FRB金融政策と日米株式市場を客観的に見る

FRB金融政策と日米株式市場を客観的に見る

月曜が休場だと、なんとなく気が抜けてしまう。でも本当は今日は気合をいれて備えないといけないんだろうなぁ・・・なんて思ってます。というのも、今週は日米の株式市場にとっては相当に重要な一週間になると思うから。勿論日経CFDも動いてますけど、そもそもダウCFDが気迷いの中にあるわけで、昼間の株価変動は全然参考にならない。

株価の先行きに関する様々な見方

多くのアナリスト(米国のみならず日本も含めて)は、今年の株価は上昇速度はやや遅くなるものの、上昇を継続するのではないか?と、少なくとも先日のFOMC議事要旨が発表されるまでは、思っていたと思う。勿論今年の株価を悲観的に見ている人もいるけれど、その時点までは少数派だった。YOUTUBER系の投資家やメディアに露出の多い評論家は、リスクを訴えた方が視聴が増えるという事情を抱えているので、悲観的な印象だけど、少なくとも本筋の投資主体のマネージャクラスは、さほど心配していなかったと思う。

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けれども議事要旨で、「3月のテーパー完了とともに利上げ実施、6月にはQTの可能性も」と発表された途端に雰囲気は一変し、株式市場は急激に議事要旨の内容を織り込もうとしていることからして、かなり悲観的な見方に傾いたに違いない。そしていずれにしても現在は、腫れ物に触るようにゆっくりと静かにポジションのリバランスを行っているはずだ。株式市場は新たな買い場探しが始まるわけで、そのためにはFRBにさえ歯向かうのではないか?と思っている。

しかし、これはあくまでも現時点のシナリオであって、今後の米国経済の行方、企業業績や為替、そして金利の動向は予想でしかないわけで、このシナリオが大きく狂うことも十分に考えられる。だが、今となっては弱気派が強気派を上回っていることは確かだと思う。個別銘柄の動きは別としても全体的にこれから下げ相場になることは、ほぼ確実な情勢だ。

客観的に見て感じること

そのシナリオとは、買い場は「QT開始後で十分に安くなったところで買う」と言うものだろう。従来のシナリオは2022年前半は少なくとも企業はインフレに耐えて業績好調を維持することは十分に可能で、利上げが2回程度の段階で売り場を模索すればよい」と言うものだった。

しかし、ちょっとそれでは間に合わないと感じたことは確かで、当初のシナリオから半年前倒しする、という感じかもしれないし、後は買いはFRBがどの程度QTに本気になるか見極めてから、というのがコンセンサスのような気がする。

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けれども、どうも気に入らないのがFRBの態度の豹変だと、感じているに違いない。その意味は、パウエル議長は再選が決まるまでは、ハト派一辺倒で来ていて「インフレは一過性」という主張をイエレン財務長官ともどもしていたけれど、再選が決まるや否やタカ派に急変した。そして次期議長候補だった超ハト派のブレイナード理事も恐らく議長に選ばれたとしてもタカ派に急変しただろう。

問題はその理由で、一つは支持率が低下して今年の中間選挙で敗北濃厚な民主党(特にバイデン大統領)からのインフレ対策に対する圧力があったこと、そしてもう一つは遅かれ早かれ来る暴落相場に際して政策手段がほとんどないという危機感だったと思う。

心情的にはパウエル議長は共和党員であるがゆえに、バイデン政権の超ばら撒き政策を嫌悪していたのではないか?政権内のイエレン財務長官は、民主党の巨大なインフラ投資法案や効果にあまり期待できない増税法案を指示せざるを得ない立場にあるわけで、債務上限法案が通り、専門である雇用が回復しさえすればいい。

新型コロナの感染が始まって、未曾有と言える財政出動を余儀なくされたことは、不可避だったとしても結果的にFRBの金融正常化への道筋をぶち壊した。パウエル議長はトランプ政権時代、米中貿易戦争の最中に利上げをしたと言う事実からしても、決してハト派ではないし、ましてや共和党員である。再任が決まった今、タカ派に傾いても何ら不思議なことはない。

なので、少なくとも今後、新型コロナ変異株が急拡大したり、台湾やウクライナ、カザフスタンをめぐる米中、米ロの対立が表面化し、国際的な有事に発展した時に十分な政策余地を確保しておきたいと言うのが本音だと思う。インフレは少なくとも新型コロナがある程度収束の目途が立たなければ、特効薬はないということも十分承知の上で、株式市場を今の内に冷やしておく必要があると感じていると思う。

それが今回のFRB議事要旨の主たる目的なのではないか?と思う。

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けれども、いままで、言い換えるとリーマンショック以来の金融政策の主眼は、市場に過分な資金供給をおこなうことで、景気回復を持続させると言うものだったし、それはこの15年間で変わらぬ金融政策の手法だった。そのことをマーケットは十分に承知しているからこそ、強気派が圧倒的に有利な時代が続き、今日の株価水準があるわけで、その裏には15年間増え続けた膨大な債務もある。

金利が上昇すれば、企業に莫大な金利負担が生じ、業績の足腰を折る可能性も十分にある。なので、実際は無暗な利上げが出来る状況でもないことは十分に承知の上で、インフレを抑制するための最も効果的な手段の一つが(米国の場合)株式市場の冷やしに他ならない。

しかし、あまりに長期間金融緩和を続けた結果、世界の投資家のポジションもまた膨れ上がっている。その巨大な投資家が最も嫌うのがシナリオの変更でありスケジュールの変更なのだ。特に今回のように突然半年も前倒しされてしまったら、急激にポジションを変更しようとするだろう。そうなるとFRBの想定外の投資行動になることも十分にあり得るわけで、インフレ同様に一旦加速し始めた下落を(FRBが)止めることが出来ない可能性も十分にあると思う。

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やはりバブルだったと感じる年

9984 SBG 2年週足

激動と言える2022年が終わる1年後、やはりこの株価はバブルだった、と改めて感じる年となるかもしれないと思う。米国株価はリーマンショックを始点としたロングレンジで見ると、金融緩和によって市場に供給した資金量にほぼ比例して上昇を続けていることが分かる。とすれば、FRBがQT(バランスシートの縮小)に踏み込めば、簡単に株式市場は呼応するだろうと考えるのは当然の見方だと思う。

FRBのバランスシートが膨張するということは、同時に債務も比例して増加してきたことを意味する。そしてまたぞろ供給された資金は、レバレッジを掛けられて様々なデリバティブ商品へと振り向けられている。そのことを考えれば、水面下では世界全体が恐ろしいほどの債務超過に陥っているとも考えられる。もちろん、表面上に債務超過は見られないが、資産評価が変わればあっという間に債務超過になるというのが、金融至上主義の最大の弱点であることは、リーマンショックから多くを学んだはずなのだが・・・。

その意味を端的に表しているのが、9984 SBGの株価の動きだろう。SBGの骨格を支えているのはアリババ株であることは言うまでもなく、上場ゲームによって投資資金を爆発的に増やすという手法を実践する投資会社と変貌した。事業会社としてはソフトバンクを子会社化し親子上場した時点で終了しているわけで、後は膨れ上がったアリババ株を使って何処まで資産を増やせるか?の投資ゲームに熱中している。したがってアリババの株価が下がれば、資産評価や信用も下がるのは極自然な動きだ。もし、習近平が今以上に強権を発動すれば、あっという間に息の根が止まる。

SBGは個人向け劣後債を発行して6000億円を調達するという・・・。勿論使途ははっきり発表することはないけれど、1兆円という金額をぶち上げて自社株買いをする予定だが、それでも株価は思うように反応しなかった。このSBGの株価動向こそが、今年を象徴するものになるような予感がする。

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新型コロナは救世主か!?

新型コロナの感染拡大が始まってまる2年になろうとしている。いまは変異株であるオミクロン株の急激な感染拡大の只中にあるわけだが・・・。恐らく今の金融資本主義、金融至上主義は、本当にツキがあると思うし、新型コロナが拡大したことが、より悲劇的な状況をもしかしたら未然に防ぐのかもしれないとさえ思う。もちろん「より悲劇的な状況」とは、今の金融ジャブジャブ政策によって醸成された株式市場のバブルが一気に吹き飛び、暴落して負の連鎖が始まることだ。

恐らくそうした状況下では、膨れ上がった債務によって資本主義そのものが崩壊の危機に立たされることはほぼ間違いない。その可能性が十分に分っていながら、世界の中銀のコンセンサスは「危機への対処は金融緩和」というものだった。危機感が強まるたびに金融緩和で解決するという姿勢が幾度となく繰り返されていると、いつしか市場は「暴落などはあり得ない、急落してもそこは絶好の買い場」と理解するようになり、成功体験を積み重ねた結果が今、なのだ。

しかし、ある意味では本来中銀の役割である過熱感の冷却を、新型コロナ感染拡大が強制的に行ったと思うし、今の経済に潜む矛盾を炙り出しつつあるような気がしてならない。気が付くと世界の価値観は「拝金主義一色」に塗り固められてしまっているわけで、新型コロナのようなお金ではどうにもできないこともある、と諭されている気がするのだ。

今の世界は厳しい人種差別を堂々と行いながらLGBTを差別するなと叫んでいる。

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節目は慎重に

いずれにしても、「金融政策の変わり目が相場の変わり目」という師匠の言葉通りの「変わり目」であることは疑いの余地がない。すでに割高な小型株は昨年一年間を通して調整局面にあり、マザーズ指数は下限の抵抗ラインを割り込んだ。レンジ相場を突破したのだ。

米国でも日本でも、小型株は株式市場の先行指標であると言われ、主力株の3ヵ月先を行く(と言われる)。

年間を通して日経平均株価は去年からのマザーズ指標のような、下向きのレンジ相場になるのではないか?と言うのが、自分の個人的な予想に近い。がしかし、レンジ相場では1度、2度、3度と逆張りが成功するけれど、4度目に逆行され大穴を空けるということが起こり得る。もちろん売りも買いも双方にその可能性があるわけだが・・・。

しかし、ロングレンジで株式市場の推移を見れば、今回のFRBの金融政策転換のインパクトは決して軽んじることは出来ないと思う。何せFRBは今のインフレ予測に関しても政策的に手遅れになるほど、予見できなかったわけで、負け癖がつくと妄信出来ないと思う。FRBが万能のような昨今の金融資本主義だが・・・節目は慎重に控えめに対処すべきと思う。