2月3月米景気指標と3月米雇用統計の解釈
- 2023.04.08
- トレード雑感
さて、3月雇用統計です。けれどもその前に6日までに発表された米国の各種指標をチェックしてみること・・・。
31日:2月 個人所得(前月比)0.2% → 0.3%
:2月 個人消費支出(PCE)前月比 0.3% → 0.2%
:2月 個人消費支出(PCE)前年同月比 5.1% → 5.0%
:2月 個人消費支出(PCEコア)前月比 0.4% → 0.3%
:2月 個人消費支出(PCEコア)前年同月比 4.7% → 4.6%
:3月 ミシガン大学消費者態度指数(確報)63.2 → 62.0
3日:3月製造業購買担当者景気指数改定値(PMI改定値)49.3 → 49.2
:3月 ISM製造業景況指数 47.5 → 46.3
4日:2月 製造業新規受注(前月比) -0.5% → -0.7%
5日:2月 雇用動態調査求人件数 1040万件 → 993.1万件
:3月 ADP雇用統計(前月比) 20.0万人 → 14.5万人
:3月 サービス部門購買担当者景気指数(PMI改定値)53.8 → 52.6
:3月 総合購買担当者景気指数(PMI改定値)53.3 → 52.3
:3月 ISM非製造業景況指数(総合) 54.5 → 51.2
6日:前週分 新規失業保険申請件数 20.0万件 → 22.8万件
:前週分 失業保険継続受給者数 169.9万人 → 182.3万人
見ての通り、最近の発表は全滅だ!なかでも2月の発表値は1ヵ月以上の遅行データであることを考えると、今月末までに発表される景気指標はさらに悪化しているだろうというのは容易に想像がつく。その上で、今回発表された3月雇用統計ということになるわけだけど・・・。
3月 非農業部門雇用者数変化 [前月比] 23.9万人 → 23.6万人
3月 失業率 3.6% → 3.5%
3月 平均時給 [前月比] 0.3% → 0.3%
3月 平均時給 [前年同月比] 4.3% → 4.2%
これを見てかなり違和感があるのは、この数字、非常に良好というか、景気指標が悪化していることを考えると経営者が引き続き雇用を頑張ってるのかな?という感じ。多分金利も上昇してるし経営は楽じゃないと思うけれど、余程新型コロナ禍で懲りてるのかな、というのとアフターコロナでこれから盛り返そうという意欲もあるのだろうしね。だからここで人を切ってしまったら自ら再生を放棄するようなもの、という意識があるのだと思う。
今後インフレは確実に低下してくると思う。原油の上昇と、細かい話だけどサービス部門における自動車修理費の上昇が嫌らしいけれど、傾向としてはそんな感じ。でもそこでFRBが金融引き締めを緩めると景気回復感が増加してしまって企業も消費者も「何とかなる」という感覚になるかもね。それが所謂ソフト・ランディングなのかもしれないけど。
でも景気の悪化が鮮明なのに比較して雇用が強いというのも、違和感は否めない。それでその理由を調べていくうちに米国の解雇事情が言われているほど簡単ではないと言うことに気づいた。米国の雇用形態は大部分の州でアットウィル雇用(随意雇用)であって原則的にはいかなる場合でもいつでも解雇できるというもので基本的に口約束(口頭)で雇用関係が行われる。
けれども現実には解雇に関して法の範囲内で、という制約があるし、特に差別を意識できるような解雇は即裁判沙汰に発展するので、昔ほど解雇は簡単ではない。また組合に加盟している場合や労働協約が結ばれている場合、60日前後の事前通告が義務付けられる。その他にも種々の制約がある上に、訴訟社会であるということもかなり高い障害ともなる。業績不振や会社規模縮小などの場合が理由である時には、会社都合で即日レイオフ出来ないことはないけれど、レイオフ後の給与保証や退職金などを支払うことが通例となっている場合が多い。
従って今回の場合のような比較的緩やかな景気後退である期間は、雇用の数字は最後まで粘るのが当然と言える。そう考えると雇用統計と言うのは思った以上に遅行指数であるということが分かってきた。原則解雇自由と言われている先進国は米国だけだけど、その米国でも現実には解雇に際してかなりの制約があるという事らしい。
そう考えると、前記した2月、3月の各種景気指数の悪化と3月雇用統計の数字に関する違和感は大分小さくなった。結論からすれば雇用はこれから急激に悪化してゆくということだと思う。5月に発表される雇用統計では少なくとも今回よりも悪化するだろうし、6月に発表される5月雇用統計あたりから悪化は加速するのではないか?と思っている。
なのでFRBは今回の雇用統計をあまり参考には出来ないと思うし、5月の利上げをどうするのかは、4月12日のPCIの数値次第だろうと思う。個人的にはFRBは5月の利上げはしないと思う。けれども株式市場はそれまでに決算を織り込み始めているわけで、恐らく株価の位置は今よりも下になると見ていて、利上げ中止ならば一旦は跳ねるとは思うけど、同時にそれは景気後退が本格化することと同義だろう。
そういう意味では今回の雇用統計で株式市場、債券市場ともに5月利上げを意識した展開となったけれど、週明けの株式市場は恐らく寄り天に近い展開だと思うけれど、どうだろうね。
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