男子プロゴルフの話
- 2021.05.08
- スポーツ
女子プロは人気だけど、男子プロはダメダメ。そう、国内プロゴルフトーナメントのことです。先日、マスターズで松山英樹が優勝という快挙を成し遂げたというのに、日本の男子プロゴルフ界は全く盛り上がらないどころか日に日に凋落してゆく有様で・・・。
そしてこんな日刊ゲンダイの記事がYAHOOに掲載されていたので、かつてはゴルフを趣味としていただけでなく、面白い関りもあった男子プロゴルフ界なので、自分なりに思うところを書くことにした。
徒弟制度から派閥へ
自分自身、結構キャリアだけは長く、コースデビューは47年前である事情から10人程度のプロゴルファーとのかかわりもその後に持ったこともあって、いろいろ知識や情報はあるんだけどね。当時を思い出すと、なんかね、昔からこの世界ってのは、子弟制度、徒弟制度、みたいな古~い体質があって、有名なプロには何人も弟子がいたんだよ。となると古参の実績のある派閥のドンみたいな感じなので、実力があってもそういう人にべんちゃらの一つも言えないと、たちどころに仲間外れにされてね、有望な若いプロが一体何人潰されてきたか分からないというのがあったし、結構何人もそういう人を見てきたよ。
正直、当時のプロゴルファーって考えることなんかもレベルは高くないし、まずは礼儀みたいなことを言うくせに、自分は上がいないから傍若無人にふるまって礼儀もヘッタクレもなかったと感じた。そうした古参のプロってもともとがキャディーをやっててプロになったという人が多いし、戦前はとくにゴルフって金持ちの道楽に近かったから、そういう旦那衆みたいなのがキャディをやってる若者を可愛がってプロにしてやった、みたいな部分があるんだね。
なので、とりあえず昔のプロゴルファーって社会的な地位も今ほど高くないし、アマチュアゴルファーに対する礼儀とか敬意は持っていたような気がするんだよね。マスターズトーナメントとか全英オープンのような伝統あるトーナメントなんか見ても分かるけど、まずはアマチュアが主体なのがゴルフ界なんだろうし、その伝統は今でも米国や英国にはしっかり根付いてる。なのでそういう面を昔のプロ連中はしっかりと見習ったものだよ。
簡単に戦後のプロゴルフ界の推移
日本の男子プロの黄金時代の幕開け、というとやはりジャンボ尾崎がプロ野球をやめて転向したあたりから始まると思う。当時東日本では、林由郎(はやしよしろう)や中村寅吉(なかむらとらきち)といった黎明期のプロの弟子たちが、幅を利かせていたわけだよね。(昔は関東・関西という別々の世界があって、ゴルフをやるような粋な財界人は関西に多かったから、プロゴルファーの関西では多く育ったし、関東のプロは馬鹿にされてた)
で、当時は中村の門下である安田春雄、林門下の鷹巣南雄(たかすなみお)とか海老原清二あたりが男子プロの中心人物で、仕切ってたみたいな雰囲気があったけれど、そこにジャンボ尾崎というスターが誕生して状況がガラリと変わったんだよね。そしてその後の男子プロゴルフは、林由郎門下の尾崎三兄弟、青木功、によって全盛期に突入すると同時に、中村門下は駆逐された格好になったわけ。
と、こんな感じで、日本のプロゴルフ界ってのは徐々に東日本が中心となり、中でも林由郎系列が男子プロの主流を占めちゃったんだよね。しかし女子はどうだったか?と言えば、昔は本当に凄い(良家の夫人がプロになってた!)プロたちがいたり、その後には所謂アスリートとしての女子プロが誕生し始め、彼女たち(清元澄子とか)が仕切る時代が続いてた。そこに中村門下の樋口久子が登場して、米国のメジャーにも勝っちゃって一時代を築いたわけだよ。その後次々に米国で勝てる女子プロが登場して(岡本綾子、小林ひろみ等々)、廃れてた女子プロ界を一気に盛り上げた。1996年から2011年までの15年間で、樋口久子の果たした役割は本当に大きかったし、岡本綾子(前会長)や小林ひろみ(現会長)も、次々に新たな改革を実行に移した結果、今日の隆盛があるということだ。
米国での勝利をものにしたこの3人の女子プロが果たした役割は現役時代の栄光もさることながら、会長就任時の功績が大きかったと言える。この間、女子プロは本当に変わったと言われていて、陰湿ないじめ体質はほどんとなくなったと言われる。また韓国からも積極的に招聘したり、次々に出てくる若手もみんな美形揃いと言ってもいいし、とにかくトーナメントがファッションショーのように華やいだ。しかも容姿端麗だけでなくみんな驚くほど上手だなと感心するしね。しっかりと実力を持った女子プロゴルファーがほんとに増えてきた。
女子のアスリートってどの種目でもあまり恵まれていないと思うけど、そんななかで女子プロゴルフ界というのは、先頭を切ってると思う。
男子プロゴルフ界凋落の二つの原因
さて、ならばどうして男子プロゴルフ界って凋落してしまったのか?いささか偏見になるかもしれないけれど、俺の意見として読んで欲しい。
まずは、男子プロでは、例えばジャンボ尾崎が野球方式の集団トレーニングを提唱して軍団のようなものを作ってしまった。プロ野球出身だからそうした発想になったのだろうけれど、ジャンボ尾崎が強ければ強いほどに、彼の下に弟子が集まったんだね。もちろん、三兄弟だから弟の建夫や直道も加わるし、番頭役が飯合とかね。総勢20名とか30名くらいは参加したと思うし、みなそれぞれに華々しく活躍をした。
そうなるとトーナメントで勝つにはジャンボ軍団へ、みたいな雰囲気もあって他のプロ達も我が道を行くというのが窮屈になってくる。昔はシンプルに前年の賞金ランキングで確か60位までと、その他永久シード権とか複数年シード権、特別枠の選手が試合に出られるけれど、そのうち10人も20人も尾崎軍団とそのつながりの深い選手が占めちゃう。なので、当然のように態度が横柄になってくるんだね。
そしてシード権ギリギリとかの選手のために、シード圏内の若手を弄っちゃうとか、そういう事が(以前からあったことだけど)横行してきちゃうんだね。シード権はトーナメントプロにとっては死活問題だし、一度失うと奪還がかなり難しいものなので、こうなると本当に嫌な世界って感じになってしまう。
多分青木功はそういう状況が嫌だったのだろうと思うし、ジャンボ尾崎とは距離を置くようになったけれど、中島常幸なんかアマ出身の独立派だったのに最後は尾崎にすり寄ってしまったし、丸山茂樹も日大ゴルフ部出身なのだがジャンボ軍団にすり寄ったしね。結果青木は米国へ、そして日本では尾崎派がますます台頭することになった。その状況を多くの男子プロは苦々しく感じていたのだろうと思う。そういう背景もあって、また協会の金銭体質への不満もあり、とうとう男子プロゴルフ協会は分裂騒ぎになってしまった。
日本プロゴルフ協会(PGA)に対し利権を独占している状況が許せないとした倉本昌弘を中心とした選手会がトーナメントの開催権を分離独立させて日本ゴルフツアー機構(JGTO)を設立した。このゴルフファンにとって全く意味不明の大喧嘩がトーナメントの凋落の直接原因だと言って間違いない。しかも救いようのないことに、何と叛乱の中心人物の倉本昌弘がいまは日本プロゴルフ協会(PGA)の会長職にあり、そして日本ゴルフツアー機構側はなんと青木功を会長に担ぎ出してしまった。
そんなことをすれば、永遠に両団体は妥協できなくなってしまうじゃないか!そんな動きに対してもしかして昔なら、財界人が仲裁に入って上手くやってくれたと思うけど、今はそんなことをできる大物はいないんだね。結局はカネをめぐる騒動で分裂したわけで、いまだに意味不明の状況のままでますます互いの機構が相いれない形になっている。しかも両機構の主催する試合に、同じようなプロが出場しているって、まったく(協会も機構も)エゴ丸出しなんだよ。
そうなると、もう救いようがないね。
それからもう一つ、実際男子プロ達の人間的な資質は、本当に最悪に近くなってしまっている。(良くある話だけど)トーナメントプロともなると(周囲から)結構ちやほやされるから、いつの間にか天狗になってしまって・・・。そして救いようのないのはそれに気づかないプロが大半だってことなんだ。象徴的なのは永久シードを持つ片山晋呉の不祥事で、あるトーナメントのプロアマで傍若無人な態度を繰り返した片山に呆れて招待されたアマチュアが途中で怒り心頭で返ってしまったというもの。
この事件に象徴されるけれど、とにかく何度か試合に勝った男子プロは本当に救いようのないくらい、傍若無人になる。たかがゴルフでそんなに偉いか!と言いたくなることが、俺自身の昔の経験でも山ほどあったしね。そしてその傾向は片山晋呉だけでなく、多くの優勝経験者がその傾向にあるのは否定できないよ。結局ゴルフしかできない所謂ゴルフバカなんだろうけどね。
どうしてそういう土壌が出来てしまったのか、はっきりは言えないけれど、やはりジャンボ尾崎とその軍団の振る舞いの影響が大きいと思うよ。アマチュアだってね、そういうプロ達の振る舞いにはもう呆れてしまったんだよね。しかも上(協会と機構)が分裂のままじゃ、リーダー不在ってやつだからまとまらないし、行儀も良くならないよ。
実際、こうした男子プロ達には、謙虚さは微塵もなかったしね(今は分からないけれど)。
だから、上から下まで、こんな状況だから、男子は凋落の一途だろう。スター不在とかそういう話じゃないんだよ。根本的に作り直さないとダメ。松山英樹がマスターズに勝ったというビッグニュースも日本の男子プロ達には何も響かないでしょ!
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