、下馬評では民主党バイデン圧勝となってるけれど、投資家にはなかなか楽観できない雰囲気も出てきてる。つまり実体的には現状トランプ大統領はバイデン候補に迫ってきてるという感覚がポジションに対する不安を掻き立てたんだね。
つまり最近までは米国投資家は景気対策は10月中に合意して、バイデンが大統領になり、下院はもちろん上院も民主党多数となるいわゆる「ブルーウェイブ」(ブルーは民主党のカラー)が来るというポジション。けど、選挙が近付くにつれ、まずは合意がダメになり、さらに今トランプ大統領の目がかなり出てきたということで、結構粟を食ってポジションを弄ったというのが、米国株急落の実態だと思う。
そんな状況下で、少なくとも岩盤のようだった日経平均も¥23,300くらいまで押してきて、さらに30日の前場は売りモードで下落して¥23,100に迫った。そのタイミングでSUBARUは大きく下落し、他の自動車銘柄よりも1%以上大きな幅だったところをチャンスと見て条件反射的に買い下がったわけだ。
買いの理由
まず、ここまで米国株が下がった結果、SUBARUはなんと¥2,000をあっさりと割り込んで、¥1,950を割り込む勢いだったのよ。でも、この下落を拾うと後場に日銀のETF買い発動で反発すると甘く考えていたことが大きい。
それに数日前にでた9月の生産・販売台数が好調という記事も頭の片隅にあった。ということは、業績のボトムが4-6月で、今回の7-9月決算はボトムアウトは確実ということになり、なおかつ生産・販売の状況からして上方修正もしてくるだろうと思ってたこともある。
さらには何度もロスカットを食らう下げ方をされてたので株価の位置が低いというのも安心感としてあった。もっというと、SUBARUの業績を精査すると、新型コロナの落ち込みと2021年3月の決算予想まで考えると、落ち込み幅は少なくて、回復幅は大きいということも分かってた。値動きが軽いからトヨタよりもパフォーマンスはいいはずだからね。
反対にネガティブ材料としては、SUBARU自体はすでに6月からフル生産に移行していることが分かってるんで、もしもほとんどのモデルを9月10月で一斉切り替えをするという大ナタがなければ、もっともっと強気だったかもしれないということ。ところが9月に入った時点で国内販売は旧車の在庫のみで新規受注はしていなかったし、それは米国でも同様らしかった。
なので、今回の決算は生産はしていたけれど販売数はあまり良くない可能性もあった。7-9月がボトムか4-6月が予想を下回るといやらしいからね。
でも、各社の決算をみててその場合でも通期が上方修正されたら・・・例えばデンソーのようなパターンだったら、そんなに嫌われないしね。もっと言えば、米国の追加対策が合意しなかったことで短期的にはドル円は¥105台半ばまで戻すと見ていたこともある。
ロスカットの理由
ところが前場を終わってどうも地合いが怪しくなってた。いつものようにダウCFDがフェイクのような動きになってきて、前場の日経平均はほぼ安値引け。それを知りつつ海外勢はCFDを下げてきてるということは、後場に介入する可能性の高い日銀を完全に無視して行こうと決めたのかもしれないと思ったんだよね。
終わってみると日銀は701億円の介入をしてた。これで3日連続。でも買い注文ができる1時半まで待って、そこから先物を叩いてきてるんだね。つまり、後場のロスカットは短期投資家の俺にとってはたとえいくらマイナスしても切るべきと判断すべきタイミングだったんだよ。
けれど、もう一つ本命の理由はあったんだ。それがバイデンが政策として掲げてた再生可能エネルギー化なんだよね。TV討論でも化石エネルギーは全廃してクリーンエネルギーにすると言って墓穴を掘ってたけど、そうなるとSUBARUにとっては完全に向かい風。しかも今回の一連のモデルチェンジは燃費の悪いSUBARUの企業全体としての排ガス排出基準をクリアしたいという思惑があったらしい。これができないと、バイデン当選なら致命的になるというもの。
そこを考えていなかった自分に気づいたことなのよ。
俺自身はトランプ大統領が再選と思ってるけど、SUBARUやら自動車関連を持つことは大統領選挙ギャンブルになるんで、同じギャンブルするならもう少し下値で拾えるかな、という欲も出てしまったんだよね。そういう点ではどちらが勝ってもOKのブリヂストンまで売らなくてもよかったと後悔してるけど(苦笑)
顛末
さて、天王山と考えてた30日の米国市場は、結果としてはダウが▲$157下げて、引け後のCFDで$110戻しということで、ほとんど下げなかったけど、日経平均CFDはあっさりと¥229高されてしまった。つまり、このまま平穏な週末ならば、週明けの日本市場はGUして始まるわけで・・・結果的にロスカットは不要だったのかもしれない。
けれど、目先はそうなるけれど、もう少し長い目で見てみると、ダウはまだ下げ止まっていないと思うので、自動車株はまだ軟調な展開が続きそう。もちろんトランプ勝利があっさり確定したら全力買いで行くけれどね。
結局30日に米国市場が上昇したのは結果論で、ロスカットの理由は結構理にかなってると思ってる。なので精神的にはまったくダメージないし、他銘柄にもある程度含みがあるから、ダメージは残らないと思ってる。それよりも、大統領選挙に向けてどうポジションを建てるのか、決めなくてはいけないことの方が大問題なのよ。
ちなみにバイデンが勝ったら、パナソニックは全力買いでもいいと思ってるし、トランプが買ったら米国ハイテクの下落は止まらずに、中国関連銘柄は売り勝負で行くかも。
大統領選挙が終われば市場のテーマは新型コロナ感染拡大になるだろうし、バイデンなら関連銘柄買いでトランプならば売りというのもあるかもしれない。でも、全体的に売り傾向になるくらい、感染拡大のスピードは速い。
そして最悪のケースは、大統領が決まらずに、追加景気対策の目途が立たず、年越ししてしまうような状況で新型コロナ感染が急拡大すること。その場合は米国株もまだまだ下げる。そして日本株も底堅いなんて言っていられなくなるけどね。
理由のあるロスカットを!
SUBARUの場合は、バイデン当選の想定で海外勢が売った、という要因が大きいわけだが、もちろん地合いの変化の中でそれを見極めるべきなんだと思う。しかし、需給で売られちゃうと意味が分からなくなってしまうので、容易じゃない。特に小型銘柄は大口が投げたら行っちゃうからね。
でも225主力でも中小型株でも、基本の所作は同じだと思うので、買い理由とか売る理由を想定して入ることが重要だと思う。ただ闇雲にルールだからといってロスカットというのは全く分からないし、まして5%、10%下がるまで下手をするとじっと我慢、なんてのはナンセンスの極みだよ。
そんなロスカットしてたら、あっという間に資金が溶けるわ!(苦笑)
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