原油と日経平均の戻りとその後

原油と日経平均の戻りとその後

先週末(18日)は、米国のSQで今までにないほどの大量の清算になったということで、これは当然ウクライナ戦争の影響が大きいわけだけど、その割には各市場の値動きは懸念されていたほどの大きさではなかったし、強いて言うと株式市場に改めての買いが入り、大きく続伸したという流れになった。

原油先物、日経レバのポジションを持ち越した自分としては、原油の値動き、そして日経平均CFDの値動きを注視していたわけだが、とにかく原油先物に関しては、現時点では次の満期までのキャリーコストが上乗せになるので現物との値差ががややこしいけれど、先物ベースでは日本市場大引け時点での$105.60がSQに向かって$102.30あたりまで下落し、$102.85あたりでSQとなってそこから$105.35まで戻すという値動きになった。SQ後やや買いが優勢に推移したことになる。

一方日経平均CFDは、週末大引け後¥519という爆上げ状態となり、ほぼNASDAQの2.05%上げと肩を並べる1.93%の上昇となり、ザラ場と合わせて2.58%はトップパフォーマンスだった。この理由は、つまりはロシアに協力的な中国が売られた分を、日本株に振り向けるという、いわば今回のウクライナ戦争によるヘッジ的な資金移動だと思う。

Advertisement

原油価格の収まり処

現在の原油価格(現物¥103.42、先物¥105.30)は、相当な戦争プレミアムが付いた価格であることは言うまでもなく、いかな高伸するインフレ下という状況下でも高すぎるのは言うまでもなく、ウクライナ戦争が始まって原油は$80水準から$129まで上昇したわけで、その要因は産油国の原油価格ヘッジのためのショートの買戻しだったと言える。現在産油国は、原油市況の乱高下に備える様々なポジションを取っているけれど、これがSQまでに結果として踏みあげられたということになる。

もちろん、現物価格が上昇するからその増益分はしっかりと確保できるわけで、ある意味この踏み上げは出来レース的な意味合いが非常に強い。ロシアのウクライナ侵攻の最中にプーチン大統領とサウジのサルマン王太子(時期国王)はしっかりと会談していること、バイデン大統領のリモートによる要請や英国のボリスジョンソン首相訪問の際に原油増産をやんわりと断っていること、などからして原油増産の意思はなく、価格高騰は歓迎ということだろう。

Advertisement

また、イラン核合意に関する欧米の交渉の進捗にも神経をとがらせていて、核合意が間近であり欧米の経済制裁が解かれ市場にイラン産原油が大量に出回ることをサウジは恐れている節がある。一方原油価格が高止まりすればOPECプラスは爆益なのだが、UAE(アラブ首長国連邦)はロシアに寄り過ぎて欧米との関係がギクシャクしているサウジに代わって親欧米で発言権を増そうとしてイラン原油が増える前に増産しようとする勢力もある。

なので、先日の高値WTI$129は、とりあえずの天井値であることは間違いないと思っている。原油価格を最も左右するのが中国の需要であって、今後ロシアからの輸入を増やすことはまず間違いなく、インドもロシア・ディスカウントを狙っている。となると、需給を背景にすれば、ロシアのウクライナ侵攻でも大きく需給が崩れることはないかもしれない。慢性的な原油不足とインフレを背景にした原油高は$80近辺が妥当であって、通常の安定的な価格はインフレを加味して、なおドル高の影響も考えると$60近辺であると思われることからも、現在の価格は相当の戦争プレミアム付きと言えると思う。

週末、原油先物の買いポジションを持ち越しているけれど、金曜の値動きでは命拾いしたと思っていて、今後上がり目に賭けるのは控えるつもりだ。

Advertisement

日本株の収まり処

上記したように、連日日経平均は大きな上昇となっていて、これはウクライナ・ヘッジ的な動きが日本株に端的に表れた影響だと推測している。つまり、ロシアに対し建前では「戦争反対」と主張しながら、ロシアとの親密な関係を続ける中国は、経済的には韓国並みのGDPであるロシアよりも数段の格上であって、仮にロシアと同盟を結ぶようならば、地球上で広大な面積を独占する地政学上の地位を得る。また、ロシアの豊富な資源を優先的に、時には独占的に入手できるとすれば、中国の工業力とロシアの資源の取り合わせは、西側諸国にとって非常に大きな脅威となるはずだ。

Advertisement

その上で台湾に侵攻され、半導体産業を押さえられてしまった場合、近い将来中国・ロシア圏は経済的にも強大な勢力圏となり得る可能性が十分にある。その時に米国・EU・日本は対抗しうるのか?という不安さえ感じられるけれど、残念なことに米国は、今回のロシアのウクライナ侵攻に対し、世界の警察の役割を完全に放棄し経済的なメリットのみを享受する姿勢だ。

米国株がインフレやFRBの利上げにも関わらず、ウクライナ情勢による調整完了で強烈な戻り相場となっている背景には、米国経済へのデメリットはまったくなく、メリットを享受できると判断している証拠でもあるし、現実にその通りだろう。なおかつ、中国がロシアに必要以上に加担した場合、経済制裁のセカンダリー・サンクションによって中国に対する制裁も可能という、奢りがあることも確か。長くドルを基軸通貨とする世界経済は、ドルが万能で全能であるという奢りだろう。

しかし、今回のG7各国のロシア制裁によって破綻確実と言われるロシア経済が、破綻することなく持ちこたえてしまったらどうなるか?物理的にロシアが今後国債の償還や利払いを継続するのは困難であるとともに、ロシア関連の債権は流動性を失ってある意味償却対象でしかなくなってしまうことは明らか、と言えるけれども、仮に中国の援助でデフォルトを回避するシナリオも十分にあり得ることだ。

そしてたとえデフォルトしても、中国と同盟関係となれば、十分にロシア経済は継続可能であるということになる。

現時点では株式市場は、ロシアと近付く中国に対し相当の警戒感を持っているし、中国ポジションを減らす方向で推移していることは間違いなく、その恩恵を日本株が得ていると考えるのは不自然ではない。なので、現時点でいくら円安の悪影響があろうが、物価が上昇しようが、さらにエネ価格が世界で最も高かろうが、日経平均は大幅上昇している、ということになる。

Advertisement

そしてこの上昇は、来週から国内勢が追いかける展開になれば、昨年の菅総理退陣報道のような、急激な上昇となることも十分に考えられる。だが、日本経済が上昇分を打ち消して余りあるネガティブな状況にあるということを加味すると、大きく跳ねて大きく値を戻してしまうという可能性が濃厚とみる。

日本株上昇の鍵を握るのが、日米金利差拡大期待による円安で、現時点では¥119.145という水準まで来ているわけだが、あまりこの円安を過信すべきではないと思う。日本経済は内需主導であることは言うまでもなく、そのデメリットは4月以降数字になって現れるようになることを加味すると、近々のうちに日銀介入、財務省介入があり得るのではないか?個人的には¥120水準では日本経済は持たないと思っているので。

従ってこの上昇はあるところまで行けば、急落の危険をはらんだものとみているし、世界で最もスタフレ懸念の高いのは日本経済ではないか?と思っている。

Advertisement

日米株は下落トレンド

FRBはインフレ抑制に対して、ほとんど効果のない利上げ0.250PをFOMCごとに繰り返すことで対応しようとしているが、恐らく1度のQTを行った夏過ぎ辺りには、利上げ幅の見直しを迫られる局面になると思っている。そしてその時に今以上にネックになっているのが労働力不足と賃金の高騰、そして不動産の天井知らずの高騰と言うことになるのではないか?

そしてロシア、中国の同盟関係が意外な方向に向かうことになれば、再び資源高、コモディティ高、に襲われる可能性もあり、慢性的な半導体不足もあいまって、さっさりと米国経済はリセッションへと向かうかもしれない。

つまりそれまでは日米株式相場は良くて横這い、悪くすれば徐々に上値を切り下げる展開になる可能性があると思った次第。

この週末、そんな感触を得ています。