迂闊だった日銀、FRBはどうする?

迂闊だった日銀、FRBはどうする?

今日の後場のブログタイトルを「日本市場の物悲しさ」と、感情的になって思わず書いてしまったわけだけど、今日ザラ場を見てた人なら誰しもそう感じたんじゃないかと思うのですよ。なぜなら、日本市場は海外勢如何、海外勢の思うがまま、と言われているけれどまさにそれがあからさまにザラ場で見えたからだよ。なので感じたところを少し書きたいと思って今、書いてます。

思えば、あのアベノミクスが始まって、日銀が黒田バズーカをぶっ放す以前の日本市場なんかは、本当に海外勢の思うがままに翻弄されてたんだよね。とにかくこいつ等何処までエグイんだ!?みたいに感じてたわけだよ。だって、例えば小型株に対する空売りの入れ方ったら本当に悪辣そのもので、下手したらIPOした瞬間からもう売り始めちゃって、半年もしたころは売り玉がビッシリで、上昇のしようがないほどになってたわけ。だから、もう下げるしかないのよ。

有望なグロースだと思っても、株価はただひたすらに下がってゆく。そんな苦い思いを経験した身としては、海外勢、特にドイツ銀行には本当に悪い印象しかない。GSも結構エゲツなかったけどドイツ銀行ほどじゃなかったし、パリバもクレディも押しなべて欧州勢は酷かったね。

けれども、2013年4月の黒田バズーカがぶっ放されて以来、海外勢が日銀にまともに逆らったのは多分、その年の6月23日の大暴落くらいじゃなかったかなと思う。日銀が異次元金融緩和をぶち上げて以来株価は急上昇を始めたのよ。けれども2012年暮れに安倍政権が誕生した前後から、株価はすでに上昇を始めていて、つまり黒田バズーカによって株価は上昇の最終段階的な急騰を5月に始めたわけ。

Advertisement

この時の上昇もかなり凄かった。というかほとんど金融バブルのような感じで、引けて夜間先物で連日¥200、¥300、¥400と日経平均がGUして返ってくる。なので買いならばもうどこでも同じ、思い切って入ってしまう、みたいなまさにバブル飛び乗り的な感じだったと思う。

そしてここまで強いのなんの、何処までも行く、みたいな話が出てきて上げ幅が一段と拡大した瞬間に、海外勢が一気に売ってきたわけよ。もう馬鹿みたいな金融政策を始めた日銀ってちょっとクレージー?みたいにせせら笑うような感じで、やっちゃおうか?と口裏を合わせて一気に仕掛けてきたわけだよ。

その後の展開はまるでバンジージャンプのようになって、投資家はみな、やはり株はダメかぁ、と思い始めてたと思う。暴落すればショートカバーで急激に戻す。そして戻ったら再度仕掛けられるし、戻り売りもたっぷりあるからまた下落、といった具合だったと記憶してる。けれども金融緩和の威力はすさまじく秋口には元値に完全に戻って年末には高値を取ってきた。

そうなった理由は、海外勢が日銀は本気でこのクレージーな金融政策をやるつもりなんだ、と考え始めたから。仮にそうならば、逆らっても無駄だから・・・と戦術を変えてきたんだろうけどね。

まぁ、ちょっと古い話をしてしまったけど、とにかく株式投資の鉄則の中に、「中銀には逆らうな」というのがある。俺自身の師匠も「(中銀の)金融政策の変わり目が相場の変わり目」と常々言っていたけれど、今回のコロナ禍後の相場にしても、一貫して日銀は金融緩和を継続する姿勢を示していたし、ETFやリートを買い続けたわけだろう?すでに現時点では(いままでに)なんと約35兆円もの日本株を買った計算になるし、バランスシートの拡大もヘッタクレもなくジャブジャブにするという日銀手法だってECBやFRBも全部追従してきてるわけで、もう誰も(中銀の)金融緩和を疑うことがなくなってたわけだよ。

Advertisement

結局主要3通貨が足並みを揃えるならば、揃えて為替レートをバランスさせるならインフレにもならずに表面上は何の問題もなく経済を支えることができ、株価も天井知らずで上昇するからそれが金融政策の正解になっちまったのよ。

ところがさ、先週の金曜に突如として日銀は、年間6兆円というETF購入予算を撤廃し、日経平均型ETFはもう買いません、という衝撃的な政策点検を発表した。黒田総裁は「買わないとは言っていない」と釈明していたけれど、買うとすればTOPIX型ETFに限定します。有事のこともあるので年間の購入上限の12兆円枠は据え置きます、と言うことだ。これはつまり「日経平均型ETFは買わない」と宣言したことになるから、明らかに投資家から見たら金融政策の出口戦略、いわゆるテーパリングに見えるだろう?

アナリストや評論家の中には、日銀が700億円の介入をしたところで株価には影響がない、とか買っても支えられないだろうとか、みんな勝手に発言してたけど、しかし厳然と8年間で35兆円の資金を市場に投入しているわけだし、日経平均は遂に¥30,000という大台を瞬間的かもしれないけれど獲ってきたきたわけで、日銀なしにこうなったとは誰も思わないはずだ。

けれども、日銀の本質的なETF買いオペの意味は、俺自身は海外勢に対抗できる唯一の国内勢力ということに見出してる。

Advertisement

日本市場のザラ場のプレーヤーは7割、8割が海外勢と言われる中にあって、海外勢に対抗できる投資主体は日銀以外に思い当たらない。国内証券は本当に悲しいほど力不足で海外勢に対する対抗勢力にはなり得ないし、機関投資家も日本株がこんな状況になってもまだ積極的に買いを入れていないという事実。そして毎年この季節(2月~3月)は、保有株式を現金化して決算対策をするみたいなことが毎年繰り返されるだけ。それもそのはずで今考えれば二束三文で手に入れた株式がお宝のようになっているわけだから、切り崩して売るだけで大いに利益が出てしまう・・・。

だから日本も会計基準を見直して保有有価証券を時価で評価しさえすれば、こんな無様なことにはならないはずだけど、そんなことはとことん反対なんだろうよ。

という日本の世界潮流に合わない企業会計制度とか、海外勢優遇といった東証の姿勢とか、今日でも問題が山積してる日本の株式市場だけど、その中で唯一まともに海外勢との対抗勢力の役割を演じてきたのが日銀なんだ。

その日銀が金融政策を転換したとなれば・・・、それは投資家に計り知れない心理的なダメージを与えるだろうし、海外勢は中銀がテーパリングを始めた国の株を買いたくはないだろう?円安なのでドル建て日経平均を維持するには、今、売るしかないかもしれないと考えても不思議じゃないからね。

Advertisement

そういう意味で、ファストリ株がバンバン売られ、半導体・電子部品・自動車など基幹産業株が売られた先週末、そして今日の日本市場が、本当に物悲しかったのよ。

いま(23日0時15分)米国市場はパウエル議長の講演待ち。コロナ対策で行った1年間の期限付き補完的レバレッジ比率条件緩和を3月末で予定通り終了することに対し、(米銀の)約20兆円の国債売り圧力にビクビクしながら発表すると伝えられてる「新たな変更点」を期待して待っている。

FRBも国債金利上昇に歯止めを掛けたいと思っているだろうから、何らかの代替策を打ち出すとは思うけれど、もしも期待を裏切れば、今夜米国市場は暴落すると思う。そして日本のみならず米国でも「金融政策の変わり目」と投資家が捉えてしまうかもしれない。

Advertisement