金融引き締め下で見えてきた二つの異変!
- 2022.05.04
- トレード雑感
5月4日ということで、いよいよ今夜(明日3:00am)にFOMCの政策発表という天王山が来る!もちろん、コンセンサスの政策金利0.750ー1.000%というのは鉄板だと思うけれど、今後の利上げに対する姿勢がアナウンスされて、それをどう捉えるかにかかってる。けれども、それ以上に重要なのがQTに対する具体的な言及だよ。株式市場は「5月FOMCで発表され6月から開始」と半分くらいは織り込んでいると思うけれど、QTの場合引き締め額が問題なのでね。
前回のQTは月額100億ドルからのスタートだった。しかし今回はそんな悠長なことも言ってっれないだろうから、個人的には300億ドル~500億ドルくらいでスタートすることになるのでは?と。仮に市場で5割くらいの確率で予想される6月0.750pの利上げと同時に300億ドル~500億ドルのQTとなると、かなりの衝撃となって跳ね返ってくるのは必至です。
そして5月5日には英国の金融政策委員会、6月9日にがECB理事会で相次いで利上げとQTへ舵を切ってくることになるので、いよいよ欧米は本格的なインフレ退治へと向かわざるを得なくなったということ。中国経済の急減速やロシアのウクライナ戦争の影響も大きいけれど、とにかく地球規模のインフレをどうにかしないことには、経済的にも悲惨な状況に突入してしまう・・・。
何やらおかしな展開が見えてきた!
このように世界的なインフレ退治のために欧米(ユーロ・ドル)は金融引き締めに突入するわけだが・・・そうなると、株式はもちろん債券も不動産も厳しい状況になるのは明白。巷ではコモディティや穀物への投資を勧めたり、通貨安による輸出好調を当て込んだ新興国投資なども有望(ヘッジ的)とされている。
今月後半と言われてるウクライナ軍の大反撃やロシア産原油の禁輸などで原油価格が上昇と予想されたり、さらなる対立から天然ガス価格もさらに上昇と言われたり、世界の穀物生産量の30%を超えるロシアとウクライナの生産が急低下して小麦・大豆・コーンの価格が上昇するとか、飼料なので食肉価格も乳製品も厳しいとか、様々な事態が予想されているから、確かに勝負は出来るのかもしれない。
そうした投資は所謂投機であって、ロングレンジの物ではないし、必ずロング・ショートのポジションを取ってくるはずで、ボラティリティを作ってナンボ、みたいな荒っぽさがあると思う。なので、投機に参加するか否かは、個人投資家にとってはかなりの難易度なのではないと思うしね。
けれども、ここにきて、FOMCの直前となってしまったけれど、何やら目先、異常事態が勃発しつつあるな、と感じ始めた。このような状況下ではどう考えても欧米の株式や債券はヤバイと思うんだが、ここにきて二つの異変に気が付いたんだよ!どちらも世界の潮流と真っ向から対立するかのごとくの政策がもたらす大異変だと思うので、今夜のFOMCの前に書いておきたいと思った次第。
中国のゼロコロナ政策
まず一つ目は、もう誰もが周知の事実である中国のゼロコロナ政策だよ。いま中国では上海のロックダウンをはじめとしてオミクロン拡大によって各都市が非常に厳しい行動規制下にある。それによって相当な部分の中国での生産が急低下してしまって、その影響は欧米各国に大きな影響を与えている。とにかく、生産拠点や販売拠点が中国にある企業は、業績的にも厳しい状況になっていて、さらには中国の輸出にも大きな影響が出始めているわけで、上海沖には数十隻の荷積み待ちのコンテナ船が滞留している有様・・・。
とにかくこのことで中国経済も現在急降下しつつあり、一説には4ー6月はマイナス成長に突入すると言われている。それというのも、この秋の中国共産党大会を控えた習近平が「ゼロコロナ政策」を強行しているからだ、とする政治面での評価で結論付けようとしているわけだが・・・本当にそんなことなのか?と疑問を感じざるを得ない。
世界の生産拠点であるだけでなく販売でも大きなシェアをもつ中国の経済が、いま輸出が急減速して広範囲にわたって影響が出始めていて、その結果欧米のインフレを助長する事態に直面しているのは、事実なのだ。実際にAPPLEは4-6月の見通しを大変厳しいと決算で発表しているし、米国が課している輸入関税も緩和または撤廃の動きも米国当局には出始めていて、イエレン財務長官もそのことに言及している。そして米国以上に中国輸出の影響を受ける欧州では、中国からの輸入激減がインフレに拍車を掛けている。
考えてもみれば、自らの政治的立場のためだけに、ほとんど意味のないゼロコロナ政策を続けると言うことに相当な違和感を感じるのは自分だけだろうか?本来経済的な損失を考慮すれば、ゼロコロナがナンセンスだと言うことが分からない習近平のはずがない。そんなことに執着しなくても秋の共産党大会を乗り切ることは十分に出来るはず・・・。にもかかわらず、あくまでもゼロコロナに拘るというのは、そこに何らかの意図があるのではないか?と思って自然だと。
これはあくまでも推測に過ぎないけれど、習近平は恐らく意図して欧米のインフレに拍車を掛けることを実行しているのではないかと思う。欧米の、特に米国経済は悪くなっていないし、十分に好調を維持していると言ってもいい状況だが、インフレが8.5%ともなれば早晩米国経済とて持たない。同様に7.5%の欧州経済も同様であるというのは、誰でもが分かる話である。そしてその両地域は中国からの輸入比率が最大と言えば、ある意味では中国が、両地域の経済の命運を握っていると言っても過言ではないよ。
激烈な国家間競争の最中、またロシアに対する欧米の制裁状況や中国の領土拡張政策を考えた場合、このタイミングで経済戦争を仕掛けるというのは十分にあり得る話なのではないか?と思う。今のインフレは明らかに供給サイドの問題であって、需要が堅調なのは米国経済が物語っている。もしも、習近平が感じている遺恨を晴らそうとするならば、このタイミングしかないと思う。そしてもしもこの推測通りならば、欧米のインフレは沈静化の目途が立たなくなるし、FRBやECBは過度な金融引き締めを実行せざるを得なくなる。その結果欧米経済は坂道を転げ落ちることになるかもしれないし、気が付けば世界経済は中国頼みという忌まわしい状況に直面する可能性も否定できないのではないかと思っている。
日本(日銀)の金融緩和維持
いま(4日、10:10am)日経平均CFDは¥27,152(△¥333)と大幅上昇となって¥27,000台を回復しているし、ドル円は¥130.150前後でホバリングを続けていて、今夜のFOMCに対して身構えていると言った状況だ。当然、欧米がインフレでどうにもならなくなっている状況で金融引き締めに出るならば、日本株も当然のように連動して下げるという予測が出来るし、自分自身そうしたポジションを建てつつFOMCを迎えるという状況を選択したわけだが・・・。
どうも、最近の夜間取引での日経平均CFDの強さが気になっているというか、せいぜい米国市場もボラティリティの半分程度しか動かない状況が非常に気になっていた。従来日本市場は欧米のヘッジ市場的な意味合いが強く、ボラが出るときは米国市場以上というのが長く続いていたわけだが、米国が金融引き締めモードで急落するなかでも、日経平均は3月9日の安値¥24,681には遠く及ばず、3月25日の戻り高値¥28,338の半値押しの水準を維持しているのが不思議だった。
もちろん海外短期筋は、FOMCを意識した短期的な空売りを特に4月中旬以降は多く入れてきているわけで、日中の空売り比率は高水準で推移しているわけで、だからこそボラティリティも高まっているとは思うのだが、海外勢の本筋は3月権利落ちの頃から一貫して4月いっぱい、買い越に転じているのだ!現時点(4月22日)まで約1兆円の買い越となっていて、それは2020年11月以来の単月買い越し額である。
海外勢は基本、日本株を買ってる!?
これまでの経緯から考えるにそう判断せざるを得なくなってきた気がする・・・。
その理由を考えると、日銀の金融緩和維持の姿勢以外に思い当たらない!
3月末の時点で、日本株に対する2つの方向性を模索していた。そして相矛盾するような2つの記事を同時に掲載して、日本株が強烈な戻りを演じた時、大いに迷ってたわけだ。
この時からいよいよFOMCでの金融引き締めというタイミングが来て、米国市場が金融引き締め突入に身構えている中、その当日の今日、日経平均CFDが¥340高と買われている事実・・・。見方によっては日本株の独歩高と言えるような動き・・・。
考えてみれば、世界の中銀のなかで日銀だけが、金融緩和継続の動きを続けると明確に表明しているが、多くの海外投資家は「なんてクレージーなんだ!」と考えたに違いない。けれども日銀は3月に続いて4月の金融政策決定会合で、さらに10年債の指値オペを常態化すると発表して海外投資家の度肝を抜いた。つまり、日銀は日本国債のYCC(イールドカーブコントロール)政策を今後も堅持してゆくと表明し、今年度末の物価上昇を1.9%と予測したわけで、これは今後1年間現在の金融緩和姿勢を続けると言うことを意味するわけだ。
そうなると、僅かに0.250%の日本と1年で3.000%を目標にする米国、では2.750pという圧倒的な金利差が生じる可能性が濃厚であるとともに、その後も金利差が拡大する可能性が高いと言えるわけで、したがってドル円はさらなる円安方向は必至という状況になる。
しかもFRBやECBの積み上げられたバランスシートが縮小する過程では、莫大な資金が宙に浮くことになり、現状からしても有効な投資先が見当たらないわけで、金融緩和を継続するという日本に集中的に投資される可能性も、改めて出てきたと言えるのではないか?引き上げたキャッシュは、インフレで急速に価値を失いつつある。ならば、円安という強力なバックボーンのある日本株に投資しておくことが、最も有効なヘッジになると考えるのもまた自然な成り行きかもしれない。
もちろん円安になれば、ドル換算では不利となるけれど、それ以上に株価が上昇すれば問題はない。
日本株独歩高の可能性
今後米国株や債権、不動産からは資金の逃避が続くことはほぼ確実で、同様なことが欧州でも起こるだろう。そして、現時点では中国からの(セカンダリーサンクションを警戒した)キャピタルフライトはここ数年来なかった金額に達している。同時に有効とされる新興国投資に関しても通貨安の悪影響がどれほど及ぶのかという大きなリスクが伴う。
そこで、世界の資金は原油や天然ガス、そしてコモディティに向かいかけた。しかし、原油や天然ガスは基本的に供給過多である資源である以上、いくら戦争プレミアムが乗ると言っても、世界の景気後退の可能性を無視できないわけで、おのずと限界がある。また穀物相場では規模があまりに小さすぎる。
世界の投資マネーの行き先は、新たな投資セクターを見出さない限り、消去法では日本株しかないとというのも十分に理解できるし、それを受け入れるだけのバリューエーションの低さもある。なので日本経済や日本企業の業績云々を考える以前に、莫大な投資マネーの行き先、という観点で考えるべきかもしれないと思い始めた。
とにかく今の時代の投資マネーの量は半端ない。世界が一斉にディフェンシブに向かうとすれば・・・。いや、高インフレ時代になって、インフレなない日本というのは、ある意味クレージーではあるものの、気が付くと最も有望かつ安全なシェルターなのかもしれない。
今夜のFOMC後の日経CFDの動きから目が離せなくなった!
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