株・師匠の教訓 6:株価は架空のものです

株・師匠の教訓 6:株価は架空のものです

師匠と出会って最初にポジションを建てる前に、師匠に最初に言われた言葉、それが「株価は架空のものです」でした。

そのくだりは、小説に(不信1~3)も書きましたが、いまほど重要な意味を持つ時期はないのではないか?と感じます。

 

株式投資の原点

そもそも株式とは小口の資金を集めて資本とするために生まれたわけです。そして当初は社債とほとんど同じであって利回りを期待する債券だったわけですが、あの東インド会社で発行され広まるようになったと言います。

しかし株式は株主としての権利が保障されるかわりに元本保証はありませんが、債券は借用証書として元本が保証されます。従って株式をハイリスク、債券をローリスクという定義になるんですね。

このことから、株式によって集められた資本は投資され、失敗すれば紙切れになるという性質である以上、見方を変えれば返済義務のない債券ですね。

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相場になる

ただしそうした株式も換金性がないと不都合なために、証券取引所がロンドンやニューヨークに開設されます。そこで、様々な株式の売買が行われて額面とは別に価格がつくようになるわけです。

そこで額面以上のプレミアムが付いたものが株価になる。それが師匠の言いたかった「株価は架空のものです」の意味だったわけです。

だからこそ株価は、売買する際のマインドに大きく左右されます。人気が出れば高くても欲しいという投資家が現れますし、ネガティブな要因が生じれば額面以下になることもある。つまりは相場で取引されるということは、そこでの価格はその時の投資家のセンチメントを反映したもの、と言えます。

投機になる

しかし、大抵の場合、額面以下になることはありませんし、そもそも株式に額面を設定する意味も無くなっています。企業は需給との兼ね合いで株価を設定して資金を調達すればいいわけで、いまでは基本的な株価の指標(PER、PBR、ROEなど)によって評価される時代です。その裏付けは必ずしも企業の資産価値(解散価値)とは限らずに、企業の信用によって決まる側面が高くなっています。

ですから将来に対する期待感が高まると株価は上昇し、時として過熱することもあるわけです。そうした株価の変動に投資する、というのが我々のやっている株式投資であるということです。

そして時価に根拠を求めるならば、プレミアムを説明できる有効な手段はありません。だからこそ、「株価は架空のも」と考えるべきなのだと思います。

そうなると、株式投資は投機に近い性格を帯びてきますね。

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株価の基本を逸脱する

ところが、ある出来事を境にして株価の本質に変化が見られるようになりました。それがリーマンショック後の世界的な金融緩和によるカネ余り現象です。

株価を決定する要因は、利回りや資産価値、企業の将来性といった従来の概念に対して、「投資資金が有り余る状況」が加わったわけです。すると、株価は投資資金の増加によって上昇するという現象が生まれました。

日本のバブル経済や、米国のサブプライムなどを見ても分かる通り、投資資金余りの現象は、必ず投機的な要因となってきました。しかし、そうしたプレミアムは金融政策の変更で必ず崩壊してきたわけです。

つまり、株価の本質的な価値以上にカネ余りによってつけられたプレミアムが一気に剥げ落ちてしまう現象を暴落と呼んでいるのですね。

政策の変わり目がトレンドの転換点

金融政策にしても財政政策にしても、従来の政策と正反対の方向感が打ち出されるとそこかトレンドの変わり目になると師匠から聞かされました。

そして今目の前にある株式市場は日米ともに、まさに政策の変わり目にあるわけです。

米国ではFRBの利上げ停止となりもうすぐ債券購入も終了します。リーマンショック以降幾度となくQE(金融緩和)が発動され大量の資金が供給されてきましたが2018年には利上げに転換しました。市場はそれを見守る格好でしたが、2018年9月の利上げでいよいよ耐えかねてクリスマス暴落へと繋がりました。

そのためFRBは利上げ路線を中止して、現在の水準でフラットなスタンスを維持しています。またトランプ政権は2018年から対中国政策において強硬な姿勢を強め、関税の引き上げによってグローバル主義から自国優先主義へと転換しました。そのこともクリスマス暴落の要因であったわけですが、現時点ではますます米中対立は激化しています。

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日本では、マネタリーベースを増加させれば金融緩和効果が生まれるとして、アベノミクスによって日銀当座預金残高の急拡大が行われましたが、まったく効果はなく、ついには日銀は景気に対してレームダックとなってしまいました。

さらに消費税増税という愚行がなされようとしている現在、極めて危機的な状況が日本経済を覆っています。増税は財政政策の大きな転換点となりえるのです。

世界経済は必ず収縮する

米中対立によって中国経済が壊滅的な打撃を受けています。リーマンショック以降世界景気を支えてきた中国の無謀なまでの投資が行き詰まり、世界経済に悪影響を与え始めています。

欧州はブレグジットによってその体制が変質し始めています。そしてイタリアでは実質的に経済破綻の状態まで追い込まれ大きなマイナス成長を余儀なくされています。また、いよいよ手段を失ったドイツ銀行の再建問題も大きく注目され始めるでしょう。

GDP世界第2位の中国経済が急速に縮小し始め、日欧経済が疲弊するとなると、米国経済もまた影響を受けると考えるのが自然です。

こんな時師匠が存命ならば、「株価は架空のものです」と笑みを浮かべたに違いありません。

そんな経験から私自身、「売り主導の短期投資」というスタンスに至ったのだと思います。

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