米9月雇用統計の悪夢:すでに世界リセッション相場!?
- 2022.10.08
- トレード雑感
昨晩の米9月雇用統計は、やはり昨日予想した通り、ポジティブな内容で大きく株価を押し下げてしまった。株価だけではなくて、米国債10年物金利は再度上昇し3.888p、ドル円は¥145の壁をあっさりと突き抜け¥145.342、そして日産200万バレル減産決定の原油は$93.25と再び上昇トレンドを描き始めた。さらには米実質金利も再び1.78%まで上昇し再度インフレ懸念に拍車を掛けた。
米雇用統計概略
(米国9月雇用統計)
21:30 | (米) 9月 非農業部門雇用者数変化 [前月比] | 31.5万人 | 25.0万人 | 26.3万人 | |
21:30 | (米) 9月 失業率 | 3.7% | 3.7% | 3.5% | |
21:30 | (米) 9月 平均時給 [前月比] | 0.3% | 0.3% | 0.3% | |
21:30 | (米) 9月 平均時給 [前年同月比] | 5.2% | 5.1% | 5.0% |
細かく議論しても仕方のないことだけど、要するに米国の労働市場はほぼ完全雇用のまま沸き立っているということ。FRBがインフレ抑制の過程で想定している失業率4.4%を尻目に、労働力不足が際立って皮肉にも3.5%へと改善した。9月の米国有効求人倍率は1000万件と失業者500万人に対してなお2倍の求人倍率となっていることを考えると、11月の中間選挙という政治イベントもあり年内失業率が低下することは望めないことが決定的となった。
というのが昨夜の米雇用統計の概略だけど、株式市場ではまたしても楽観主義が打ち砕かれたということになったね。株価がちょっと戻り始めると、「底打ち」とか「上値は・・・まで」という話が出るけれど、今の経済情勢ってそんなに単純じゃないと思うけどね。やたらと複雑だからこそ、株価も右往左往することになるし、もっと言うと株価上昇の材料がショートカバーと楽観しかないのが厳しいんだよなぁ・・・。
多分今頃、ショートカバーを入れる筋って、例えば原油を筆頭にコモディティを買ってる商品系の投機筋だと思ってて、ジリジリと原油が下げる局面で株式市場を大きくヘッジ売りしてたんじゃないかな。けれどもロシアがOPECプラスに日産100万バレルの減産を提案した時点でヤバイと言う雰囲気になってきて、200万バレルで決定的となり大きくヘッジ売りを手仕舞いしたのだという感じ。
なので材料もなくて窓空けぶっ飛びは相当に怪しいよね。あっという間に$1500も戻しちゃったダウとか、全然当てにならないし、第一それだけ戻っちゃうと言うことは、市場参加者がいないということじゃない?だから、昨夜みたいな数字が出ちゃうと、とんでもない下落になっちゃう。
ダウ:▲$630(▲2.11%)
NASDAQ:▲420p(▲3.80%)
S&P500:▲104p(▲2.75%)
SOX:▲152p(▲6.06%)
もう、暴落だよね。
なお厳しい業績相場へ
来週は12日9月PPI(卸売物価指数)13日9月CPI(消費者物価指数)があり、特にCPIコア指数が問題にされるだろう。CPIの予測は8.1%と0.2%下げるというものだけど、コアは6.5%と0.2%上昇を見込む。いずれにしても、FRBの利上げを緩和するような数字には思えない。
そしてその後は決算相場に突入するわけで、今回ばかりは流石の米国企業と言えど、楽観的な見通しは不可能に近いだろう。もしも米国経済がリセッションの只中でさらにマイナス成長が続いているならば、企業業績にも期待は出来ないしね。
誰かが言ってたけれど、「株価が底打ちして今後はネガティブな景気指標で上昇する、すでに底打ちした」という事ならば、悪材料(企業業績の悪化)は織り込み済みとい言うのだろうけど、次々に決算が悪化してそれを悪材料出尽くしと言えるような段階じゃないだろう?だって来期に本格的な景気後退がやってくると言われてるんだからね。
なので、今後実に呆気なく「底当てゲーム」は否定されるんじゃないかと思うけどね。
気がかりなのはドル独歩高
毎回話題にしてる米国の実質金利だけど、9月30日に1.92%とピークを付けて、10月4日1.56%まで下げてに現在は再度1.78%まで上昇している上に来週はFRBの利上げ観測が強化されたことで上昇するのはほぼ確実。そうなれば、株式やコモディティからますます資金が抜ける。エネルギーや農産物などは状況によって変化するので一概には言えないけれど、少なくとも原油や天然ガスは需要期の11月に向かって、上昇する可能性が高い。
そうなると世界で際立つ米国の利上げの影響で、ドル独歩高はさらに進む可能性がある。その結果どうなるかと言えば、ドルに対する脆弱な通貨が片っ端から狙われることになる(というかすでにやられてる!)。円もポンドもクローネもやられて、今度はウォンやルピーがターゲットになると思う。各国の通貨が安くなればなるほど、世界インフレが急激に進むわけで、そうなると、世界同時スタフレが現実味を帯びるよね。
今、韓国ウォンは1424/$。元来危険水準を言われた1200ウォンをはるかに上回るウォン安になっているわけで、もはや韓国経済は破綻同然の状態にあると言える。このレートで対外債務を履行できるはずがないからです。こんな感じで、次々に売りを仕掛けられるわけで、ポンドはあっという間にインフレ率トップになってしまったしね。
なので、連鎖的に各国がインフレ急伸に見舞われるわけだから、英国の右往左往を笑えなくなるんだよね。日本は、阿呆の岸田政権が、物価上昇対策としてばら撒きをやるつもりだけど、その裏で財務省はせっせと高齢者介護の負担を増やして防戦中。けれども結局は表側の政治が金融緩和的な政策しか能がないのだから、嫌でもインフレは加速してゆくことになる。
なのでもはや米国のインフレは米国経済の問題だけではなくて、世界インフレの問題になっているし、その結果EUや中国も含めて経済は悪化の一途をたどる可能性が濃厚になってきた。
ドル一極高の恐怖
単に一国の景気の良し悪しで経済を考えても、ここまでグローバルな繋がりが深まった状況では、無理があると言わざるを得ない。リーマンショック後に世界経済をけん引したのは中国だけど、今回はその役割を米国が果たせるのか?と言えば、それは極めて怪しいと思う。では、中国に変わる第三国が存在するか?と言われると、ここまでドル高が進むと投資が出来なくなってしまうからね。
いままで経済に偏重をきたしたとき、それをリペアしてきたのは各国中銀の金融緩和だった。大量の資金が供給され事業規模、経済規模が拡大したことで、いくらでも補修出来ると思っていたし、実際にそうしてきたけれど、今回はインフレによって真逆の政策を強いられている。つまり、従来の金融緩和によるリペアが通用しなくなっているわけで、おそらくそれを打開する方法は見当たらないと思われる。
こうした局面を日本はすでにバブル崩壊後20年間にわたって経験してきたわけで、正直手の打ちようがないということを、よく分かっているはず。日本が円高局面になって¥76/$という時代にどうなったか?またそこまで至る過程で何が起きたのか?今回のリセッション局面は急激なショックではなくて、長くジワジワと沈降してゆくような、そんな全世界的な不況に突入するのかもしれない。
その時に、果たしてロングの株式投資が有効かどうか、ドルコスト平均法でいいのかどうか、日本では積み立てNISAで老後の資産形成ができるのだろうか、個人的には非常に疑わしいと思っているけどね。
そして何か重大なことが起きて、というよりも何年にもわたって経済が減速してゆくような、そんな恐ろしい状況を思い浮かべてます。
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