株価上昇の茶番とリセッションの本格化

株価上昇の茶番とリセッションの本格化

いまの株式市場は面白いというかウォール街の大口投資家が意図的に演出した茶番劇。今までは、金利上昇は企業業績に大きな影響が出る、景気が後退する、といって株価を下げて、それはそれで過去のどのような局面であってもしごく真っ当な株価の動きだと思う。けれど、今月の始めに「底打ち」と決めると、あとはどんなに条件が厳しくなろうとも、反発するという、動きを演出する。

決算で企業業績が思いのほか悪化していないとなると、半年先の業況を見るはずの株価は、いつの間にか3か月前の過去や、足元を見て買われるという、不細工さ。そこに、FRBのスポークスマンたるセントルイス連銀のブラードやサンフランシスコ連銀のデーリーが、観測気球じゃないけれど、少しだけ意味のないハト的コメントを出せば、昨夜のように後先顧みず買いに傾くという相場状況は見ていて滑稽そのものだった。

米国市場は三市場ともに2.3%以上の大幅上昇となって週末を終えた。

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一方債券投資家の中には、4.335Pまでオーバーシュートした米国債10年物をチャンスと見て買った向きもあるだろう。もしも、観測気球の通りになった場合には、今の4.335pの利回りは魅力的と感じたのだろう。インフレが8%台のいま、この金利の債券を購入すると言うことは、このまま金利の上昇が止まれば、将来的にはキャッシュよりも有利に回るのでは?という期待もあるだろうけどね。

要するに矜持あるアナリストや経済学者は、今の資産水準、マネタリーベースの状態では、インフレをFRBの目標通り収めるのはまず不可能と見ている。景気がクラッシュせず、マーケットが冷静さを保ったまま、インフレを抑制できたなら、それがソフトランディングだと思っているわけだが、反面そんなことは不可能という意見が大多数を占める。

いまの世界を見る限り、各国の中銀は(日銀以外)金融を引き締めてインフレを抑え込もうとしている一方で政府は財政規模を縮小することはますます困難になっている。そんなことは当たり前で、高水準のインフレ下で従来の政策を維持するためには、最低でもインフレ分の財政規模拡大が必要になるのだから。

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その矛盾をいち早く露呈したのが英国ということになる。結論から言えば、インフレ抑制は利上げしか中銀は手段を持たず、その政策は一般庶民をもっとも犠牲にする。インフレを放置すれば庶民が犠牲になり、また利上げしてインフレを抑え込もうとしても庶民が犠牲になる。なので、二者択一の選択だと中銀は言いたいのだろうけど。

つまりそうした選択肢かできなくなってしまったことが諸悪の根源で、各国歴代の中銀総裁は、バカの一つ覚えのように、目先の景気を維持するために、目先の危機を克服するために、と称して延々と金融緩和を続けてきたし、マネタリーベースを増加させることでしか、金融政策を維持できなかった結果、ジャブジャブにした資金を使って投資出来る主体だけが肥え太る世界になってしまった。

本当に危機感を持っている中銀総裁であるならば、本来の貨幣価値を無視したばら撒きの結果として今のインフレがあるということを十分に理解しているはずだけど、たとえFRBのパウエル議長であっても、その英断を下せはしない。自らの金融政策を反省して、マネタリーベースを半減させる、くらいの意思をもって臨まない限り、このインフレは収まらないと思う。

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今米国の消費が好調なのは、またしても新型コロナ下と同規模の奨学金・学資ローン返済免除をバイデン政権が行った結果以外の何物でもない。その規模は今年度で46兆円にも達するわけで、これが消費を支えると同時に、インフレ高止まりの大きな原因になっている。

この例をみても分かる通り、民主主義下での政府はネガティブな政策を打ち出せないばかりか、財政を引き締めると国民の支持が得られないというジレンマを抱えているわけで、中銀が政府政策と同調してしまえば、この状況の打破は困難だろうと思う。各国で中銀の独立性を重んじるならば少なくとも中銀は今以上に厳しい金融引き締めをやらないといけないはず・・・。その結果貧困層が浮き彫りになってそこを政府支援で賄うくらいの政策をすべきだと思う。

昨年、FRBはインフレは一時的として、金融緩和を今年の2月まで継続した。インフレが顕著になっても半年以上、その渦中に油を注ぎ続けたわけで、そのことに対する反省の弁は一向に聞かれない。そして金融政策の理由を新型コロナの蔓延やロシアのウクライナ侵略として、突発的な事案には対処できないと言い放った。

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しかし、そもそも、それまでジャブジャブに増やしてきた金融緩和の状況が、遂にはインフレとなって表面化したという反省の弁は聞かれないし、その政策を転換しつつもソフトランディングさせるという夢物語で、マーケットを誘導している。そうした優柔不断な姿勢を続けてしまうと、危機的な状況にある債券の下落を止められなくない可能性がある。

今、米国債2年物金利は4.479Pでほぼ年末のFRB政策金利に達している。これが今後想定される11月0.750p、12月0.500pの利上げによって5.750p~6.000pになったとき、米国企業の多くは利益を半減させることになるかもしれない。そして金利が高止まりする可能性を考えると、今の株価はどうなっているのだろうか?

そして米国債の下落の影響が社債を暴落させ始めると、企業業績の減少と相まって、想定外の事態を生み出す可能性は、想像以上にはるかに高いと思う。なので株価の将来はバラ色じゃない。

最後に深読みすれば・・・

セントルイス連銀のブラードやサンフランシスコ連銀のデーリーが、利上げに対して俄然、慎重な見方をコメントしたのは、恐らくFRBが景気後退に関して確信を持ちつつあるということ。利上げはこの辺で、となるとそれは景気が音を立てて減速し始めるという意味になる。利上げを制限するから株価上昇というのは、初期反応であって、このまま行けば、11月0.750p利上げ後に株価は急落し始める可能性が濃厚とみるが・・・。

利上げをしているうちは景気が強いという証だけどね。緩めるということはFRBが減速を示唆することになる。さて、思ったよりもリセッション本番ははやいかも。