株・師匠の教訓 7:商売や事業のほうが遥かにハイリスクでしょ?
- 2019.06.07
- 師匠(プロ)の教訓
師匠に弟子入りした当時、私は経営者の端くれでもありました。
いろいろあった末にようやく先の目途が立ち始めた頃、改めて株式投資を学び直してみたいと思ったわけですが、両立するのは本当に大変なことだと、しみじみと味わうことになったわけです。
結局師匠が突然倒れ、ほどなくして息を引きとられた半年後、私は経営していた事業を倒産させてしまうことになったわけです。
もちろん、株取引のせいではなかったのですが、その後の2年間は再び地獄を味わうことになったわけです。
株式投資の本当のリスク
通い始めて半年くらい経ったとき、株式投資のリスクについて師匠と真剣に議論しました。
「師匠、株式投資の本当のリスクってなんでしょう?」
もちろん、投資をして逆目になれば損失が出ます。しかし、それまでに幾度となく経験してきた、業績の突然の下方修正や損失の報告など、アクシデントのような出来事でストップ安に巻き込まれるような場合や大株主の突然の大量売り、CBの大量発行等々。
リスクを挙げたらキリがない程です。
「本当のリスクねぇ、何でしょうね」
師匠は考え込んでいました。そして
「本当のリスクというのは人間の欲なんじゃないですかね」
と言われたのを記憶しています。
私は、そんな禅問答のようなものではなくて、具体的に教えてください、とせがんだと思います。
「そう言われても・・・具体的には、経営者の欲が一番のリスクかも知れません。表面に出ることは滅多にないですけどね」
「なるほど・・・」
大きなファンドになると企業訪問をして経営者と必ず面談すると言いますが、師匠も同じようなことを言っていたと思います。
「小型株のリスクは経営者の資質で、ほぼ100%と言ってもいいですよ」
「そうかもしれないですね」
「大型株は、業界に居た頃は、本当にいろいろな情報が入ってくるんです。日本の経営者はみなサラリーマンなので、大企業のトップになったらそこがゴールなんですね。その先は平穏に4年くらいやれたら御の字でしょう。冒険はしたくないんです」
「そんなものですかね?」
「10人中8人くらいはそう考えてますよ。けれども、そういう守りに回った企業ほど、脆いんですけどね。必ず、と言ってもいいほど業績落としますからね」
「でも、そんな比率では怖くて投資出来ないですよ」
「全部表面化すれば怖いでしょうね。けれどほら、みんな隠すの上手ですから」
そう言って笑っていました。
叩けば埃がでる
日本の、いや世界中の大企業で「何もない完全にフェアな企業」というのは恐らく有り得ないでしょう。しかし、現在ではそうした部分は完全に覆い隠されてしまっています。
時々あるきっかけから、オリンパスや東芝のように表面化する企業もありますが、大抵はしっかりと管理下です。
しかし、経営者の技量は隠すことができません。
「大企業の場合、強固な組織の下で営業が行われていますから、普通にやって業績が悪化することはまずあり得ないことと考えてください」
師匠はしっかりとこの部分を強調していました。だからこそ、業績を下方修正するというのは、実はその企業にとっては異変が起こっている、という解釈をするべきだと言うわけです。
そしてその原因の多くが経営者に起因していることと言うわけです。
統合を繰り返したメガバンクなどは、いまでも派閥争いが残っています。みずほFGなどはその典型ですね。みずほFGが今日あるのは、西武関連(西洋環境開発)の問題をツメバラを斬らすことで何とか切り抜けたからです。その意味では、埃だらけであることは確かですね。
圧倒的な情報量の差
とにかく私が師匠に関して感じたことは、業界人であるからなのでしょうが、個別企業に関する圧倒的な情報量でした。
とにかくほとんどの大手企業に関する裏話がポンポンと出てくるのです。それが、本当に興味深くて時にはポジションを忘れて聞き入ったものです。
しかも、そのどれもが、投資情報として非常に価値がある、と思えるものばかりでした。
プロと一般投資家の違いは、テクニックや読みの深さだけではないのです。そもそも根本的な情報量に圧倒的な差があると感じます。
「師匠、個人は情報量で負けますよ」
「時にはそういう場合もあろうかと思いますが、ほとんど株価は関係なく動いてますよ」
確かに、リスクを知り過ぎたら、投資する気になれませんからね。
株式投資はハイリスクではない
師匠は、経営者を気にしたら、あとはどの銘柄に投資してもオーケーです、と言っていました。以来必ず投資する銘柄は公式ページに行って経営者だけはチェックする習慣が身についてしまいました。
別にチェックしたから、といって特別なことが分かるわけではないのですが、少なくとも株式投資をするということは、その経営者に投資すると言えるからですね。
「こういう話をすると、株式投資が怖くなりますよ」
「これはまた意外なことをおっしゃる・・・」
「どうしてですか?」
「株式投資は別にハイリスクではないでしょう?商売や事業のほうがよほどハイリスクですよ。経営者である社長(私)の口から、そういう感想がでるとは意外ですよ」
そう言われてハッとしました。なるほど、その通りです。
たとえば飲食店(ラーメン店)の経営をやろうとします。個人レベルでは大金を先行投資して店を出します。しかし、3年残れる飲食店(ラーメン店)は3分の1以下なのだそうです。
またベンチャー企業を立ち上げるとして、この場合でも5年残れるベンチャーは10%ありません。
そしてそれらは失敗すれば大きな損失どころか借金だけが残る、という悲劇です。それから比較したら、株式投資など、リスクのうちではないのでは?と師匠に言われました。
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